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第18話 謎の襲撃者

 同窓会が終わった後、会費を払っていないことを思い出した。しかし、メイがすでに払っておいてくれたらしい。いつのまに。払うのを忘れていたので非常に助かった。払い忘れていると委員長に迷惑をかけるだろうし、向井ならこれ幸いと俺の事をこき下ろしていただろうから。


 こうして同窓会も終わり、いつもと同じ日々を過ごす。ただ同窓会の後、少しだけ日常に変化があった。頻繁に東さんから連絡が来るようになったのだ。今度この番組に出るから見てねとか、次はいついつが休みだからどこかへ遊びに行こうよとかだ。


 もしかして俺、東さんに狙われてる……?




 メイは危険すぎる。このままでは俺はダメになる。


 彼女は完璧だ。炊事、洗濯、掃除、そして仕事。欠点は、隙あらばキスをしようとしてくるところぐらいだ。


 しかもメイは、稼いだ金を小遣いとして俺に毎日くれるのだ。好きに使ってよいと。それだけでなく、俺が欲しい高価なものも何でも買ってくれる。


 俺は、なるべくメイに物を買ってもらわないように、欲しいものがあっても言わないようにした。彼女は俺が欲しいものはどんなに高価でもバンバン買ってしまうのだ。それは、貧乏だった俺にはとても怖い事だ。


 俺が欲しいものを言わなくなると、彼女はどうやってか知らないが俺の趣味趣向を完璧に把握し、俺が欲しそうなものを家に用意するようになった。


 欲しかった本、漫画、ゲーム、家電、服や靴。それらがいつの間にか家に用意されている。もはや外に買い物に行く必要もない。ただただ家でぐーたらしているだけですべて用意され、幸せに暮らせてしまう。


 このままではヤバい。なにもすることができない完全なダメ人間になってしまう。それが分っていても誘惑を断ち切ることが出来ず、だらだらと日々を過ごしてしまう。




 ピンポーン


 この日も家でだらだらと過ごしていた。そんなとき、珍しく来客が現れたようだ。インターホンが鳴った。俺やメイの知り合いが家に来たことなど今まで一度もない。というか、俺がこの高級マンションに住んでいると知っている知り合いもいない。宅配か何かだろうか?


「私が出ます」

「いや、いい。俺がでるよ」

「ご主人様の手を煩わせるわけにはいきません」

「いいからいいから」


 メイは料理中であった。それなのに手を止めて来客の対応をしようとしたので、俺は彼女を制止して素早く立ち上がった。このくらいはしないと、立ち上がるのも億劫になってしまう。俺はインターホンの前に急いだ。


 モニターには、どことなくメイに似た雰囲気の銀髪の美少女がいた。黒を基調とした、ゴシックロリータファッションである。こんな美少女、俺には特に見覚えはない。宅配でもなさそうだ。一体なんのようだろう。俺はインターホンの受話器をとる。


「はい」

「そっちに金髪で、胸のでかいエロい女がいるだろう?」

「……メイのことですか?」

「ああ、メイって名乗ってんのか。そいつだよそいつ」

「あの、あなたは?」

「そうだな……オレの名はフール。そっちにいるメイってやつのおトモダチってやつだ。ちょっと家に上がってもいいか?」


 メイに友達? 確かにこの子はメイに似て美人だし、どことなく雰囲気が近い。類は友を呼ぶってやつか? こんな友達がいたとは。


「どうぞ。今開けます」

「ああ、いい。勝手に上がらせてもらうぜ」


 そういうと、モニターに映っていた少女が突然いなくなる。


「あれ?」

「どうかしました?」


料理中のメイが、声をかけてきた。


「いや、さっきメイの友達のフールって人が来てたんだけど、いなくなってしまって」

「私の友達の、フール……? 伏せて!」


 ガシャン!

 メイが小首をかしげて可愛らしく考え込んでいると、突如大きな音が鳴る。


 音の鳴る方に視線を向けると、そこには先ほどまでマンションの入り口にいたはずのフールと名乗る女性がいた。周囲にはガラス片が飛び散っている。


 窓ガラスをぶち破って入ってきた……? バカな、ここはマンションの高層階だぞ!? 一階の入り口からどうやって!?


「よう、003。ご主人様が迎えに来たぞ」


 割れたガラスの破片を踏みしめながら、フールと名乗る女性がこちらに歩いてくる。


「私の名はメイです。それに、ご主人様はこちらにいらっしゃる山中樹様。そんな戯言を言いに来たのなら、お引き取り願います。004フール

「ほう、一応オレ様の事はちゃんと知っているわけか。なら、本当のご主人様がオレ様だと、察しがついているんじゃないか?」

「いえ、私のご主人様は樹様ただ一人です」

「ちっ、オレ様がちょっと目を離した隙に、別のご主人様を見つけちまいやがるとは。……厄介だな、こうなりゃ手荒な方法でご主人様だと認めてもらう必要があるか」

「ちょうどよかった。私もご主人様に仕えるメイドがもう少し欲しかったところです。どちらが上か、力比べと行きましょうか」

「言うじゃねえか。そりゃわかりやすくていい」


 そういうと、メイとフールは互いに拳を構えた。しかし、メイはふと構えを解き、手で制止するそぶりを見せる。


「……ここは私たちが争うには、狭すぎると思いませんか? 貴方も目立ちたくはないはずです」

「確かにそうだな」


 フールは家の中を見渡してそう言った。いやいや、ここは家の中でも特に広い家だが!? まあ、そういう事ではないのだろうけども。


「場所を変えましょう。ご主人様もついてきてください」

「おいおい、その足手まといも連れていくのか?」

「ええ。お傍から離れると、その隙にどこぞの嘘つきに人質に取られては困りますから」

「そんなことしねえよ」

「どうだか」


 こうして俺たちは、窓ガラスの割れた家を出て、人気ひとけのない場所へ移動することになった。


 ど、どういうことだ? 全く話についていけない。ただ、ついにメイの謎が明らかになりそうな、そんな予感だけした。


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