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第37話 EP7-4 光速の戦い

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


 真新まあたらしいビルがいのドなかに、非常線ひじょうせんられた。

 快晴かいせい真昼まひるに、おおきな交差点こうさてんに、まるで社会しゃかいにポッカリとあないてしまったみたいな、くるまひととおらない空間くうかんができあがる。


 その中央ちゅうおうに、細身ほそみ長身ちょうしん美形びけいおとこがスタイリッシュにたたずむ。


 きらびやかでピチピチで急所きゅうしょをプロテクターがまもる、きんラメのバトルスーツをまとう。金髪きんぱつロンで、超絶ちょうぜつ美形びけいで、とおるような碧眼へきがんをしている。

 こしに、不思議ふしぎ曲線きょくせん赤鞘あかざやの、二本にほん短剣たんけんをさげる。


 最強さいきょうの『クイッケン』、『光速こうそくのライトニング』とひとぶ。


『きゃーっ! ライトニングさまーっ!』

 非常線ひじょうせんそとから、黄色きいろ歓声かんせい無数むすうにあがる。

「キュートな子猫こねこちゃんたち! 応援おうえんありがとう!」

 ライトニングがげキッスでこたえた。

『きゃーーーっっっ!!!』


 ライトニングはちょう有名人ゆうめいじんだ。大人気だいにんきだ。


   ◇


 非常線ひじょうせんちかくの仮設かせつ本部ほんぶで、オレたちは事態じたい見守みまもる。周囲しゅうい視線しせんさえぎぬのかこまれた、簡易かんい天幕てんまくである。

 視線しせんはなくても、歓声かんせいすさまじい。おと圧倒あっとうされる。


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。十四さい中学生ちゅうがくせいで、えないメガネ男子だんしである。こし廉価品れんかひん長剣ロングソードをさげる、一応いちおうしの魔狩まかりである。

 学校がっこうやすみのだから、普段着ふだんぎティーシャツジーパンスニーカーだ。


 まって休日きゅうじつ作戦さくせん実行じっこうされるのは、オレたちが学校がっこうやすまずにむように、との魔狩まかりギルドの心遣こころづかいだ。

 そんな心遣こころづかいはいらないから。むしろ、緊急きんきゅうしで授業じゅぎょうす、とかやってみたい。


「さすが、ライトニングさんっすね。野次馬やじうま報道ほうどうでビッシリっすよ」

 オレは天幕てんまく隙間すきまから、周囲しゅういくすひとだかりをまわす。女子じょしりつたかい。


「やっぱり、アタシが、このたおしたかったわ」

 オレのとなり桃花ももかが、くやしげにギリギリと歯噛はがみする。

 天幕てんまくうらでは、皐月さつきがゴリゴリと歯噛はがみする。てきにらつぶさんばかりの形相ぎょうそうをしている。


 こわい。こういうときは、言動げんどうけないとトバッチリがる。


   ◇


 最強さいきょうの『クイッケン』がるとなれば、作戦さくせん単純たんじゅん明快めいかいだ。

 ライトニングが『贄印にえいん』をめて、桃花ももかわりに雷獣らいじゅうたたかう。

 最強さいきょうさくらない。正面しょうめんからこう勝負しょうぶいどみ、圧倒あっとうすればいい。


 贄印にえいんは、名前なまえとおりに気味きみわるだった。実物じつぶつはじめてた。

 禍々まがまがしいデザインのヘビみたいななにかが、ゆび螺旋らせんからみつくかんじだ。そっちけいきなひときそうでもあった。


 ライトニングが、贄印にえいんゆびめる。

 あたりが、しずまりかえる。

 無数むすう黄色きいろ歓声かんせいが、一斉いっせいしずまった。これからなにきるのか、全員ぜんいんっていた。


 きんラメのバトルスーツにおおわれたが、ビルにかこまれた青空あおぞらへとけて、スタイリッシュにたかかかげられた。

 くるまおとも、かぜも、いつもはうるさいセミのこえすら、えていた。

 神秘的しんぴてき光景こうけいだった。


 前触まえぶれもなく、空気くうきわった。


   ◇


 わず一秒いちびょうらず。この世界せかいからライトニングがえた。

 わず一秒いちびょうらずののちに、この世界せかいにライトニングがたたずんでいた。


 オレは、なにえなかった。

 くろ狭間はざまに、雷光らいこうが、横向よこむきに、ジグザグにひかった。


 オレは、この世界せかいから狭間はざまえる特殊とくしゅ能力のうりょくつ。だから、狭間はざまが見える。


 ライトニングは、姿すがたすらえなかった。雷獣らいじゅうも、ジグザグのひかりしか見えなかった。

 えなかった視覚系しかくけい能力者のうりょくしゃなんて、よわ一般人いっぱんじん以下いかだ。いまのオレは、よわ一般人いっぱんじん以下いかだ。


 オレは、両手りょうてかおおおって、うつむく。

 なぐさめるように、オレのかたに、桃花ももか片桐かたぎりいた。


   ◇


『きゃーっ! ライトニングさまーっ!』

 非常線ひじょうせんそとからふたたび、黄色きいろ歓声かんせい無数むすうにあがる。

 ライトニングは、二刀の短剣ダブルダガー指先ゆびさき器用きようまわし、ながれるように赤鞘あかざやおさめる。

「キュートな子猫こねこちゃんたち! 応援おうえんありがとう!」

 仮設かせつ本部ほんぶへと悠然ゆうぜんあるきながら、げキッスでこたえた。

『きゃーーーっっっ!!!』


 ライトニングが笑顔えがおで、片桐かたぎりまえちどまる。

「ヘイ、コマンダー片桐かたぎり新しいニュー作戦ストラテジー頼むプリーズ


 われてみれば、狭魔きょうまたおすとちてくる小石こいしが、落ちてこなかった。つまり、雷獣らいじゅうたおせなかった。

 最強ライトニングつとしんじていたオレには、意外いがいだった。ショックだった。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第37話 EP7-4 光速こうそくたたかい/END

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