この世界せかいの隣となりには、『狭間はざま』と呼よばれる世界せかいがある。

　狭間はざまには、『狭魔きょうま』と呼よばれるモンスターが出でる。

　狭魔きょうまを倒たおす、『魔狩まかり』と呼よばれる人間にんげんがいる。

　　　◇

　オレは、遠見とおみ　勇斗ゆうと。十四歳さいの中学生ちゅうがくせいで、冴さえないメガネ男子だんしである。腰こしに廉価品れんかひんの長剣ロングソードをさげる、一応いちおう、駆かけ出だしの魔狩まかりである。

「本日ほんじつは、当誌とうしのインタビューを受うけていただき、ありがとうございます」

　ショートボブのスレンダーな大人おとなの女おんなの人ひとが、深々ふかぶかと頭あたまをさげた。

　魔狩まかりギルドの発行はっこうする魔狩まかり専門誌せんもんし『魔狩まかり通信つうしん』の女おんな記者きしゃだ。スカートスーツをビシッと着きこなして、仕事しごとのできる雰囲気ふんいきだ。

「よろしくお願ねがいします」

　桃花ももかが、珍めずらしく緊張きんちょうして、ぎこちなく頭あたまをさげ返かえした。

　絢染あやそめ　桃花ももかは魔狩まかりである。十四歳さいの中学生ちゅうがくせいで、桃色ももいろの長ながい髪かみで、華奢きゃしゃで、胸むねが小ちいさい。オレの幼馴染おさななじみで、クラスメートで隣となりの席せきである。

　いつもの私服しふく、ノースリーブにミニスカートにスニーカーである。腰こしには、両刃りょうばの大剣たいけんを納おさめた茶色ちゃいろの大おおきな革鞘かわざやをさげる。

「あ、あの。斎賀さいがさんも、ありがとうございます」

　女おんな記者きしゃが、扉とびらの陰かげから部屋へやを覗のぞくドレス姿すがたの美女びじょにも声こえをかけた。

　斎賀さいが　皐月さつきは全国ぜんこくでもトップクラスの魔狩まかり、ランクＳＳＳの『ウォリア』である。

　髪かみは燃もえるような赤色あかいろで、波打なみうち膨ふくらむ。美女びじょで赤あかい唇くちびるでナイスバディで、大人おとなの魅力みりょくが溢あふれる。スリットがセクシーな薄手うすでのサマードレスは、薄紫うすむらさきを基調きちょうに華はなやかな刺繍ししゅうがされる。

「お待またせしましたわ」

　皐月さつきが、今いま到着とうちゃくした体ていで部屋へやに入はいってきた。

　魔狩まかりギルドの上階じょうかいにある応接室おうせつしつだ。

　オレは、桃花ももかの付つき添そい兼けん見学けんがくでいる。壁際かべぎわに立たち見みである。

　　　◇

　低ひくいガラステーブルを挟はさんで、三人さんにんはソファに座すわる。女おんな記者きしゃが一人ひとりで、皐月さつきと桃花ももかが二人ふたりで隣となり合あう。

「改あらためまして。本日ほんじつは、当誌とうしのインタビューを受うけていただき、ありがとうございます。最強さいきょうの『ウォリア』、『ディメクラ』さんに、将来しょうらい有望ゆうぼうな若わかき『ウォリア』、『バイオレンス絢染あやそめ』さん」

　インタビューが始はじまった。

「やっぱり！　薄々うすうすは感かんじてたけど、『バイオレンス絢染あやそめ』ってアタシの二ふたつ名なだったのね！」

　桃花ももかがショックと声こえに出だした。ずっと悪口わるぐちか何なにかだと思おもってた顔かおだ。

「中学生ちゅうがくせい女子じょしのアタシ的てきには、カワイイ方ほうが似合にあうと思おもうんだけど。何なにかないの、勇斗ゆうと？」

「オレに振ふるなよ」

　オレは部外者ぶがいしゃの口調くちょうで回答かいとうを拒否きょひした。桃花ももかのカワイイ系けいの二ふたつ名ななんて知しらない。あるとも思おもえない。

　皐月さつきの二ふたつ名な『ディメクラ』は、扱あつかうハンマー『ディメンションクラッシャー』の略称りゃくしょうである。

「まずは、お二人ふたりで握手あくしゅをしていただけますか？　写真しゃしんを撮影さつえいして、ページを飾かざる一枚いちまいにさせていただきます」

　女おんな記者きしゃがデジカメを構かまえる。二人ふたりに向むける。

「えっ？！　そっ、そんなっ！」

　皐月さつきが派手はでに取とり乱みだした。

「この世界せかいで最もっとも尊たっとく清きよい桃花ももかちゃんに！？　穢けがれた私わたくしが触ふれる！？　そんな背徳はいとくはできませんわ！」

　嫌いやがりつつ興奮こうふんしてる。相変あいかわらず拗こじらせてるなあ、と感心かんしんする。最強さいきょうはブレない。

「でしたら、圧縮あっしゅく効果こうかで握手あくしゅしてる感かんじにしますね」

　女おんな記者きしゃが慣なれた口調くちょうで提案ていあんした。

「それでしたら、よろしいですわ」

　皐月さつきが、残念ざんねんそうに了承りょうしょうする。桃花ももかと、少すこし間あいだを空あけて、握手あくしゅしてる風ふうに手てを並ならべる。

　女おんな記者きしゃが真横まよこから、握手あくしゅして見みえる角度かくどでシャッターを切きる。

「はい。ありがとうございます。このようになります」

　三人さんにんで、デジカメのモニターを覗のぞく。オレの位置いちからは見みえない。見たい。

「そのデータ、私わたくしにもいただけますかしら？」

「はい。もちろんです」

「変へんなことに使つかわないでよ？」

「拡大かくだい印刷いんさつして額がくに入いれて玄関げんかんホールに飾かざります」

「それくらいなら、いいか。なんか嫌いやだけど」

　三人さんにんがソファに座すわりなおす。姿勢しせいを正ただし、表情ひょうじょうを引ひきしめる。

「では、インタビューに入はいらせていただきます。最初さいしょの質問しつもんは、人々ひとびとを守まもるヒーローと常つね日頃ひごろから持もて囃はやされる高こうランク魔狩まかりの皆みなさんが、人々を守るために何なにをしていらっしゃるのか、でいかがでしょうか？」

　女おんな記者きしゃが、笑顔えがおで、意地いじの悪わるい質問しつもんだ。

「高こうランク魔狩まかりの皆みなさんが倒たおすのは、皆さんのとても高たかい力量りきりょうに見合みあう、とても強つよい狭魔きょうまばかりですよね？　この場合ばあいの『人々ひとびと』を一般人いっぱんじんと定義ていぎした場合ばあいに、そのような強つよい狭魔きょうまに人々が遭遇そうぐうする可能性かのうせいは皆無かいむ。つまりは無関係むかんけい、とも考かんがえられませんか？」

　不穏ふおんな雰囲気ふんいきが漂ただよい始はじめた。どうやら、和気藹々わきあいあいのインタビュー、とはいかないみたいだった。

マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第31話 EP6-1 魔狩まかり通信つうしん／ＥＮＤ