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第56話 EP8-16 爽やかな青年

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。十四さい中学生ちゅうがくせいで、えないメガネ男子だんしである。普段着ふだんぎティーシャツジーパンで、こし廉価品れんかひん長剣ロングソードをさげる、一応いちおうしの魔狩まかりである。


勇斗ゆうと~! ちょっとって~!」

 そとから、桃花ももかばれた。


 オレは、二階にかいのオレの部屋へやまどから、そとる。

 片桐かたぎり実家じっかからかえって、数日すうじつった。『まがつ』のけんがあったから、当初とうしょ予定よていよりもながくお世話せわになった。

 でも、夏休なつやすみはまだまだつづく。ながやすみは素晴すばらしい。


わるい、桃花ももか。オレはいま拠点きょてん哨戒しょうかいいそがしいんだ」

 オレは、にわからこっちをあげる桃花ももかあやまった。


 絢染あやそめ 桃花ももか魔狩まかりである。オレの幼馴染おさななじみで、十四さい中学生ちゅうがくせいで、桃色ももいろながかみで、華奢きゃしゃで、むねちいさい。

 いつもの私服しふく、ノースリーブにミニスカートにスニーカー姿すがたで、こし自身じしんどうサイズの両刃りょうば大剣たいけんをさげる。


 桃花ももか不機嫌ふきげんかおをする。

黒岩くろいわどうくんだけど!」

「だったらく! ちょっとってて!」

 オレはあわてて、ボイチャであやまって、オンゲからログアウトした。


   ◇


 なつ日差ひざしがあつい。あせしたたる。セミのこえうるさい。

 オレと桃花ももか二人ふたりならんで、住宅地じゅうたくちからすこはなれた山沿やまぞいのみちあるく。人気ひとけなく、くさボウボウのばかりで、ポツポツとまばらにしか建物たてもののない、れたアスファルトのみちの、さびれた場所ばしょである。


「オレてきには、日本刀にほんとうしいわけ」

勇斗ゆうと日本刀にほんとう使つかいこなせるわけないでしょ」

 他愛たあいないおしゃべりをしながら、目的地もくてきち目指めざす。

 ここのみちには、くらやまなかへとつづふるみち幾本いくほんびる。神隠かみかくしの昔話むかしばなしもあったりして、昼間ひるまでも一人ひとりあるくのはこわい。


「……ちょっとみち

 桃花ももかあしをとめて、やまほうた。木々きぎくらやまみち一本いっぽんへと、んだ。


 前触まえぶれもなく、空気くうきわった。


   ◇


 桃花ももかえる。直前ちょくぜんまでいた場所ばしょに、もういない。

 桃花ももかは、この世界せかいから、狭間はざまばれる世界せかいまれたのだ。


 普通ふつうは、この世界せかいから狭間はざまえない。オレは、える特殊とくしゅ能力のうりょくちだから、える。


 くらもりみたいな、灰色はいいろくろ狭間はざまだ。

 球体きゅうたい筋肉きんにく達磨だるまにしてマッチョなうであしやしたようなの、桃花ももか三倍さんばいくらいの背丈せたけくろ狭魔きょうまがいる。


 ただけで、オレの視界しかいくらくなる。真夏まなつ昼間ぴるまだってのに、なにもない、おとのない、やみなかにいる気分きぶんに……。……オレは、孤独こどくに、オレは、に、オレは、たたずむ。


 桃花ももかつよくなった。力量りきりょうがあがった。いまや、最強さいきょうばれる魔狩まかりたちの背中せなかえるほどに、だ。


 だから、桃花ももか狭魔きょうまも、つよくなった。最強さいきょうひとたたか狭魔ヤツほどじゃないけど、ただけでおかしくなるような、ヤバいヤツになった。


「キモい!」

 桃花ももかが、こし革鞘かわざやから大剣たいけんく。きざまに、よこ一文字いちもんじにマッチョ狭魔きょうまりつける。

「ミシィッ」

 奇怪きかいこえのようなきしみのようなおとで、マッチョ狭魔きょうまにぎわせた両手りょうて頭上ずじょうりあげる。あたまべそうな部位ぶいはないけど、筋肉きんにく達磨だるま上方じょうほうだから、便宜上べんぎじょう頭上ずじょうとしておこう。


 桃花ももか大剣たいけんが、マッチョ狭魔きょうまよこぱらんだ。便宜上べんぎじょうよこぱらと。

「ミシミシミシィッ!」

 よこぱらんで、大剣たいけん途中とちゅうでとまった。両断りょうだんいたらなかった。


 マッチョ狭魔きょうまのムキムキの両腕りょううでが、鈍重どんじゅう漫然まんぜんと、ハンマーナックルを桃花ももかへとりおろす。

「キィーッ! モォーッ! いぃーっ!」

 桃花ももかかまわず、両手りょうてにぎった両刃りょうば大剣たいけんに、にぎ両手りょうて渾身こんしんちからめる。必死ひっし形相ぎょうそういしばる。


「ミ゛ィジィィィッ!」

 ハンマーナックルがとどまえに、マッチョ狭魔きょうま上半身じょうはんしんちゅうった。便宜上べんぎじょう上半身じょうはんしんと。


   ◇


 桃花ももかふたたび、くらやまなかへとつづふるみちにいる。いきあらあせだくで、ちてきた小石こいしをキャッチする。

 狭魔きょうまたおすと、えて小石こいしわる。その小石を魔狩まかりギルドにむと、賞金しょうきん実績じっせき評価ひょうかえてくれるのである。


大丈夫だいじょうぶか、桃花ももか? 苦戦くせんしてたみたいだけど」

 オレは気遣きづかって、こえをかけた。

雷獣らいじゅうせんあとから、あじ今一いまいちなのよ。黒岩くろいわどう整備せいびしてもらおうとおもって」

 桃花ももかかるこたえた。


 黒岩くろいわどうは、魔狩まかりけの装備そうびあつかみせである。スキンヘッドの頑固がんこオヤジが店主てんしゅの、店主一人ひとり営業えいぎょうしてる、一軒家いっけんやちいさな武器屋ぶきやである。


 廉価品れんかひん装備そうびは、あかるい量販店りょうはんてんられてる。魔狩まかりけの装備そうびは、くらちいさな玄人くろうとけの小売店こうりてんってる。そういうイメージがある。


「だったら、はやこうぜ。オレに相応ふさわしい格好かっこいい武器ぶきもあるといいなぁ~」

 オレはかれて相槌あいづちった。廉価品れんかひん長剣ロングソード卒業そつぎょうして、魔狩まかりとしてつぎのステップに凛々りりしい自分じぶん妄想もうそうして、たのしい気分きぶんだった。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第56話 EP9-1 さわやかな青年せいねん/END

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