目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第39話 EP7-6 オッサンにも若い頃があった

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


 桃花ももかが、『最上さいじょうまがつ』のピ……雷獣らいじゅうけた。

 代理だいりの、最強さいきょうの『クイッケン』、『光速こうそくのライトニング』は、相性あいしょうわるくて討伐とうばついたらなかった。

 ならばと、桃花ももか雷獣らいじゅうとの再戦さいせんもうた。


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。十四さい中学生ちゅうがくせいで、えないメガネ男子だんしである。こし廉価品れんかひん長剣ロングソードをさげる、一応いちおうしの魔狩まかりである。


   ◇


 魔狩まかりギルドの会議室かいぎしつで、なら長机ながづくえはさんで、桃花ももか片桐かたぎりぐに見据みすう。


 片桐かたぎり魔狩まかりギルドの、この区域くいき担当たんとう責任者せきにんしゃだ。くろいスーツ姿すがたの、おやよりも年上としうえくらいのオッサンだ。たかがたで、サングラスとととのったひげと、ひだりまぶたたて傷痕きずあと特徴的とくちょうてきな、哀愁あいしゅうただよしぶいオッサンだ。


 桃花ももか再戦さいせんもうに、良識りょうしきのある大人おとななら、子供こども危険きけんわせられないと棄却ききゃくする。

 片桐かたぎり良識りょうしきのある大人おとなだ。オレら子供こども同等どうとう人間にんげんとしてせっしてくれる、本当ほんとう良識りょうしきのある大人おとなだ。


「……つぎ土曜日どようびまでに、作戦さくせんしょ提出ていしゅつしなさい。それがほかのものよりすぐれていると判断はんだんしたら、採用さいようしよう」

 片桐かたぎりが、哀愁あいしゅうただよしぶいオッサンのかおで、しぶひくいオッサンごえ結論けつろんした。


「ありがとうございまっす、片桐かたぎりさん」

 オレは、複雑ふくざつ心境しんきょう感謝かんしゃした。

 だれかにみとめてもらえるのはうれしい。桃花ももかのサポートやくでも、『最上さいじょうまがつ』にかかわるのはこわい。


「ありがとうございます、片桐かたぎりさん! 勇斗ゆうとって! いまから特訓とっくんするわよ!」

 桃花ももかうれしさ全開ぜんかいでオレをんだ。

「おう! あ、あの、おそおおいっすけど、ライトニングさんも手伝てつだっていただいて、いいっすか?」

 オレはおそおおくておそおそる、ライトニングにおねがいした。

もちろんオフコース、いいとも。今を生きる若者ナウなヤングのためなら、いくらでもハンドすよ」

 ライトニングが、超絶ちょうぜつ美形びけいのウィンクでこたえた。


 琴音ことねせきつ。

「わわわたしもっ! お手伝てつだいさせてください!」

 会議室かいぎしつのドアがひらく。

「おたせしましたわ」

 ずっとドアの隙間すきまからのぞいていた斎賀さいが 皐月さつきが、いま到着とうちゃくしたてい部屋へやはいってきた。

会議かいぎはどのように?え?桃花ももかちゃんが雷獣らいじゅう再戦さいせん?で特訓を?でしたらわたくしも、お手伝てつだいいたしましてよ!」

 体裁ていさいつくろってる場合ばあいじゃないとばかりに、あいだ手順てじゅん早送はやおくった。


「あ、斎賀さいがさんには、手伝てつだっていただけることないっす。もうわけないっす」

「だってさ。邪魔じゃまだから、なくていいわよ」

 桃花ももかが、野良犬のらいぬでもはらうようにった。

気遣いがないクゥーーーーーッル! そこも好きラブ!」

 皐月さつき興奮こうふんほお紅潮こうちょうさせて、そのくずおれるようにすわんだ。

 いま時間じかんしい。相変あいかわらずのひとほうっておこう。


   ◇


 会議室かいぎしつようとして、桃花ももかかえった。

片桐かたぎりさん。適切てきせつ武器ぶきってのをせてもらっていいですか? なるべく実物じつぶつ特訓とっくんしたいんですけど、いつごろからりられます?」


 片桐かたぎりが、しぶいオッサンの微笑びしょうせきつ。桃花ももかまえすすて、こしにさげたくろりのさや短刀たんとう片手かたてにぎり、す。

しなることなき極薄ごくうす石刃いしば短刀たんとう水斬みずきり』だ。わかころ使つかっていたものだが、手入ていれはかしていない」


「……ありがとうございます」

 桃花ももかは、神妙しんみょうかおった。

片桐かたぎりさんって、わかころ魔狩まかりだったんですね。若い頃って、想像そうぞうもできないけど」

 こいつはいつもこうだ。


「そうだな。この機会きかいに、ひと昔話むかしばなしをしておこう」

 片桐かたぎりも、神妙しんみょうかおうなずいた。

「それって、隻眼せきがんわかつよ魔狩まかりはなしだったりします? ながくなるなら遠慮えんりょしたいんですけど」

 桃花ももか面倒めんどうそうにまゆひそめた。

 こいつはいつもこうだ。

「ふっ。隻眼せきがんではないが、男前おとこまえわかつよ魔狩まかりはなしだ。そんなかおをせずに、いていきなさい」

 片桐かたぎりは、いやかおひとつせずに微笑びしょうした。


   ◇


すこ残念ざんねんだが、手短てみじかはなそう」

 片桐かたぎりかたはじめる。

「その青年せいねんは、特殊とくしゅ視覚系しかくけい能力者のうりょくしゃだった。みずからのちから過信かしんし、調子ちょうしり、片目かためうしなった」


「うわっ?! みじかっ?!」

 オレはおもわずこころなかでツッコミをれた。

 あ、いや、周囲しゅうい反応はんのうるに、たぶんこえた。

片桐かたぎりさん。桃花ももかがこんなんでもうわけないっす。昔話むかしばなしはまたつぎ機会きかいにゆっくりかせていただくっす」

 フォローもれておいた。


かまわないとも。魔狩まかりつづけられなくなったが、魔狩まかりみなのバックアップはできる」

 片桐かたぎりが、みずからのひだりまぶたたて傷痕きずあとさわる。

 桃花ももかにぎる『水斬みずきり』をしめす。

信頼しんらいはしている。でも、無茶むちゃはするなよ。いのち大事だいじに、だ」

 歴戦れきせん戦士せんし強面こわもてだけど、しぶ低音ていおんボイスだけど、はなしかる大人おとなだ。


 桃花ももか神妙しんみょうかおで、くろりのさやおさまる『水斬みずきり』をる。

「ありがとうございます。大切たいせつ使つかわせていただきます」

 桃花ももかにしては丁寧ていねいに、あたまをさげた。桃花ももかにしては丁寧ていねい口調くちょうで、感謝かんしゃした。


 オレは、やっぱり『最上さいじょうまがつ』はこわいのだけれど、こういうのってわるくないな、とおもってしまった。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第39話 EP7-6 オッサンにもわかころがあった/END

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?