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第51話 EP8-11 勇斗と七海

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。十四さい中学生ちゅうがくせいで、えないメガネ男子だんしである。普段着ふだんぎティーシャツジーパンで、こし廉価品れんかひん長剣ロングソードをさげる、一応いちおうしの魔狩まかりである。


 よる薄暗うすぐらにわで、桃花ももか七海ななみぼうにぎって、う。カンカンと小気味こきみおとる。

「だいぶいいわ。でもまだ、うごきと動きの一瞬いっしゅんまってる。まとにされるわよ」

つぎうごきをかんがえるときって、まるものだろ?」

「え? 七海ななみって、うごきをかんがえながらたたかうの?」

 桃花ももかはコーチにいてるのかいてないのかからない。


 オレは、戦闘せんとう技術ぎじゅつのコーチなんてできるわけないから、縁側えんがわすわって装備そうび準備じゅんびとメンテナンスをする。短期間たんきかん強化きょうかするなら、装備そうび更新こうしん有効ゆうこうである。


くらいとこで訓練くんれんすると、怪我けがしねぇか?」

 くろかわジャンかわパンツの古堂ふるどうが、半端はんぱじた雨戸あまどをかけて、にわのぞいた。

 ついさっきまで、田舎いなかまち子供ガキ主婦しゅふしか居無いねぇ!、となげいていた。

水中すいちゅう狭間はざまくらかんじだったっす」

 オレはもりみがきながらこたえた。


   ◇


休憩きゅうけい! のどかわいた! おばあちゃん、麦茶むぎちゃ~!」

 桃花ももか縁側えんがわにあがって、台所だいどころへとはしっていった。すっかりこのうちだ。


七海ななみさん。装備そうび試着しちゃくをおねがいするっす」

 タオルであせ七海ななみこえをかける。タンクトップにたんパンで露出ろしゅつおおく、視界しかいはいるとドキドキする。

「うん。どんな装備そうび?」

 七海ななみがオレの手元てもとのぞむ。むねふくらみが目線めせんたかさにくる。ドキドキする。


二個にこあるっす。一個いっこは、ボウガンとおな仕組しくみでせるもりっす。予備よび動作どうさなしで先手せんてれるっす」

 手甲てこう一体型いったいがたもりわたした。

へん武器ぶきだね」

おおきな、近距離きんきょりしかねらえないアームボウガンっすね。れなくて処分値しょぶんね安売やすうりだったっす」

「ふふっ。たしかに、活用かつようできるひとかぎられそうだ」

 七海ななみ装備そうびかんたしかめる。まんざらでもなさそうにえる。


「もう一個いっこは、一本型いっぽんがた脚鰭あしひれっす。金属きんぞくうろこおおわれて、こしまでカバーするっす」

「へ~。マーメイドの下半身かはんしんみたいだね」

 七海ななみ感心かんしんして、脚鰭あしひれ穿く。

 細長ほそながふくろ穿構造こうぞうで、内部ないぶ足腰あしこし密着みっちゃくするぐるみみたいになっている。先端せんたんさかな尾鰭おひれ形状けいじょうで、ひとあしより水中すいちゅうでの推進力すいしんりょくやすい。


 完全かんぜん人魚にんぎょだ。マーメイドだ。

「おっ? っとっとっと?」

 脚鰭あしひれ穿いた七海ななみ地面じめんねる。一本型いっぽんがた尾鰭おひれ形状けいじょうだけあって、地上ちじょうでの機動性きどうせいわってる。

 七海ななみ転倒てんとうして、ビタンッ、と地面じめんむねから衝突しょうとつした。


大丈夫だいじょうぶっすか?」

 オレは、心配しんぱいはしてないけど、こえをかけた。

「あははははっ!」

 七海ななみたのしげにわらった。


   ◇


 七海ななみ縁側えんがわすわる。脚鰭あしひれ穿いたまま、あしうごかす。

「うん。これ、いいね。人気にんきそう」

 ってもらえたようで、一安心ひとあんしんだ。


二個にことも、狭間はざまへのみテストをパスしてる正規品せいきひんっす」

 狭間はざまめるものには、制限せいげんがある。

 銃器じゅうき機械きかいたぐいめない。狭魔きょうま魔狩まかり狭間はざまむなら、みアイテムも狭魔きょうま制限せいげんしてるのかもれない。


 狭間はざま狭魔きょうまも、なぞおおい。かってることなんて、ほとんどない。


 銃器じゅうき機械きかいめるようになれば、一般人いっぱんじん被害者ひがいしゃ大幅おおはばる。研究けんきゅうさかんな人気にんき分野ぶんやである。


 オレは、ひらたいテンションのまま、つづける。

「やっぱり、ギルドに協力きょうりょくをおねがいしたほうがいいとおもうっす」

無理むり無理むり。キミもただろ。あのママが許可きょかするわけない」

 七海ななみ世間話せけんばなし口調くちょうこたえた。

片桐かたぎりさんにおねがいするのは?」

片桐かたぎりオジサンでも、担当たんとう地域外ちいきがい無理むりだよ」

片桐かたぎりさんに説得せっとくをおねがいしたら」

「ママはだれ意見いけんかない。自分じぶんかんがえをなになんでもとおす」

「あぁ、たしかに、そんなかんじっしたね……」

 水瀬みなせママの迫力はくりょくおもしてしまって、背筋せすじ悪寒おかんはしった。


   ◇


「そんなに心配しんぱいしなくても大丈夫だいじょうぶさ、勇斗ゆうとクン。キミがくれたアドバイスと装備そうび十分じゅうぶんだよ」

「でも、データのまったくない『まがつ』かもれないっす。用心ようじん用心ようじんかさねたほうがいいっす。まんいちにも」

「ふふっ」

 七海ななみ微笑びしょうして、人差ひとさゆびさきをオレのくちびるれた。

 オレはドキッとして、おもわずだまった。


「コンビって、相棒あいぼうしんじることだとおもうんだ。だから、勇斗ゆうとクンには、ボクをしんじてほしいな」

 七海ななみ言葉ことばは、それは、そうだった。

 オレは、たぶん、七海ななみつよさをらなくて、しんじてなかった。


 桃花ももかは、つよさをってるし、しんじてる。しんじて、アドバイスとサポートをする。桃花ももか信頼しんらいこたえて、かならってくれる。


「……心得こころえたっす。オレも七海ななみさんをしんじるっす。相棒あいぼうしんじて、オレにできる最善さいぜんくさせてもらうっす」

 オレは、覚悟かくごめた。七海ななみしんじて、全力ぜんりょくささえて、どんな結果けっかになったとしても、最後さいごまで見届みとどけよう。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第51話 EP8-11 勇斗ゆうと七海ななみ/END

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