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第57話 EP9-2 黒岩堂

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


 くらやまくさボウボウのはさまれた、れたアスファルトのみちあるく。そこだけ雑草ざっそうられた敷地しきちの、ちいさく古風こふう一軒家いっけんやえてくる。

 ふるぼけた看板かんばんかかげる、ていえばボロい木造もくぞう店舗てんぽだ。桃花ももかがお世話せわになってる武器屋ぶきや、『黒岩くろいわどう』だ。


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。十四さい中学生ちゅうがくせいで、えないメガネ男子だんしである。普段着ふだんぎティーシャツジーパンスニーカーで、こし廉価品れんかひん長剣ロングソードをさげる、一応いちおうしの魔狩まかりである。


 ガタつく格子戸こうしどける。来客らいきゃくらせるベルが、カランカランとかわいたおとる。

黒岩くろいわさん! こんにちは!」

 みせはいるなり、桃花ももか元気げんきよく挨拶あいさつした。

「こんちはっす」

 オレも、桃花ももかつづいて挨拶あいさつした。


 リビングルームくらいのひろさのせま店内てんないに、所狭ところせましと武器ぶきならぶ。

 かべやりてかけられる。かべがね大斧おおおのかる。傘立かさたてみたいなかごに、何本なんぼんものけんさる。

 中央ちゅうおうのガラスケースには、魔力付与エンチャントひかりはな武器ぶきや、宝石ほうせきめられた宝剣ほうけんおさまる。


 ふるめかしい帳場ちょうばおくの、いた襖戸ふすまどから、スキンヘッドの頑固がんこオヤジがかおした。店主てんしゅ黒岩くろいわだ。

 ガタイのいい中年ちゅうねんおとこで、気難きむずかしそうなふと眉毛まゆげで、うでふとくて、赤銅色しゃくどういろ日焼ひやけして、だいたいくろティーシャツにハーフパンツをてる。


おう今日きょうは、どうした?」

 相変あいかわらず、無愛想ぶあいそ低音ていおんだ。

「アタシの大剣たいけん整備せいびして」

 桃花ももか無造作むぞうさに、自身じしんどうサイズの両刃りょうば大剣たいけんす。

 黒岩くろいわ無造作むぞうさる。


がっとる。もあちこちつぶれとるな。すこし、っとれ」

 大剣たいけんって、黒岩くろいわけた。

雷獣らいじゅうせんあとから、あじ今一いまいちなのよ」

「そうか。雷獣らいじゅうか」

 黒岩くろいわ納得なっとくする。すぐになにかにおもいたって、きゅうかえる。

「……」

 なにいたげにして、しかしなにわず、おくへとえた。

 オレにはかる。もっとはやめにってこい、といたいけど、桃花ももかっても無理むりか、とあきらめたのである。


 黒岩くろいわもどってきて、オレたちのまえ煎餅せんべいちゃく。

わるまで、わりにっとれ」

 桃花ももかに、くろ革鞘かわざやの、菱形ひしがた大刃おおば短剣たんけんわたす。

「ありがと」

 桃花ももか無造作むぞうさる。

すこし、っとれ」

「はーい」

「おねがいするっす」

 桃花ももかとオレの返事へんじうなずいて、またおくへとえた。


   ◇


 黒岩くろいわは、うでのいい鍛冶師かじしだ、とおもう。

 かなり高名こうめい鍛冶師かじしいえまれだけど後継こうけいえらばれずてた、とうわさいたことがある。その結果けっかか、こんなさびれた郊外こうがいで、ちいさな武器屋ぶきやで、中学生ちゅうがくせい相手あいて商売しょうばいしてる。

 それでも、桃花ももかきつけにしてるなら、うでたしかだろう。


 桃花ももかが、くろ革鞘かわざやから短剣たんけんいた。

 くろつかに、菱形ひしがたくろ金属きんぞくやいばだ。ひろげたくらいのおおきさで、分厚ぶあつくて、不格好ぶかっこうだ。


 形状けいじょうはどうでもいいと、かる。やいばから、桃花ももか大剣たいけんどうサイズの、闇色やみいろのオーラがひろがる。


「うおっ?! 魔力付与エンチャンテッド武器ウェポンじゃん!」

 オレはビックリした。


 うすボンヤリと魔力まりょくひか短剣たんけんでも、普通ふつう中学生ちゅうがくせいではえない高額品こうがくひんである。桃花ももかですら、大剣たいけんってのもあるけど、ただのはがね武器ぶき使つかってる。

 これは、たぶん、かなり強力きょうりょくなものだ。知名度ちめいどがないだけの、のある武器ぶき、なんだか矛盾むじゅんしてるけど、かもれない。


 超常ちょうじょう武器ぶきだって、すべての所有者しょゆうしゃ判明はんめいしてるわけじゃない。最強さいきょう魔狩まかり実用じつようしてたり、無名むめい日陰者ひかげものにあったり、金持かねもちが道楽どうらくかざってたりするのだろう。オレたちのらないのある武器ぶき、やっぱり矛盾むじゅんしてるけど、があっても不思議ふしぎじゃない。


 短剣たんけんをジッとつめていた桃花ももかが、やいば先端せんたんゆびさす。

「ここ。刃先はさきれてるわ」

 われて、オレも刃先はさきつめる。

本当ほんとだ。黒岩くろいわさんとこに、修理しゅうりまれたのかな?」

 こんなるからに強力きょうりょく魔力付与エンチャンテッド武器ウェポンともなると、こんなちいさな武器屋ぶきや所有しょゆうできるような半端はんぱ価値かちじゃまない。黒岩くろいわ個人こじん所有しょゆうものじゃないのは間違まちがいない。

 だったら、修理しゅうりみだ。


 魔力付与エンチャンテッド武器ウェポンだって、こわれるときはこわれる。こわれたら修理しゅうりする。

 普通ふつう武器ぶき同様どうよう修理しゅうりとはいかない。特殊とくしゅ技術ぎじゅつ必要ひつようで、できる鍛冶師かじしかぎられる。

 もしそうなら、かなり高名こうめい鍛冶師かじしいえまれ、とのうわさ真実しんじつなのかもれない。


桃花ももかもそろそろ、魔力付与エンチャンテッド武器ウェポンったほうがいいんじゃないか?」

「そんなおかね、あるわけないでしょ」

「だよな。たっかいよな~」


 二人ふたり他愛たあいない雑談ざつだんをしてたら、格子戸こうしどいた。来客らいきゃくらせるベルがカランカランとって、高校生こうこうせいくらいのおとこはいってきた。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第57話 EP9-2 黒岩くろいわどう/END

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