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第42話 EP8-2 夏休みの始まり

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。十四さい中学生ちゅうがくせいで、えないメガネ男子だんしである。こし廉価品れんかひん長剣ロングソードをさげる、一応いちおうしの魔狩まかりである。


今日きょうあついな」

 肩掛かたがけのおおきなスポーツバッグをかつぎなおしながら、くちした。夏休なつやすみにはいった解放感かいほうかんで、こころこえかれていた。

 これから電車でんしゃで、片桐かたぎり実家じっかく。何日なんにちめてもらって、レジャープールやうみあそ予定よていである。


なふふぁもんふぇ暑くてあふふふぇなんぼよねふぉふぉふぇ

 桃花ももかが、アイスキャンディをくわえたまま、相槌あいづちった。おなじくかれていた。


 絢染あやそめ 桃花ももか魔狩まかりである。オレの幼馴染おさななじみで、十四さい中学生ちゅうがくせいで、桃色ももいろながかみで、華奢きゃしゃで、むねちいさい。

 いつもの私服しふく、ノースリーブにミニスカートにスニーカー姿すがたで、こし自身じしんどうサイズの両刃りょうば大剣たいけんをさげる。


 桃花ももか荷物にもつはオレよりおおい。オレのよりおおきなスポーツバッグがまるふくらんでる。

 女子じょしだから着替きがえがおおい、ってことは、ないか。きっとあそ道具どうぐまってる。


あついなぁ」

あふわねふぁふぇぇ」

 セミのこえきながら、えき正面しょうめんぐちで、二人ふたりでニヤニヤしながらたたずむ。ちょっとくらいさわがしくても、あつくても、このあとおもえばにもならない。


   ◇


たせたな、ライバル!」

「あっ、あのっ! おはようございます、遠見とおみくん! 絢染あやそめさん!」

 古堂ふるどう琴音ことね合流ごうりゅうした。

「オレもいまたとこだぜ!」

 これで、四人よにんそろった。


 桃花ももかが、くわえたアイスキャンディを、ガリッとった。


「あっ、ありがとうございます、古堂ふるどうさん。にっ、荷物にもつっていただいて、たすかりました」

「いいってことよ。子供ガキやさしいのはモテるおとこ条件じょうけんだろ? おれっちは、モテるためならなんでもするおとこだぜ」

 古堂ふるどうが、奇妙きみょうななめったポーズで格好かっこつけた。


 古堂ふるどう 和也かずやは、オレや桃花ももか近所きんじょ大学生だいがくせいである。金髪きんぱつ逆立さかだて、くろかわジャンかわパンツの、派手はでちのおとこである。

 弓矢ゆみやで戦う魔狩まかり『スナイプ』で、小型こがた洋弓ようきゅう背負せおう。


「うっ、うわぁ……。完全かんぜんに、モテないかた発言セリフですね……」

 琴音ことねが、おもわず正直しょうじき感想かんそうらした。


 真奉しんほう 琴音ことねは、オレと桃花ももかのクラスメートである。銀縁ぎんぶちまるメガネに灰色はいいろながかみみにして、小柄こがらむねおおきい人見知ひとみしりの女子じょしである。フリルやレースがいっぱいのキュートな私服しふくこのむ。


「なにこの既視感きしかん……」

 桃花ももか絶望ぜつぼう口調くちょうつぶやく。

琴音ことねはギリギリかるけど……。ギリギリアウトだけど……。どうして、また古堂ふるどうさんまで一緒いっしょなの……?」

 なぜか桃花ももかが、とても残念ざんねんひとでオレをた。


中学生ちゅうがくせいだけで遠出とおでできないだろ? 古堂ふるどうさんに引率いんそつたのんだんだ」

 オレは、われながらナイスアイデア!、とキメがおこたえた。


   ◇


 電車でんしゃられて、海辺うみべまちいた。移動いどうにしてはなが時間じかん旅行りょこうにしてはみじかい時間だった。


「なんかわりぃな、おれっちまでめてもらって」

先方せんぽう許可きょかをいただいてるので、大丈夫だいじょうぶっす」


 オレは、えき出口でぐちから周囲しゅういまわす。

 ふる町並まちなみ、みたいな風景ふうけいひろがる。

 がりくねった道路どうろ沿って、木造もくぞうかわら屋根やね民家みんかならぶ。まちてにはうみえる。


 琴音ことねが、もうわけなさげにまゆをさげる。

「ごめんなさい、絢染あやそめさん。お邪魔じゃまかもとは、おもったのですが」


「いいのよ琴音ことね。そんなんじゃないから。大勢おおぜいあそんだほうたのしいから」

 ねた桃花ももか琴音ことね背中せなかしかかる。うで鎖骨さこつうえとおって、おおきなむねしたまわして、ませる。っぱらいみたいなからかたである。

 桃花ももか人付ひとづいの距離感きょりかんがおかしい。


「あっ、あっ、絢染あやそめさんっ?! むねがっ、いきがっ、うでがっ、むねがっ!」

 琴音ことねが、ずかしそうにかおにした。一見いっけんするとパニックにもえるが、しょう旅行りょこううれしくて、はしゃいでいるのだろう。


 二人ふたりともたのしそうでなによりだ。


「あ! あのひと片桐かたぎりさんのおかあさんじゃない?」

 桃花ももか目線めせんで、木陰こかげのベンチにすわ老婦人ろうふじんしめした。


 えきから人混ひとごみの隙間すきまに、そっちをる。

 老婦人ろうふじんがいる。白髪はくはつかおにシワが目立めだって、つきがするどい。細身ほそみたかくて、ゆったりめのブラウスにレギンスで、背筋せすじぐにばし、ベンチにすわっている。


 歴戦れきせん戦士せんし雰囲気ふんいきが、片桐かたぎりていた。あ、った。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第42話 EP8-2 夏休なつやすみのはじまり/END

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