目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第49話 EP8-9 皆日々を積み重ねる

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


 桃花ももか片桐かたぎりはは手合てあわせをたりにした七海ななみが、まるくしてつぶやく。

「そうか。ボクは、初動しょどうおそいのか」

「そうっす。七海ななみさんは、相手あいてうごきをてから、自分じぶんの動きをめてうごしたっす。桃花ももか片桐かたぎりばあさんは、動き出しながら相手の動きを見て、自分の動きを決めてたっす」

 オレは全面的ぜんめんてき肯定こうていした。つたわってかった。


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。十四さい中学生ちゅうがくせいで、えないメガネ男子だんしである。普段着ふだんぎティーシャツジーパンで、こし廉価品れんかひん長剣ロングソードをさげる、一応いちおうしの魔狩まかりである。


「あいたたた。こしが……」

「おいおい。ばあさん、大丈夫だいじょうぶか?」

 片桐かたぎりははいたそうにこしさえて、くろかわジャンかわパンツの古堂ふるどうかたりて、縁側えんがわにあがる。

 とうと犠牲ぎせいだ。片桐かたぎりははすべてを理解りかいして、未来みらいある若者わかもののために、老骨ろうこつむちってくれたのだろう。


七海ななみさんは、どうして賞金しょうきんかせぎなんてしてるっすか?」

 オレも縁側えんがわにあがる。

賞金しょうきんかせぎなんて、あぶないわ。水瀬みなせさんも心配しんぱいしてるでしょう?」

 腰痛ようつうくるしむ片桐かたぎりははから、おも忠告ちゅうこくた。

 七海ななみまずげに苦笑くしょうする。縁側えんがわにあがって、オレのとなりすわる。

「ママは、ボクを自分じぶんおもどおりにできないのがらないだけさ」


七海ななみのおかあさんって、片桐かたぎりさんのもとパートナーなんでしょ!?」

 桃花ももかはなしいついた。

「もっ、ももももしかして、おっ、おとうさんはっ! かかかか片桐かたぎりさんででしょうか!?」

 フリルな私服しふく琴音ことねも、興奮こうふん気味ぎみいついた。


ちがちがう。パパは、一般人いっぱんじんのサラリーマンだよ。ママの自分勝手じぶんかってえられずに別居べっきょするような、普通ふつうひとだ」

 七海ななみがボーイッシュな微笑びしょうこたえた。

 複雑ふくざつそうな家庭かてい環境かんきょうだ。なるべくさわるまい、とオレはこころちかった。


   ◇


「どうして賞金しょうきんかせぎをしてるのかって? そんなの、まってるだろ?」

 七海ななみ不思議ふしぎそうにオレをる。

「おかねかせぐためさ」


「おかねかせいで、そのあとはどうしたいっすか?」

「えっ? そ、それは」

 七海ななみ今度こんどほおあからめて、よどんだ。

 不意ふい女子じょしっぽい反応はんのうをされると、ドキッとする。

「ボクは、その、わらわないでいてくれよ? よくあるはなしで、アイドルになりたいんだ。光速こうそくのライトニングさまや、華麗かれいなるシルヴィアさまみたいな」


 斎賀さいが 皐月さつきこと『ディメクラ』は、あこがれる魔狩まかり名前なまえがあがらないことで名高なだかい。


「まずは、装備そうび充実じゅうじつだね。うたとダンスのレッスンもけたい。のある武器ぶきにするのが、当面とうめん最終さいしゅう目標もくひょうかな」

 れながらも、夢見ゆめみがちながらも、意外いがい具体的ぐたいてきだ。


 才能さいのうのある魔狩まかりなら、一度いちどくらいは目標もくひょうにする。

 最強さいきょう魔狩まかりつらね、のある武器ぶきにする。

 桃花ももかむかしは、勇者ゆうしゃになって魔王まおうたおす、とゆめかたっていた。現実げんじつには魔王まおうはいないとって、落胆らくたんしていた。


「ボクはね、めぐまれてるとおもうんだ。希少きしょうなマーメイで、ライバルがすくない。バトルコスチュームが水着みずぎだから、人目ひとめきやすいだろ?」

「それは、そうっすね。みず事故じこらす、ってりもつよいっす」

 オレはおもわず賛同さんどうした。


   ◇


「ところで、片桐かたぎりのオバァサン。つよいんだね、ビックリした。魔狩まかりだったの?」

 興味きょうみ話題わだいが、片桐かたぎりははうつった。

むかしは、魔狩まかりとしてギルドに登録とうろくしていたわ。でも、才能さいのうがなくて、鍛錬たんれんんではみたけれど、ランクBまりだったのよ」

 片桐かたぎりははが、こしさすりながらこたえた。


「どうりで、つよかったわ」

 桃花ももかいながら、片桐かたぎりれのドーナツをえらぶ。

 こたえて、片桐かたぎりはは微笑びしょうする。

退治たいじした狭魔きょうまかずなんて、かぞえる程度ていど自分じぶん凡庸ぼんようさをさとって、あきらめてしまったの」


 そういうひと大半たいはんなのだろう。

 ちかくに桃花ももか琴音ことねがいるから、わすれる。皐月さつきやライトニングをたから、錯覚さっかくする。

 魔狩まかり狭魔きょうまたおすのは、ド派手はでなヒーローショーじゃない。きらびやかな舞台ぶたいでも、はなやかなステージでもない。


「そんなんじゃなくて、つよかったわ」

 桃花ももかめて、れたようにほおあからめて、ドーナツを頬張ほおばった。

「ふふ。ありがとうね、桃花ももかさん」

 片桐かたぎりははが、うれしげに微笑ほほえんだ。


   ◇


七海ななみさんには、桃花ももかえるようになってもらうっす。それくらいじゃないと、『まがつ』の討伐とうばつなんて無理むりっす」

 オレは、こころをスパルタコーチにするとめた。七海ななみのためだ。


ふぇ? このふぉふぉ辺りふぁふぁふぃに『ふぁふぁふふぁるのふふぉ?」

 桃花ももかが、この話題わだいにもいついた。

 オレはこたえようとして、戸惑とまどって、くびかしげる。

「……え、いや、そういうわけじゃ? えっと、ながれで『まがつ』がいるっぽいはなしにはなったような?」

 いないならいないでいい。いないほうがいい。


「ねぇ、勇斗ゆうとクン。明日あしたは、ボクにってよ? たのしいことを、おしえてあげる」

 七海ななみがオレをぐにつめて、悪戯いたずらっぽく微笑びしょうした。

 なにおしえてもらえるかは、なんとなく、かったがした。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第49話 EP8-9 みんな日々ひびかさねる/END

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?