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第38話 EP7-5 あきらめが悪い

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


 魔狩まかりギルドの会議室かいぎしつで、おそめの昼食ちゅうしょく仕出しだ弁当べんとうをご馳走ちそうになる。


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。十四さい中学生ちゅうがくせいで、えないメガネ男子だんしである。こし廉価品れんかひん長剣ロングソードをさげる、一応いちおうしの魔狩まかりである。

 学校がっこうやすみのだから、普段着ふだんぎティーシャツジーパンスニーカーだ。


 オレと桃花ももか琴音ことねは、大人おとなたちの会議かいぎきながら、すみ一緒いっしょべる。


 絢染あやそめ 桃花ももかはオレの幼馴染おさななじみで、桃色ももいろながかみで、華奢きゃしゃで、むねちいさい。

 いつもの私服しふく、ノースリーブにミニスカートにスニーカー姿すがたで、こし自身じしんどうサイズの両刃りょうば大剣たいけんをさげる。


 真奉しんほう 琴音ことねは、オレと桃花ももかのクラスメートである。銀縁ぎんぶちまるメガネに灰色はいいろながかみみにして、小柄こがらむねおおきい人見知ひとみしりの女子じょしである。フリルやレースがいっぱいのキュートな私服しふくこのむ。


   ◇


「このライトニングが失敗するフェイルなんて、意外サプライズだったかい?」

 ライトニングが美声イケボで、超絶ちょうぜつ美形びけい微笑びしょういた。

作戦さくせんとは、失敗しっぱいまで想定そうていして立案りつあんするものだ。なん問題もんだいもない」

 片桐かたぎりこたえて、ドアの隙間すきまほうる。ほかのギルド職員しょくいんたちも、ドアの隙間すきまほうを見る。

 ドアの隙間すきまが、さりなく、おともなくじた。


 片桐かたぎりが、ライトニングをぐに見据みすえる。

率直そっちょくに、敗因はいいんおしえてもらってもかまわないか?」

敗因リーズンは、雷獣エレキラット小さくリトル機敏クイックだった。電気系エレキタイプおおい、微弱びじゃく電流でんりゅうから動きアクション先読さきよみできるタイプでもあった、かな」


 おおっと!? ライトニングから未知みち常識じょうしきてきて、オレは困惑こんわくする。

 よくよくかんがえれば、最強さいきょうばれるひとたちがたたか狭魔きょうまのレベル、が前提ぜんていだとかる。


 それに、電気系でんきけいなんて『ウォリア』の桃花ももかたたかうヤツじゃない。オレが範疇はんちゅうじゃない。

 オレの実地じっち情報源じょうほうげん大半たいはんは、桃花ももかだ。


ちいさく機敏きびんでも、『光速こうそくのライトニング』ならば問題もんだいないのでは?」

そうでもないさナットソーイージー

 ライトニングが、こし短剣二刀ダブルダガー死の舞踏ダンスマカブル』にててしめす。

「ミーが速くクイックうごけばうごくほど、マイラバーのブレードれて、ねらいが不安定ふあんていになるのさ。しかも雷獣エレキラットは、それすら先読さきよみしてた。何百回なんびゃっかいバトっても、マイラバーが雷獣エレキラットとらえることはできないだろうねメイビー


 片桐かたぎりが、しばし黙考もっこうする。

「……ならば、適切てきせつ武器ぶきをギルドで用意よういしよう」

そいつはダメだなトゥーバァッド浮気うわきは、マイラバーがねちまう」

 ライトニングが美声イケボで、こしの『死の舞踏ダンスマカブル』にててしめした。


 最強さいきょうばれるひとたちは、だれもが超常ちょうじょう武器ぶき愛用あいようする。まるでのろわれたみたいに、その武器にしばられる。


 空間くうかんそのものをたたつぶ大金鎚ハンマー『ディメンションクラッシャー』。重量じゅうりょうマイナス短剣二刀ダブルダガー死の舞踏ダンスマカブル』。くち魔法杖マジックロッド『ダブルキャスト』。


 最強さいきょう魔狩まかり超常ちょうじょう武器ぶきえらび、超常ちょうじょう武器ぶき最強さいきょう魔狩まかりえらぶ。

 最強さいきょうが最強である所以ゆえんである。臨機応変りんきおうへん武器ぶきえられないことは、最強ゆえの弱点じゃくてんともなりる。


   ◇


 会議かいぎ暗礁あんしょうりあげた。

 なに良案りょうあんはないか、ギルド職員しょくいんたちがはなっている。


 桃花ももか不慣ふなれなかんがえごとをするむずかしいかおで、弁当べんとうべている。

 いま桃花ももかなにかんがえているか、オレにはかる。幼馴染おさななじみでかおをずっとてきたから、かってしまう。


 ……仕様しょうがないなぁ。


「あ、あの、ライトニングさんに質問しつもんがあるっすけど、いいっすか?」

 オレはおそおおくておそおそる、ライトニングに質問しつもんした。

何でもエニシングいてくれ、メガネボーイ」

 ライトニングが、超絶ちょうぜつ美形びけいのウィンクでこたえた。


 ドキッ、ってした! おとこなのにドキッてした!

雷獣らいじゅうって、どんなっしたか?」

雷獣エレキラットは、おおきなネズミラットみたいな見た目ルッキングだったね」

 ライトニングが器用きように、メモ用紙ようしにネズミっぽいく。電気でんきっぽいエフェクトもく。さすがは最強さいきょう上手うまい。


 電気でんき、ネズミ。やっぱり即座そくざに、ひとつの名前なまえおもかぶ。

 ……いや、それはダメだ。一度いちどえた試練しれんだ。

「ソイツって、実体じったいうすかんじっしたか?」

「ノー。ピ……雷獣エレキラットは、マイラバーのブレードをオールけてた。物理ぶつり攻撃アタック証拠しょうこだね」

 ライトニングがスタイリッシュに暴発ぼうはつしかけた。

「ピ……雷獣らいじゅうの、微弱びじゃく電流でんりゅうからうごきを先読さきよみできるって、どういうことっすか?」

 られて、オレも暴発ぼうはつしかけた。


 ライトニングが、超絶ちょうぜつ美形びけい微笑びしょうかべる。

「まだ学校スクールならってないかな? 物体ぶったい動けばムーブ電気でんき流れるフローいたみ、五感ごかん感情かんじょうだって、神経ニューロン電気でんき流れフローからしょうじるね」

 なるほど。ピ……雷獣らいじゅうは、発生はっせいする電気でんきからものうごきを察知さっちできるわけか。さらには、えてるか見えてないかどこを見てるか、感情かんじょう変化へんか負傷ふしょうまでバレてるかもれない、と。


「その、うごきを先読さきよみって、制限せいげんなしっすか?」

 オレは、思考しこうをフル回転かいてんさせながらいた。

経験則けいけんそくだけど、制限せいげんはあるだろうねメイビー処理しょり可能かのう情報じょうほうりょう上限マックスと、感知かんちできる電気でんきりょう下限ミニマムは、あってしかるべきマスト、だ」

 さすが最強ライトニング確固かっこたる自信じしん微笑びしょうこたえた。


 オレは、思考しこうをフル回転かいてんさせながら、桃花ももかほうる。

桃花ももかって、なにかんがえないのって、得意とくいだよな?」

「ちょっ?! からだおぼえてる、ってってもらえる? アタシがなにかんがえてないみたいにこえるでしょ」

 桃花ももか赤面せきめんしながらこたえた。


「……だったら、けるとおもう。作戦さくせんは、ボンヤリだけど、あるぜ」

 オレは、曖昧あいまい自信じしん結論けつろんした。根拠こんきょは、桃花ももかつよさと、オレ自身じしん知識ちしきりょうだ。


 こたえて桃花ももかが、弁当べんとう長机ながづくえいて、ちあがる。

片桐かたぎりさん! アタシに、再戦さいせんさせてください!」

 力強ちからづよく、もうた。やるあふれていた。ひとみに、情熱じょうねつほのおえていた。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第38話 EP7-5 あきらめがわるい/END

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