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第61話 EP9-6 美青年の本気

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


 桃花ももかいて、高校生こうこうせいくらいの美青年びせいねんが、狭間はざまへとまれた。


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。この世界せかいから狭間はざまえる特殊とくしゅ能力のうりょくちである。


 だから、える。


 狭間はざましろそらしたに、灰色はいいろ荒野こうやひろがる。つよかぜしろいて、灰色はいいろ荒野こうや灰色はいいろ砂埃すなぼこりすさぶ。


 狭魔きょうまは、二足にそく歩行ほこうの、……うし?、猛牛もうぎゅうだ。立派りっぱつの二本にほんあって、全身ぜんしん茶色ちゃいろ剛毛ごうもうおおわれた、ミノタウロスってかんじだ。

「ブロロロロロ!」

 ミノタウロスがいななく。あしひづめ荒野こうやく。

 興奮こうふんしてる。あらぶってる。


 相対あいたいする美青年びせいねん紺色こんいろのキャップにサングラスで、こし武器ぶきかない。敵意てきいはないとしめすように両腕りょううでひろげ、かたりかけはじめた。


 本気マジか!? 正気しょうきか!? か!?


   ◇


 こっちの世界せかいも、それどころじゃない。


穏便おんびんにしてやってれば調子ちょうしりやがって!」

あらためろ!」

「いいぞ! いけ! もっとやれ!」

「いやっほぅっ! もう我慢がまんできねぇ! おれぜろ!」

 ギルド職員しょくいん狭聖きょうせい教団きょうだん信者しんじゃと、野次馬やじうままでゴチャぜになって、大乱闘だいらんとうはじまった。


「アタシに喧嘩けんかるなんて、イイ度胸どきょうね!」

 桃花ももかまで興奮こうふんして、乱闘らんとうもうとする。

 オレはあわてて、両手りょうて桃花ももかおおう。

け、桃花ももか! かえりにアイスおごってやるから!」

なんなのよ、あいつは?! わたし支部しぶ評価ひょうかがっちゃうー!」

 水瀬みなせママまで、ヒステリックにわめした。


 非力ひりきなオレが、そんなに何人なんにん相手あいてにできるわけない。


   ◇


 狭間はざまでは、美青年びせいねんがミノタウロスにかたりかけつづける。


「ブロォッ!」

 ミノタウロスがひづめで、灰色はいいろ荒野こうやつよった。猛烈もうれつ加速かそくで、一秒いちびょうとかからずに猛烈もうれつなトップスピードで、美青年びせいねん突進とっしんした。


 かる。あれが直撃ちょくげきしたら、だいたいは微塵みじんになる。


 美青年びせいねんようやく、こし長剣ちょうけん光輝十字剣ライトクルセイダー』をいた。逆手さかてって、むねたかさにかざした。

 光輝十字剣ライトクルセイダーからひかりひろがる。美青年びせいねん前面ぜんめんおおって、ひかりの、大型おおがた菱形盾カイトシールドとなる。


 超常ちょうじょう武器ぶき光輝十字剣ライトクルセイダー』は、ひかりちからやいばともたてともなり、攻防こうぼう一体いったいほこる。武器ぶきとしては最強さいきょうクラスとひょうされる。

 でも、『オールマイティ』の魔狩まかりにしか使つかえないせいで、目立めだった逸話いつわはない。


 ドガンッ、とミノタウロスの突進とっしん光輝十字剣ライトクルセイダーたてけて、美青年びせいねんはじばされた。灰色はいいろ荒野こうやたたきつけられて、ころがった。

「くっ!」

 苦痛くつううめきながら、片膝かたひざちで体勢たいせいなおした。


 あれできてるなら、戦闘せんとうけい能力のうりょくひとつはってるらしい。きててよかった。


 いや、まだ安心あんしんするにははやい。


 美青年びせいねんはじばしったミノタウロスが、おおきくがりながらつづける。ほとんど減速げんそくせず、むしろ加速かそくして、美青年びせいねんさい突撃とつげきをかけるつもりらしい。


 美青年びせいねん片膝かたひざちで、それでもかたりかけつづける。

 そんなの無理むりだ、無駄むだだ。くわけない。

 ミノタウロスが、美青年びせいねんへのさい突撃とつげきの、直線ちょくせんコースにはいった。

 美青年びせいねんが、くやしげにくちびるんだ。光輝十字剣ライトクルセイダーひかりが、大型おおがた菱形盾カイトシールドから細身ほそみ長剣ちょうけんわった。


「ブロォッ!」

 もうスピードで突撃とつげきするミノタウロスと、片膝かたひざちでひかり長剣ちょうけんりあげる美青年びせいねんが、交差こうさした。


   ◇


 こっちの世界せかいもどった美青年びせいねん片膝かたひざちで、たおれそうに、片手かたてゆかについた。

 小石こいしゆかちて、カツンカツンとかたおところがった。


「えっ!? 討伐とうばつされたの!? されたのかしら!?」

 水瀬みなせママが混乱顔こんらんがおでキョロキョロする。

 ギルド職員しょくいん狭聖きょうせい教団きょうだん信者しんじゃ野次馬やじうまも、つかったまま呆然ぼうぜんとしてる。


 原因げんいん狭魔きょうまたおされて、全員ぜんいん正気しょうきもどったようだ。


 人混ひとごみからした一般人いっぱんじんんで、小石こいしひろった。きびすかえして、人混ひとごみにんだ。


 ……じゃない! 一般人いっぱんじんまぎんだ狭聖きょうせい教団きょうだん信者しんじゃだ!


 美青年びせいねんも、べつひとかたりて、人混ひとごみにまぎむ。


がすわけないわ! あなたたち! すぐにいなさい!」

 事態じたい把握はあくした水瀬みなせママの号令ごうれいで、ギルド職員しょくいんあわててう。

げるか?! 邪教徒じゃきょうとどもめ!」

狭聖きょうせいさま御力みちからに、いまさらおそれをなしたか!」

 信者しんじゃたちがギルド職員しょくいんびかかった。


 段取だんどりをっていた狭聖きょうせい教団きょうだんほうが、対応たいおうはやい。ダメだ、これはられる。


 こうなったら、オレはさけぶ。人混ひとごみにえた美青年びせいねんへと、こえばす。

「やる満々まんまん相手あいてはなしくわけないっす! まずはちからせつけて、戦意せんいいだほうがいいっす!」


「……ありがとうございます!」

 たしかに、教主きょうしゅばれていた美青年びせいねんこえかえってきた。はし足音あしおととおざかっていった。


「ちょっと勇斗ゆうと。なんでてきにアドバイスするのよ?」

 桃花ももか不満ふまんげにほおふくらませた。

「だって、てきでも、んだらいやだろ?」

 オレは、たりまえのことを、たりまえこたえた。

「……それは、まぁ、それは、そうね」

 桃花ももか不満ふまんげに、でも渋々しぶしぶと、納得なっとくした。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第61話 EP9-6 美青年びせいねん本気ほんき/END

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