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第60話 EP9-5 他所の支部の手伝い

  この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


「んふぅ。『バイオレンス絢染あやそめ』が討伐とうばつ要請ようせいけてくれて、たすかったわぁ」

 水瀬みなせママがニコニコとわらう。


 水瀬みなせママは、七海ななみ母親ははおやである。スカートスーツで、きっちりと容姿ようしととのえた、化粧けしょうい、しのつよいオバサンである。ここの支部しぶ支部しぶちょうでもある。


「そこに『スコーパ』も同行どうこうしてくれるなんて、いいわぁ。とても、いいわぁ」

 水瀬みなせママのアイシャドウバッチリのウィンクが、オレにんだ。

 オレの背筋せすじに、ゾワワワワワワッ、と悪寒おかんはしった。


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。十四さい中学生ちゅうがくせいで、えないメガネ男子だんしである。普段着ふだんぎティーシャツジーパンスニーカーで、こし廉価品れんかひん長剣ロングソードをさげる、一応いちおうしの魔狩まかりである。


   ◇


 夏休なつやすみでうショッピングモールにいる。水瀬みなせママの支部しぶ片桐かたぎりのいる支部しぶ双方そうほう担当たんとう地域ちいきさかいあたりにある。

 こちらの世界せかいあく影響えいきょうおよぼす狭魔きょうまた、といた。討伐とうばつやく桃花ももかと、サポートやくのオレがた。


 絢染あやそめ 桃花ももか魔狩まかりである。オレの幼馴染おさななじみで、十四さい中学生ちゅうがくせいで、桃色ももいろながかみで、華奢きゃしゃで、むねちいさい。

 いつもの私服しふく、ノースリーブにミニスカートにスニーカー姿すがたで、こし自身じしんどうサイズの両刃りょうば大剣たいけんをさげる。


 ちなみに、狭聖きょうせい教団きょうだん教主きょうしゅけんは、魔狩まかりギルドに情報じょうほう似顔絵にがおえわたして丸投まるなげした。こわい。かかわりたくない。


「ランクS相当そうとう狭魔きょうまってことっすよね?」

 一階いっかいひろ通路つうろを、三人さんにん一塊ひとかたまりで、人混ひとごみのながれにわせてあるく。ならぶオシャレな店舗てんぽ左右さゆうながら、あかるくて、にぎやかで、たのしい気分きぶんになる。

「ランクSの上位じょういくらいね。私の支部うちにランクの魔狩まかりがいなくて、こまってたのよ。こうランクの魔狩まかり遠方えんぽうからぶと、費用ひようかさむじゃない?」

 水瀬みなせママが愚痴ぐちっぽく同意どういもとめてきた。

 中学生ちゅうがくせいかれてもこまる。おおきな組織そしき金銭きんせん事情じじょうなんてらない。

「ショッピングモールを封鎖ふうさするわけにもいかないし。一日いちにちたり、どれだけの損失そんしつ発生はっせいするとおもってるのよ、ねぇ?」

 だから中学生ちゅうがくせいかれてもこまるって。

「そうっすねぇ」

 オレはたりさわりなくはなしわせた。


今回こんかい狭魔きょうまは、巡回じゅんかいがたよ。このショッピングモールのなかを、ほぼ一定いってい時間じかん一周いっしゅうするわ」

 愚痴ぐちきたのか、水瀬みなせママが本題ほんだいはいった。

「そんなのかるっすか?」

「それがね、……まぁ、そろそろだし、てもらったほうはやいわね」


 きゅうに、人混ひとごみのながれがまった。

いま、わざとてただろ!」

「そっちこそ、わざとだろ!」

 怒声どせいがあがった。

「とっととすすめ!」

映画えいがはじまっちゃう!」

 つづけざまに数人すうにん怒鳴どなごえをあげた。


 オレは身構みがまえる。大乱闘だいらんとうでもきそうに、雰囲気ふんいきが、刺々とげとげしく一変いっぺんしてる。

「えっ? あっ、す、すみません」

「いっ、いえいえこちらこそ、もうわけない」

 またもきゅうに、あちこちから謝罪しゃざいこえこえた。あかるくて、にぎやかで、たのしい気分きぶんで、人混ひとごみがふたたながはじめた。


「……なるほど。ちかいとおこりやすくなるっすか」

「そういうこと。イベントスペースを禁止きんし確保かくほしてあるから、そこで討伐とうばつするわよ。すぐにたたかえるようにしておきなさい」

まかせて」

 桃花ももかが、こともなげにった。


   ◇


 ひろ通路つうろ途中とちゅうに、かべへこんでみちふくらんだかんじの広場ひろばがある。そこがイベントスペースで、イベントがおこなわれてるみたいなひとだかりができている。

「ここは魔狩まかりギルドで禁止きんしにしております! 危険きけんですのでちかづかないでください!」

狭聖きょうせいさまあだなす邪教徒じゃきょうとどもめ! いずれ天罰てんばつくだるぞ!」

 あらそいもこえる。


「まぁた狭聖きょうせい教団きょうだんね! とっととせなさい! あなたたちのせいで、警備けいび費用ひよういくえてるとおもってるの!?」

 水瀬みなせママがわめきながら、野次馬やじうまひとだかりをける。オレと桃花ももかは、しのつよいオバサンのたのもしい背中せなかつづく。


 野次馬やじうまひとだかりをけた。禁止きんしのテープのまえで、ギルド職員しょくいんとシンプルなくろ司祭服しさいふく男女だんじょ数人すうにんが、あらそっていた。

 寸前すんぜんくらいに白熱はくねつしてる。司祭服しさいふくの方は、むねしろ灰色はいいろくろじりうデザインの紋章もんしょうがある。狭聖きょうせい教団きょうだん信者しんじゃかる。


っときゃいいわよ」

 桃花ももか平然へいぜんう。ランクS上位じょうい相当そうとう狭魔きょうま討伐とうばつ邪魔じゃまなんてできるわけないから、ただしい。

 野次馬やじうまからおとこした。

「ちょっと! きみ?!」

 ギルド職員しょくいんが、おどろいて制止せいししようとした。司祭服しさいふく数人すうにんが、ギルド職員しょくいんたちにつかみかかった。


 おとこ禁止きんしのテープをくぐって、イベントスペースにむ。

 高校生こうこうせいくらいのおとこである。華奢きゃしゃで、インドアなかんじの地味じみ服装ふくそうで、あわ金髪きんぱつ紺色こんいろのキャップをかぶり、サングラスをかける。こしには、ぬのかくして長剣ちょうけんらしきものをさげる。


 オレは直感的ちょっかんてきに、狭聖きょうせい教団きょうだん教主きょうしゅだとおもった。こっちをチラと横目よこめ横顔よこがおが、女子じょしにもえそうな美青年びせいねんだった。


 前触まえぶれもなく、空気くうきわった。

 この世界せかいから、その青年せいねんえた。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第60話 EP9-5 他所よそ支部しぶ手伝てつだい/END

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