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第47話 EP8-7 七海と片桐

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


片桐かたぎりオジサン! こんにちは!」

 七海ななみ片桐かたぎりって、ボーイッシュなひとみをキラキラさせながら挨拶あいさつした。


 かる。オレもきっとおなじだとおもう。


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。十四さい中学生ちゅうがくせいで、えないメガネ男子だんしである。無難ぶなん紺色こんいろかいパンで、狭魔きょうまけの御札おふだ手首てくびく。一応いちおうしの魔狩まかりである。


やすみがれたから、様子ようすにきたんだ」

 片桐かたぎりつくろうようにこたえて、チラとオレのほうる。

荷物番にもつばんはしておくから、みなあそんでくるといい」


「やった! なにする!?」

 桃花ももか砂浜すなはまねてよろこんだ。


おれっちが、どうして魔狩まかりになったかって?」

 古堂ふるどうが、奇妙きみょうななめったポーズで格好かっこつける。

「そんなの、モテるためにまってるだろ。おれっちは、モテるためならなんでもするおとこだぜ」

「……」

 七海ななみ言葉ことばうしなって、あきがおをした。

「ってことで、一夏ひとなつこいさがしにナンパにってくるぜ! 子供ガキどもは子供ガキ同士どうしあそんでな!」

 古堂ふるどう意気いき揚々ようよう砂浜すなはまけていった。ヒョロい背中せなかあか手形てがたが、まだのこっていた。


七海ななみ! およぎで勝負しょうぶよ!」

 桃花ももか七海ななみ指名しめいした。マーメイに水泳すいえい勝負しょうぶとは、相変あいかわらずこわいものらずだ。

「ふふっ。いいよ。けてたとう」

 七海ななみ自信じしんみでこたえた。

「わっ、わたしもっ! こ、後学こうがくのために見学けんがくさせてください!」

 セクシーなフリル水着みずぎ琴音ことね一緒いっしょに、海辺うみべへとけていった。


 結果けっか、オレと片桐かたぎり二人ふたりのこった。


   ◇


 荷物にもついたレジャーシートに、オレと片桐かたぎり二人ふたりならんですわる。

 なつ日差ひざしがつよい。なみおとがアップテンポにかえす。すこはなれて、浜辺はまべ歓声かんせいこえる。


片桐かたぎりさん。なにはなしがあるんじゃないっすか?」

 沈黙ちんもくまずいので、オレからした。

「そうか。かるか」

 片桐かたぎり安堵あんどした。はなしかためあぐねていたのだろう。


状況じょうきょうととのいすぎっす。所属しょぞくギルドのえらひと宿泊しゅくはくまでお世話せわしてもらって。そこに偶然ぐうぜん、そのえらい人としたしい人がいるなんてっす」

「まあ、そうだな。じつは、遠見とおみくんに、個人的こじんてきに、ってたのみがある」

 片桐かたぎりたのみごとはめずらしい。


七海ななみちゃんに、アドバイスをしてもらえないだろうか?」

 片桐かたぎりあたまをさげた。

むずかしいのは重々じゅうじゅう承知しょうちだ。七海ななみちゃんは希少きしょうな『マーメイ』なんだ。七海ななみちゃんのたたかかたも、『マーメイ』の能力のうりょくも、水中すいちゅう狭間はざまでの戦闘せんとうたことはないのだからね」

「あ、一回いっかいだけっすけど、たっす」

 オレは、自分じぶんでも間抜まぬけだとおもうほど、世間話せけんばなし口調くちょうこたえた。


「いいっすよ。昨日きのう偶然ぐうぜん七海ななみさんがさかな狭魔きょうまたおすのをたっす。おやくてるかはからないっすけど、意見いけんすくらいならできるっす」

「そうか! ありがとう!」

 片桐かたぎりあたまをさげた。片桐かたぎりにとって七海ななみ他人たにんではない、とかるよろこびようだった。


   ◇


「そのときに、七海ななみさんがアタリとかハズレとかってたっす」

 オレは、ちょっとになったことをいてみた。本人ほんにんくべきであって、片桐かたぎりくのは的外まとはずれかな、ともおもった。

「そうか……」

 片桐かたぎりいきをつく。

七海ななみちゃんは、賞金しょうきんかせぎの真似事まねごとをしている」

「あぁ、それで、狭魔きょうまがいたから『アタリ』っすね」

 オレは納得なっとくした。


 狭魔きょうまたおすと、えて小石こいしわる。その小石を魔狩まかりギルドにむと、賞金しょうきん実績じっせき評価ひょうかえてくれる。 


危険きけんだからやめたほうがいい、といさめはしたのだが。水瀬みなせさんのむすめさんだけあって、強情ごうじょうでね」

報酬ほうしゅう目当めあてで狭魔きょうまるって、むずかしいっすよね?」

 能動的のうどうてき狭魔きょうま討伐とうばつするのはむずかしい。野良のら狭魔きょうまがそこらじゅうにいるわけではないのだから。

 未討伐みとうばつ狭魔きょうま情報じょうほう逸早いちはやて、ほか魔狩まかりさきんじる。が必要ひつよう最低限さいていげん条件じょうけんとなる。

 時間じかん制限せいげんおお学生がくせいには、普通ふつうなら、無理むりだ。そう、普通ふつうなら。


むかし賞金しょうきんかせぎをしていた経験けいけんからうと、『まがつ』がかせぎやすい。報酬ほうしゅうおおいのに、魔狩まかりあしみ、討伐とうばつされにくいからね」

 片桐かたぎりが、ひだりまぶたたて傷痕きずあとれながら、真顔まがおこたえた。


 ひところしたから『まがつ』。つよすぎる狭魔きょうまおそわれないわりに、よわ狭魔きょうまをカモれもしない。自身じしんちか力量りきりょう魔狩まかりころした『まがつ』を討伐とうばつする。

 それが、『まがつ』をる、ってことだ。危険きけんなんて生易なまやさしいものじゃない。てる保証ほしょう欠片かけらもない。


「だから、『ハズレ』っすか……」

 あのさかな狭魔きょうまは、運悪うんわるく『まがつ』じゃなかった。運好うんよく『まがつ』じゃなかった。


   ◇


かったっす。一緒いっしょにいられるあいだ、できるだけの尽力じんりょくをさせていただくっす」

 オレは力強ちからづよく、あたまをさげた。お世話せわになってる片桐かたぎり個人こじんたすけになれるなんて、ありそうでなさそうで、うれしくもあった。

「ありがとう、遠見とおみくん

 片桐かたぎりが、オレのをギュッとにぎって、あたまをさげた。


勇斗ゆうと! ビーチバレーするからて!」

 桃花ももかばれた。

「おう!」

陸上りくじょうならけないわよ、七海ななみ

「ふふっ。いいよ。けてたとう」

 桃花ももか七海ななみが、いつのにか仲良なかよくなっている。

 二人ふたりとも、つよいとことか、てるからだろうか。


 チラと片桐かたぎりが、二人ふたり微笑ほほえましげに微笑びしょうしていた。片桐かたぎり七海ななみ母親ははおや関係かんけいってヤツが、オレもになりはじめていた。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第47話 EP8-7 七海ななみ片桐かたぎり/END

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