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第43話 EP8-3 水の中の出会い

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


 レジャープールのある海辺うみべまちいた。えき出口でぐちで、木陰こかげのベンチにすわ老婦人ろうふじんつけた。

 雰囲気ふんいきが、片桐かたぎりている。めてもらう片桐かたぎり実家じっかの、片桐かたぎり母親ははおやちがいない。

 そう直感ちょっかんして、った。


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。十四さい中学生ちゅうがくせいで、えないメガネ男子だんしである。こし廉価品れんかひん長剣ロングソードをさげる、一応いちおうしの魔狩まかりである。


「あ、あの、すみません。片桐かたぎりさんのおかあさんっすか? オレたち、めてもらうことになってる、あ、オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうとっす」

 初対面しょたいめん緊張きんちょうしてあたまをさげた。


 老婦人ろうふじん微笑ほほえみ、スッとちあがった。

息子むすこからいているわ。ふるいえだけれど、きなだけまっていきなさい」

 笑顔えがおかんじも、片桐かたぎりている。隻眼せきがんでもひげのオッサンでもないのに、親子おやこだとかるくらいにている。


「お世話せわになりまっす!」

 もう一度いちど緊張きんちょうしてあたまをさげた。たぶんむかし魔狩まかり歴戦れきせん戦士せんしだったと、オレのかんげていた。


   ◇


 いえ荷物にもついて、ワゴンしゃおくってもらって、レジャープールにた。

 あそべる日数にっすう一日いちにちでもムダにしたくない。たのしいことには貪欲どんよくであるべきだ。

 片桐かたぎりははわらって、子供こどもはそのほうがいい、とってくれた。


んでるっすね」

 地方ちほう都市とし地方ちほうのレジャー施設しせつでも、夏休なつやすみがはじまったばかりの休日きゅうじつ真昼まひるむ。どこもかしこも親子おやこれでまってる。


 ウォータースライダーは、長蛇ちょうだれつならぶ。ながれるプールは、ひとはいれる隙間すきまつけるのがむずかしい。プールサイドすらい、人通ひとどおりの邪魔じゃまになりそうで、かどのフェンスまえおとこ二人ふたりつ。


「おいおいおい、親子おやこればっかりじゃぁねぇか。おれっちは、どいつをナンパすりゃあいいのよ?」

 古堂ふるどうが、奇妙きみょうななめったポーズでなげいた。


 オレは無難ぶなん紺色こんいろかいパン、古堂ふるどうくろのブーメランパンツだ。手首てくびいた入場にゅうじょうバンドに狭魔きょうまけの御札おふだはいってるから、およぐのに邪魔じゃま武器ぶき携帯けいたいしなくていい。


「おたせ~」

「はっ、ずかしいのでっ! あっ、あまりないでくださいっ!」

 桃花ももか琴音ことね合流ごうりゅうした。四人よにんそろった。


   ◇


「ちょっと、みすぎじゃない?」

 桃花ももか苦情くじょうながしながら、あそべそうなきスペースをさがす。

夏休なつやすみの休日きゅうじつだからな」


 桃花ももか補習ほしゅうで、出発しゅっぱつ一日いちにちおくれた。

 だからんでる、なんて的外まとはずれな責任せきにん転嫁てんかをするはない。

 ただ、オレの幼馴染おさななじみとしての面目めんもくつぶれた。丸潰まるつぶれだ。桃花ももかのおかあさんからの評価ひょうかが、確実かくじつがった。


「ところで、この水着みずぎはどうよ? カワイイでしょ?」

 桃花ももかが、クルリと一回転いっかいてんして、水着みずぎをアピールした。


 かれるまでもなく、ひと気付きづいたことがある。

 桃花ももか琴音ことねも、フリルのヒラヒラしたカワイイけい水着みずぎている。

 たデザインでありながら、むねおおきい琴音ことねはセクシーに、むねちいさい桃花ももか子供こども水着みずぎえる。


「お! あのプール、いてるぜ!」

 オレは、混雑こんざつなかにあってまばらにしかひとのいないプールをつけた。


   ◇


 二十五メートルプールくらいのサイズに、大人おとなおとこ数人すうにんしかいない。


「ちょっと、勇斗ゆうと。アタシの水着みずぎ姿すがた感想かんそうは?」

「あっ、絢染あやそめさんはっ! とっ、とととても、かっ、かわいらしいとおもいますっ!」

 琴音ことねが、らし気味ぎみに、オドオドした口調くちょうで、興奮こうふんほお紅潮こうちょうさせて、桃花ももか絶賛ぜっさんした。


「そっ、それにくらべて。わ、わたしはプニプニしてて、ずかしいです」

琴音ことねのプニプニもカワイイわよ」

 桃花ももかが、琴音ことね太腿ふとももみながらかえした。

「あっ、あああ絢染あやそめさんっ!? 絢染あやそめさんっ!? はははずかしいっ、ずかしいですっ!」

 琴音ことね赤面せきめん両手りょうておおって身悶みもだえた。


「いやっほぉ~ぅ!」

 オレは我慢がまんできずに、いたプールにんだ。

「……ぶぉっ?」

 あしそこかない。ははぁ~ん、さては、ふかいプールってヤツだな?、とおもいたまえに、パニクる。

ぶぁっ、ぶぁふけっ!」


 水面すいめんに、ひとみず飛沫しぶきえた。だれかにかかえられて、かたやわらかい感触かんしょくがあって、水面すいめんきあげられて、プールサイドにつかまった。

 からだ感触かんしょくが、桃花ももかみたいにかたくなかった。琴音ことねほどやわらかくも、古堂ふるどうほどヒョロくもなかった。


「ゴホッ、あ、ありがとうございまっす。どこのどなたからないっすが」

無事ぶじか、ライバル? おめぇって、およげなかったっけか?」

 古堂ふるどうが、たかくからオレをおろす。

 オレは、プールサイドにしがみついたままあげる。

「いや~。あしかないくらいでおぼれるわけないんすけど。なぜだかパニクっちゃったっす」


「このプールには、ちかづかないほうがいいよ」

 ボーイッシュなおんなこえがする。プールのなかで、オレのわきうでをまわして、やわらかいむねをオレのかたてる。オレをたすけてくれたひとだとかる。

「ほら。ここは、しおがする」

 あおみがかったくろのショートカットの、ボーイッシュな、たぶん高校生こうこうせいくらいの少女しょうじょだ。


 ボーイッシュな少女しょうじょが、水中すいちゅうからプールサイドに両手りょうてをつき、いきおいよくあがる。水色みずいろ競泳きょうえい水着みずぎみずながちる。

 全身ぜんしんが、しなやかでスラリとしてる。角度的かくどてきにおしりが、かたがエッチだ、は失礼しつれいか。

 しろティーシャツをる。やり……いや、穂先ほさきかえしがあるからもりか?、を背負せおう。


「ありがと。れが迷惑めいわくかけたわね」

 桃花ももかこえをかけた。どこか対抗心たいこうしんのある声音こわねだった。

「……ふふっ」

 ボーイッシュな少女しょうじょは、たぶん桃花ももかちいさなむねて、はなわらった。プールサイドの人混ひとごみのなかへと、えていった。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第43話 EP8-3 みずなか出会であい/END

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