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第63話 EP9-8 本人に聞くのが早い

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。十四さい中学生ちゅうがくせいで、えないメガネ男子だんしである。普段着ふだんぎティーシャツジーパンスニーカーで、こし廉価品れんかひん長剣ロングソードをさげる、一応いちおうしの魔狩まかりである。


「オレてきには、日本刀にほんとうしいっす」

 オレは、率直そっちょく要望ようぼうした。

一般人いっぱんじんは、廉価品れんかひんにしとけ」

 黒岩くろいわが、無愛想ぶあいそ低音ていおんこたえた。


 桃花ももかわらいながら、バンバンとオレの背中せなかたたく。

「アハハハッ! だからったでしょ。勇斗ゆうと日本刀にほんとう使つかいこなせるわけない、って」

 琴音ことね憐憫れんびんでオレをる。

「とっ、遠見とおみくんは、え、えっと、ほら、あ、あれ、ですから……」

廉価品れんかひんは、かる丈夫じょうぶに、腕力わんりょくのない一般人いっぱんじんでも咄嗟とっされるようにつくられとる」

 黒岩くろいわ同情的どうじょうてきなフォローがはいった。


 黒岩くろいわは、武器屋ぶきや黒岩くろいわどう』の店主てんしゅである。ガタイのいい中年ちゅうねんおとこで、気難きむずかしそうなふと眉毛まゆげで、うでふとくて、赤銅色しゃくどういろ日焼ひやけして、だいたいくろティーシャツにハーフパンツをてる。


「いや、あの、オレ、一般人いっぱんじんじゃないっす……」


 オレと桃花ももか琴音ことね三人さんにんで、『黒岩くろいわどう』にてる。せま店内てんない魔狩まかりけの実戦じっせん装備そうびならぶ、個人こじん経営けいえいのボロい武器屋ぶきやである。


   ◇


 ぐち格子戸こうしどが、ガタついていた。来客らいきゃくらせるベルが、カランカランとかわいたおとった。


失礼しつれいいたします」

 高校生こうこうせいくらいの、女子じょしにもえそうな美青年びせいねんはいってくる。『狭聖きょうせい教団きょうだん』の教主きょうしゅで、『オールマイティ』で、こし超常ちょうじょう武器ぶき光輝十字剣ライトクルセイダー』をさげる。悪人あくにんっぽくなくて、むしろ、ひとさそうなかんじをける。


「げっ、現実げんじつの! はっ、はかなげなっ、びっ、美青年びせいねんです! リっ、リアルの!」

 はかなげな美青年びせいねんじかにきただけの琴音ことねが、教主きょうしゅはかなげな美青年びせいねんっぷりに興奮こうふんする。はかなげな美青年びせいねんに、ちょっと困惑こんわくされてる。


 教主きょうしゅ華奢きゃしゃからだに、高位こうい聖職者せいしょくしゃまとうような、多層たそう多段ただんのヒラヒラとした祭服さいふくる。祭服は純白じゅんぱくで、むねしろ灰色はいいろくろじりうデザインの、『狭聖きょうせい教団きょうだん』の紋章もんしょうがある。


「いらっしゃい。できてるわよ」

 桃花ももか平然へいぜんと、くろ革鞘かわざやの、菱形ひしがた大刃おおば短剣たんけんわたした。


「ありがとうございます」

 短剣たんけんった教主きょうしゅが、くろつかにぎり、微笑ほほえむ。

御店主ごてんしゅは、本当ほんとう素晴すばらしいうでぬしですね」

代金だいきんは、前金まえきんもらっとる。そのままってけ」

 称賛しょうさんされた黒岩くろいわが、気難きむずかしそうなオッサンがおあかくしてれて、無愛想ぶあいそ低音ていおんこたえた。


   ◇


「どうして、あんなことしたのよ?」

 桃花ももか平然へいぜんと、敵意てきいのあるいた。


 教主きょうしゅが、まずげに微笑びしょうする。

「そのことについて、説明せつめいしても、ご理解りかいはいただけないでしょうから。ぼくなにをしているか、『スコーパ』の遠見とおみ 勇斗ゆうとさんが直接ちょくせつ判断はんだんしていただけないでしょうか?」

 教主きょうしゅ華奢きゃしゃが、オレにべられた。

「そうさせてもらうっす」

 オレは即答そくとうした。


 虎穴こけつらずんば虎子こじず。

 こっちは最初さいしょからそのつもりだ。ここならまたえるだろうと、『黒岩くろいわどう』にびたっていたのだ。


 人差ひとさゆびてて、教主きょうしゅまえす。

「ただし、ひと条件じょうけんがあるっす」

なんなりと、おっしゃってください」

「こっちは、『バイオレンス絢染あやそめ』を同行どうこうさせてもらうっす」

 オレは、ビビってふるえる桃花ももかすがった。


   ◇


 ってことで、狭聖きょうせい教団きょうだん施設しせつってしまった。

 こわい! かえりたい!


 来客用らいきゃくよう薄茶うすちゃいろのローブを、あたまからかぶる。教主きょうしゅ背中せなかに、おなじく薄茶うすちゃローブの桃花ももかすがって、つづく。

 いかにも新興しんこう宗教しゅうきょうな、質素しっそだけど真新まあたらしい、しろ施設しせつだ。


 しろ廊下ろうかで、しろ灰色はいいろくろ司祭服しさいふくひとちがう。みんな壁際かべぎわけて、うやうやしくこうべれる。

狭聖きょうせいさま御加護ごかごがありますように」

 その都度つど教主きょうしゅ笑顔えがおで、祝福しゅくふくこえをかける。いかにも宗教しゅうきょうっぽくて、オレのなか不安ふあんおおきくなっていく。


「こちらです」

 なが廊下ろうかたり、狭聖きょうせい教団きょうだん紋章もんしょうおなじデザインの、両開りょうびらきのとびらまえた。

 なぜか、とびらまえに、くろ司祭服しさいふく大男おおおとこがいる。なぜか、って、門番もんばんだとおもうけど。


 大男おおおとこ突然とつぜん司祭服しさいふくうえをはだけて、上半身じょうはんしん露出ろしゅつする。

教主きょうしゅさま! 大切たいせつ儀式ぎしき人払ひとばらい! とどこおりなく完了かんりょうしてございます!」

 二十歳はたちくらいのスポーツマンな角刈かくがおとこで、暑苦あつくるしいマッチョのポージングで、野太のぶとこえ報告ほうこくした。


 ツッコミどころがおおすぎるけど! 敵地てきちだから! こわくてツッコめない!


「ありがとうございます。狭聖きょうせいさま御加護ごかごがありますように」

勿体もったいなき御言葉おことばです!」

 マッチョなポージングでかしこまる暑苦あつくるしい半裸男はんらおとこ会釈えしゃくして、くら部屋へやはいる。ギギギときしんでとびらじられ、いよいよくらになる。


「これより、ひと言葉ことばかいする、かぎ唯一ゆいいつ狭聖きょうせいさま、ネジレさまとの対話たいわおこないます」

 教主きょうしゅこしの『光輝十字剣ライトクルセイダー』が、薄明うすあかるく周囲しゅういらした。まどなにもない、くろはこみたいなイスがひとつだけある、くろせま部屋へやだった。


 前触まえぶれもなく、空気くうきわった。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第63話 EP9-8 本人ほんにんくのがはやい/END

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