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第40話 EP7-7 雷獣リベンジマッチ

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


 真新まあたらしいビルがいのドなかに、非常線ひじょうせんられた。

 快晴かいせい真昼まひるに、おおきな交差点こうさてんに、まるで社会しゃかいにポッカリとあないてしまったみたいな、くるまひととおらない空間くうかんができあがる。


 その中央ちゅうおうに、桃花ももかたたずむ。


 絢染あやそめ 桃花ももか魔狩まかりである。オレの幼馴染おさななじみで、十四さい中学生ちゅうがくせいで、桃色ももいろながかみで、華奢きゃしゃで、むねちいさい。

 いつもの私服しふく、ノースリーブにミニスカートにスニーカー姿すがたで、こしに、今日きょうは、片桐かたぎりりたくろりのさや短刀たんとう水斬みずきり』をさげる。


なによ!? あの小娘こむすめは!?』

『ライトニングさま応援おうえんたのに!』

 非常線ひじょうせんそとから、黄色きいろいブーイングが無数むすうにあがる。


 非常線ひじょうせん周囲しゅういは、前回ぜんかい同様どうように、ライトニング目当めあてのひとだかりにくされる。前回と同様に、女子じょしりつたかい。


   ◇


 桃花ももかはブーイングなんかにもめない。桃花ももかこころつよい。


 桃花ももか華奢きゃしゃが、くろりのさやにぎり、『水斬みずきり』をく。

 角度かくどによってはやいばえない、極薄ごくうす石刃いしば短刀たんとうである。それでいて、桃花ももか鉄柱てっちゅうりつけても、刃毀はこぼひとつしない。


 桃花ももかには、たのむからもっと丁寧ていねいあつかってくれ、と厳重げんじゅう注意ちゅういしておいた。


 いわゆる、魔法品マジックアイテムだ。魔力付与エンチャンテッド武器ウェポンだ。超常ちょうじょう武器ぶきにはとおおよばずとも、オレたちの使つか普通ふつう武器ぶきよりはるかに高額こうがくつよい。


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。十四さい中学生ちゅうがくせいで、えないメガネ男子だんしである。こし廉価品れんかひん長剣ロングソードをさげる、一応いちおうしの魔狩まかりである。


 桃花ももか華奢きゃしゃゆびに、ゴテゴテしたオモチャみたいなてつ指輪ゆびわめた。


   ◇


『きゃーっ! ライトニングさまーっ!』

 非常線ひじょうせんそとから、黄色きいろ歓声かんせい無数むすうにあがった。一瞬いっしゅんで、すべてのブーイングが歓声かんせいへとわったのだ。

「キュートな子猫こねこちゃんたち! 応援おうえんありがとう!」

 ライトニングがげキッスでこたえた。

『きゃーーーっっっ!!!』


 いつのにか桃花ももかとなりに、細身ほそみ長身ちょうしん美形びけいおとこがスタイリッシュにつ。


 きらびやかでピチピチで急所きゅうしょをプロテクターがまもる、きんラメのバトルスーツをまとう。金髪きんぱつロンで、超絶ちょうぜつ美形びけいで、とおるような碧眼へきがんをしている。

 こしに、不思議ふしぎ曲線きょくせん赤鞘あかざやの、二本にほん短剣たんけんをさげる。


 最強さいきょうの『クイッケン』、『光速こうそくのライトニング』とひとぶ。


 ライトニングも、てつ指輪ゆびわゆびめる。

「レディ桃花ももかは、ミーのスピードについてこれるかな?」

 超絶ちょうぜつ美形びけいのウィンクをはなった。


一人ひとりでやることになっても、にゃしないわよ」

 桃花ももかたのしげな微笑びしょうこたえた。


「ふふっ。評判ひょうばんどおりのクールなクール美少女ビューティーだね」

 ライトニングもたのしげに微笑びしょうした。


 あたりが、しずまりかえる。

 無数むすう黄色きいろ歓声かんせいが、一斉いっせいしずまった。これからなにきるのか、全員ぜんいんっていた。


 二人ふたり同時どうじに、ビルにかこまれた青空あおぞらへとけて、たかかかげられた。

 くるまおとも、かぜも、いつもはうるさいセミのこえすら、えていた。

 神秘的しんぴてき光景こうけいだった。


 前触まえぶれもなく、空気くうきわった。


   ◇


 わず一秒いちびょうらず。この世界せかいから二人ふたりえた。


 くろ狭間はざまに、桃花ももか無表情むひょうじょうつ。

 ライトニングは姿すがたすらえない。

 雷獣らいじゅうは、雷光らいこうが、バレーボールくらいのおおきさでひかる。


 オレは、この世界せかいから狭間はざまえる特殊とくしゅ能力のうりょくつ。だから、狭間はざまが見える。


 色々いろいろえないけど、作戦さくせんはオレがかんがえたから、なにきてるかかる。

 ライトニングが、ハイテンションの最高速さいこうそくで、短剣二刀ダブルダガー死の舞踏ダンスマカブル』をりまわしてる。

 雷獣らいじゅう行動こうどう範囲はんいがなるべくせまくなるように。できれば移動いどう不可ふかくらいに。なんて神業かみわざめいた要望ようぼうを、簡単すぎないかいトゥーイージー、ってかるくオーケイしてくれた。


 だから、雷獣らいじゅうが、ジグザグの雷光らいこうではなく、ひかり球体きゅうたいえる。


 ライトニングが電流でんりゅう情報じょうほう満載まんさい全力ぜんりょく攻撃こうげきする。雷獣らいじゅう情報じょうほう処理しょり能力のうりょくを、上限じょうげんまでめる。


 桃花ももかは、その大量たいりょう情報じょうほうかげかくれて、五感ごかん感情かんじょう不動ふどうで、最小限さいしょうげんうごきで、感知かんちされる電気でんきりょう下限かげん未満みまん不意討ふいうちする。


 桃花ももかが、すごい!、本当ほんとうなにかんがえてないかおで、短刀たんとう横振よこぶりした。

 むずかしい言葉ことばなら『無我むが境地きょうち』。簡単かんたんえば『条件じょうけん反射はんしゃ集大成しゅうたいせい』。桃花ももか状況じょうきょう認識にんしきするまえ反応はんのうできる。


   ◇


 わず一秒いちびょうらずののちに、この世界せかい二人ふたりたたずんでいた。


 ライトニングがうやうやしくお辞儀じぎをして、ゆずるとしめす。

『きゃーっ!! ライトニングさまーっ!!』

 非常線ひじょうせんそとからふたたび、黄色きいろ歓声かんせい無数むすうにあがった。ビルがいけんばかりの大歓声だいかんせいだ。


 快晴かいせい青空あおぞらから、キラキラと金色きんいろひか小石こいしちてくる。

 狭魔きょうまたおすと、えて小石こいしわる。

 桃花ももかが、ちてきた小石こいし颯爽さっそうとキャッチする。


『きゃーっ!!! ライトニングさまーっ!!! 最速さいそく最高さいこうーっ!!!』

 大歓声だいかんせいが、さらにおおきくなった。すべてのこえが、ライトニングをたたえていた。


 けれど、拍手はくしゅ喝采かっさい半分はんぶん確実かくじつに、桃花ももかへとけられていた。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第40話 EP7-7 雷獣らいじゅうリベンジマッチ/END

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