目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第48話 EP8-8 老婆も昔は若かった

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


「ってことで、七海ななみさんの強化きょうか特訓とっくんをすることになったっす」

 部屋へやかりをに、よる縁側えんがわならんですわって、オレは宣言せんげんした。


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。十四さい中学生ちゅうがくせいで、えないメガネ男子だんしである。普段着ふだんぎティーシャツジーパンで、こし廉価品れんかひん長剣ロングソードをさげる、一応いちおうしの魔狩まかりである。


「ふぅん」

 桃花ももかが、片桐かたぎりれのアイスとドーナツをべながら、興味きょうみなさげにこたえた。いまはなしよりべるほう大事だいじ、っていろだ。


 絢染あやそめ 桃花ももかは、オレの幼馴染おさななじみの女子じょしである。十四さい中学生ちゅうがくせいで、桃色ももいろながかみで、華奢きゃしゃで、むねちいさい。

 いつもの私服しふく、ノースリーブにミニスカート姿すがたで、こし自身じしんどうサイズの両刃りょうば大剣たいけんをさげる。


「やった! オオアタリ! さすが片桐かたぎりオジサン!」

 七海ななみ素直すなお歓喜かんきした。


 水瀬みなせ 七海ななみは、片桐かたぎり知人ちじんむすめである。あおみがかったくろのショートカットで、しなやかでスラリとして、おんなひとってかんじのボディラインの、ボーイッシュな女子じょし高生こうせいである。

 タンクトップにたんパンで露出ろしゅつおおく、もり背負せおう。


「よろしく、勇斗ゆうとクン。ボクも、つよくなりたくて、試行しこう錯誤さくごしてるとこなんだ」

 七海ななみにぎられて、れる。タンクトップからあふれるむね谷間たにまふくらみに、ドキドキもする。


 ドーナツを桃花ももかが、オレを七海ななみからさえぎった。

勇斗ゆうとは、アタシのパートナーなのよ」

 威嚇いかくしながら、にあるドーナツとオレを、交互こうご見比みくらべる。

「でも、ちょっとくらいなら、いいか。片桐かたぎりさんにはお世話せわになってるし」

 僅差きんさでドーナツがった。ってた。


   ◇


「まぁ、特訓とっくん相手あいて桃花ももかにやってもらうんだけどな」

 オレは、かたつちにわりる。ひろにわで、一画いっかく菜園さいえんになってる。


 桃花ももかにあるドーナツをつめて、くちんだ。

だとふぁふぉ思ったわおふぉっふぁふぁ


 準備じゅんびしておいた二本にほんぼうひろう。

 にわりてきた桃花ももか七海ななみ一本いっぽんずつわたす。


「うん。ボクのもりとほぼおなながさだね」

 七海ななみが、ながいちメートルほどのそのぼうにぎって、りかぶって、おもさとあつかいをたしかめる。


「アタシのぼうみじかくない?」

 桃花ももかが、五十ごじゅっセンチほどのながさのぼうにぎって、オレに抗議こうぎした。


 たしかに、桃花ももかこし大剣たいけんくらべて、かなりみじかい。

「それでいいんだよ。七海ななみさんに、桃花ももかたたかかた体験たいけんしてもらう」

「あぁ、そういうことね」

 桃花ももかかったようなかってないようなかおで、にわの、部屋へやかりに薄明うすあかるいなかった。


「ふふっ。いいよ。手合てあわせしろってことだね」

 七海ななみがボーイッシュに微笑びしょうして、桃花ももか正面しょうめんメートルほどの距離きょり薄明うすあかるいなか相対あいたいした。


相手あいて武器ぶきとすか、寸止すんどめな。オレがいしうえげるから、それが地面じめんちたら開始かいしで。相手あいて武器ぶきとすか、寸止すんどめな」

 桃花ももかにルールをかせた。


   ◇


 桃花ももか七海ななみ武器ぶきかまえ、った。

 桃花ももか短棒たんぼう片手かたてちで、こしたかさにかまえた。七海ななみ長棒ながぼうもりみたいに、かたうえりかぶった。


 緊張きんちょうかんに、はだがヒリつく。桃花ももか野獣やじゅうみたいな眼光がんこうに、審判しんぱんのオレまですくむ。

 って平静へいせいたも七海ななみは、それだけでもつよいとかる。


「いくぜ!」

 オレは、夜空よぞらへといしげあげた。二人ふたり中間ちゅうかんあたりに、ボトッとちた。


 桃花ももか一瞬いっしゅんで、七海ななみ足元あしもとんだ。七海ななみりおろそうとした長棒ながぼうを、桃花ももか短棒たんぼうはじばした。


 長棒ながぼうがコンコンッ、と地面じめんころがった。ほぼ全員ぜんいんが、呆気あっけられた。ほぼ同時どうじに、緊張きんちょうから開放かいほうされていきをついた。


いまのが、桃花ももか七海ななみさんのっす」

 オレは簡潔かんけつ解説かいせつした。

「やっぱり、ランクSのひとって、すごいね」

 七海ななみ興奮こうふん気味ぎみに、ストレートな感想かんそうくちにした。

 しまった。解説かいせつ簡潔かんけつすぎたか。


「そこじゃないっす。桃花ももかがランクDだったとしても、いま結果けっかおなじだったとおもうっす」

 オレの補足ほそく説明せつめいに、七海ななみ桃花ももかくびかしげる。桃花ももかは、集積しゅうせきした知識ちしき経験けいけん本能ほんのう実践じっせんする野生やせい猛獣もうじゅうタイプである。


   ◇


すこわっていただいて、いいかしら?」

 上品じょうひん口調くちょうで、片桐かたぎりははにわった。


 片桐かたぎりははは、魔狩まかりギルドの片桐かたぎり母親ははおやの、老婆ろうばである。

 白髪はくはつかおにシワが目立めだって、つきがするどい。細身ほそみたかくて、ゆったりめのブラウスにレギンスで、背筋せすじぐにびる。


「ほい、どうぞ」

 桃花ももかした短棒たんぼうを、素通すどおりする。

「こちらで」

 地面じめんころがった長棒ながぼうひろう。

「お手柔てやわらかに、おねがいね」

 片桐かたぎりはは微笑ほほえんで、長棒ながぼうやりちした。先端せんたんしたきに地面じめんちかくまでげて、半身はんみかまえて、桃花ももかった。


 オレは、困惑こんわくした。いま桃花ももか挑戦ちょうせんするとか、度胸どきょう半端はんぱない。

 かまえは、やりというより、薙刀なぎなたっぽい。さまになってるから、心得こころえはありそうだ。

 歴戦れきせん戦士せんし雰囲気ふんいきがある。隻眼せきがん片桐かたぎり母親ははおやだけあって、むかし魔狩まかりだったのかもれない。


「まぁ、いいけど。怪我けがしてもらないわよ?」

 桃花ももか怪訝けげんそうに、短棒たんぼうかまえた。

「じゃあ、ルールは一緒いっしょで。相手あいて武器ぶきとすか、寸止すんどめな」

 オレは桃花ももかにルールを念押ねんおししながら、いしひろう。


「いくぜ!」

 夜空よぞらへといしげあげた。二人ふたり中間ちゅうかんあたりに、ボトッとちた。

 桃花ももか一瞬いっしゅんんだ。片桐かたぎりはは同時どうじに、一瞬いっしゅんんだ。

 間合まあいがちかい。桃花ももか長棒ながぼうはじばそうと、短棒たんぼうる。片桐かたぎりはは長棒ながぼう先端せんたんりあげる。

 短棒たんぼう柄尻つかじりたたかれて、桃花ももかからスッポけた。


 桃花ももかかまわず、さらにむ。ひくく、りおろされる長棒ながぼうしたへともぐむ。

 桃花ももか正拳せいけんきが、片桐かたぎりはは鳩尾みぞおちまえ寸止すんどめされた。


「……片桐かたぎりばあさんのちっす」

 オレは、ビックリしながら判定はんていした。

「え~?」

 桃花ももか不服ふふくそうににらむけど、ルールをいてないヤツはほうっておこう。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第48話 EP8-8 老婆ろうばむかしわかかった/END

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?