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第41話 EP8-1 海辺のマーメイド

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。十四さい中学生ちゅうがくせいで、えないメガネ男子だんしである。こし廉価品れんかひん長剣ロングソードをさげる、一応いちおうしの魔狩まかりである。


 夕刻ゆうこくに、桃花ももか部屋へやあつまって、期末きまつのテスト勉強べんきょうはげむ。

 一軒家いっけんや二階にかい一人ひとり部屋べやで、板床フローリング四角しかくいテーブルをして、クッションにすわって、オレと桃花ももか琴音ことね三人さんにんかこむ。


 絢染あやそめ 桃花ももか魔狩まかりである。オレの幼馴染おさななじみで、十四さい中学生ちゅうがくせいで、桃色ももいろながかみで、華奢きゃしゃで、むねちいさい。


「あぁ、もぅっ。『最上さいじょうまがつ』の雷獣らいじゅうたおしたスーパーヒロインが、どうしてテスト勉強べんきょうくるしまなきゃいけないのよ」

 桃花ももかが、テーブルにして愚痴ぐちった。

 桃花ももか学校がっこう勉強べんきょうきらいだ。


「あれは、九割きゅうわりライトニングさんのおかげだろ……」

 オレは、気味ぎみにツッコんだ。


「こっ、こっ、ここがっ! 絢染あやそめさんのお部屋へやっ! あっ、あっ、絢染あやそめさんのっ!」

 クッションに正座せいざする琴音ことねが、ほおあからめて、部屋へやまわす。

 琴音ことねともだちがすくなそうだし、友だちの部屋へやあつまるなんて滅多めったにないだろうし、うれしいのだろう、興奮こうふんして息遣いきづかいがあらい。


 真奉しんほう 琴音ことねは、オレと桃花ももかのクラスメートである。銀縁ぎんぶちまるメガネに灰色はいいろながかみみにして、小柄こがらむねおおきい人見知ひとみしりの女子じょしである。フリルやレースがいっぱいのキュートな私服しふくこのむ。


   ◇


 桃花ももか部屋へやは、らかったつくえと、パジャマをほうったベッドと、半開はんびらきのクローゼットと、ざつ雑誌ざっしまれた本棚ほんだながある。訓練くんれんようのオモチャの武器ぶきころがってたりもする。

 ゲームがないくらいで、普通ふつう男子だんし中学生ちゅうがくせい部屋へや大差たいさない。

 ……女子じょしか! 性別せいべつ幼馴染おさななじみ、だからすぐわすれる。


「ピ……雷獣らいじゅうってえば。オレ、片桐かたぎりさんの昔話むかしばなしきにいったんだけどさ」

 気分きぶん転換てんかんに、雑談ざつだんでも提供ていきょうしよう。

「ふぅん」

 桃花ももかがテーブルにしたまま、興味きょうみなさげにこたえた。


 そんな反応はんのうをされては、つづきがはなしづらい。

片桐かたぎりさんもむかし魔狩まかりだったってはなしで。おんなひととコンビをんでたんだって」

「えっ?!」

 桃花ももか唐突とうとつきた。


くわしく! ほら! はやく!」

 桃花ももか胸座むなぐらつかまれて、さぶられる。

「お二人ふたりはっ! どっ、どのような! ご関係かんけいでしたのでしょうか!?」

 琴音ことね興味きょうみ津々しんしんした。


 オレは、予想外よそうがい反応はんのう困惑こんわくする。

 桃花ももか琴音ことねが、オッサンの昔話むかしばなし興味きょうみしめすとはおもわなかった。

「いや~。オレがおもわず、興味きょうみなさげな相槌あいづちったからさ。やはりやめておこう、ってことに」

「はぁっ!?」

 うわっ!? なんだかきゅう二人ふたり視線しせんが、とても残念ざんねんひとるようにつめたくなった。


「そっ、そうだ! 片桐かたぎりさんが、大活躍だいかつやくのご褒美ほうびにって、レジャープールのチケットくれたんだぜ。ちかくに片桐かたぎりさんの実家じっかがあって、まれるようにたのんでおくから、夏休なつやすみにまりがけであそんできたらいいってさ」

 オレにしては素早すばやく、カバンからチケットをし、テーブルにく。


   ◇


海辺うみべのレジャープールですね。日帰ひがえりできない距離きょりではありませんけれど。往復おうふく時間じかんがかかるので、ちかくに宿泊しゅくはくできるのはいいですね」

 琴音ことね解説かいせつしながら、銀縁ぎんぶちまるメガネのふち指先ゆびさきでクイッとかけなおした。


まりがけって、一緒いっしょにおまりってこと? 夏休なつやすみに? あそびに?」

 桃花ももか興奮こうふん気味ぎみ確認かくにんしてきた。


 たすかった。好反応こうはんのうだ。


「だからさ。ちゃんとテスト勉強べんきょうして、夏休なつやす初日しょにちからこうぜ。追試ついしとか補習ほしゅうとかあると、桃花ももかのおかあさんにももうわけないしさ」

 オレは、いのるような気持きもちで提案ていあんした。


 桃花ももか勉強べんきょうてほしい、と桃花ももかのおかあさんにたのまれてる。オレの幼馴染おさななじみとしての面目めんもくがかかってる。


 桃花ももかのおかあさんは、桃花ももか母親ははおやだけあって美人びじんだ。やさしいし、いつも笑顔えがおだし、ゴ……パワフルでもない。


「そ、そういうことなら、ちょっと頑張がんばっちゃおうかな」

 桃花ももかうれしそうに、ほおを赤くした。クッションにすわりなおして、真面目まじめにテスト勉強べんきょうった。


 よかった。これでオレの評価ひょうかたもたれるだろう。もしかして、勇斗ゆうとくん本当ほんとうたよりになるわぁって、あがるかもれない。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第41話 EP8-1 海辺うみべのマーメイド/END

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