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第65話 EP10-1 強くなりたい

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


 花火はなび大会たいかい会場かいじょうにいる。川沿かわぞいの公園こうえんに、昼間ひるまから露店ろてんならび、客引きゃくひきのこえう。

 人出ひとでおおい。人々ひとびと視界しかいはばまれて、じゅうメートルさきえない。花火はなびのあがるよるになれば、あるくのもままならないくらいにうだろう。


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。十四さい中学生ちゅうがくせいで、えないメガネ男子だんしである。普段着ふだんぎティーシャツジーパンスニーカーで、こし廉価品れんかひん長剣ロングソードをさげる、一応いちおうしの魔狩まかりである。


「うぅっ……。こわいよぅ……。かえりたいよぅ……」

 オレは両手りょうてかおおおって、道端みちばたうずくまった。

自信じしんちなさい、勇斗ゆうと

 桃花ももかが、露店ろてん物色ぶっしょくしながら、ざつ激励げきれいしてきた。


 絢染あやそめ 桃花ももか魔狩まかりである。オレの幼馴染おさななじみで、十四さい中学生ちゅうがくせいで、桃色ももいろながかみで、華奢きゃしゃで、むねちいさい。

 いつもの私服しふく、ノースリーブにミニスカートにスニーカー姿すがたで、こし自身じしんどうサイズの両刃りょうば大剣たいけんをさげる。


「そっ、そうですよ! 遠見とおみくんは、もっ、もう、一回いっかい狭魔きょうまたおしてるじゃなっ、ないですか!」

 琴音ことねが、まよいのある口調くちょうで、なぐさめてくれた。


 真奉しんほう 琴音ことねは、魔狩まかりである。

 クラスメートで、銀縁ぎんぶちまるメガネをかけたメガネ女子じょしで、小柄こがらむねおおきい。灰色はいいろみをほどいて、白銀はくぎんながかみをしている。

 レースやフリルをふんだんに使つかった白銀はくぎんの、魔法まほう少女しょうじょみたいな衣装いしょうまとう。レースの手袋てぶくろには、あかいハートとしろつばさかざられた片手かたてサイズのつえにぎる。

 琴音ことねしん姿すがた魔法まほう少女しょうじょスタイルである。


   ◇


 どうして、こんなことになってしまったのか。


 公園こうえんすみの、『魔狩まかりギルド仮設かせつ指揮しきしょ』とプリントされた天幕てんまくにいる。支部しぶ魔狩まかりとギルド職員しょくいんが、三十人さんじゅうにんくらいはあつまってる。


 原因げんいんは、ネジレさま狭聖きょうせい教団きょうだん教主きょうしゅはなした情報じょうほうだ。

 記憶きおくした雑多ざった情報じょうほうなかに、この周辺しゅうへん狭魔きょうま複数ふくすう存在そんざいする、ってのがあった。ランクS相当そうとう、A相当、B相当、D相当がかく一体いったい合計ごうけい四体よんたいだ。


 オレは、ちょうこわい!!!!!おもいをしただけではないのだ! それ以上いじょう成果せいかかえったのだ!

 成果せいかには、さらなる恐怖きょうふがセットだったわけだが。


「ランクD相当そうとうってなんだよぅ。こんなつもりじゃなかったんだよぅ」

 オレはメソメソする。不幸ふこうなげく。

安心あんしんしな、ライバル! おれっちが一緒いっしょじゃねぇか!」

 古堂ふるどうが、奇妙きみょうななめったポーズで格好かっこつけた。


 古堂ふるどう 和也かずやは、オレや桃花ももか近所きんじょ大学生だいがくせいである。金髪きんぱつ逆立さかだて、くろかわジャンかわパンツの、派手はでちのおとこである。

 弓矢ゆみやたたか魔狩まかり『スナイプ』で、小型こがた洋弓ようきゅう背負せおう。


古堂ふるどうさん……」

 オレはなみだぐんだままちあがり、古堂ふるどうかた握手あくしゅわした。


 感動的かんどうてきなシーンにきょいて、ひとたちのあいだから少女しょうじょした。琴音ことねうでにしがみついた。

琴音ことね御姉様おねえさま!」

 あおとおるサラサラストレートヘアの美少女びしょうじょで、……まぁ、はどうでもいいか。

「ひっ、ひぃぃぃ~?!」

 琴音ことねがナチュラルに、ちいさく悲鳴ひめいをあげた。


琴音ことね御姉様おねえさまが、わたくしを必要ひつようとしてくださって、とてもうれしいです! 感激かんげきです! しあわせです!」

 麗美れみ琴音ことねうでにしがみついたまま、キラキラとかがやひとみ琴音ことねせまる。かおかおちかい。

「ひっ、ひぃぃぃ~?! 麗美れみちゃん! ちかい、近いです!」

 琴音ことねたすけをもとめるように、桃花ももかうでにしがみつく。


 なんか、その、既視感きしかんのある、難解なんかい光景こうけいだ。


 小織こおり 麗美れみ魔狩まかりである。十四さい中学生ちゅうがくせいで、普段ふだんは、つめたい雰囲気ふんいき美少女びしょうじょである。あおとおるサラサラストレートヘアで、つきするど無表情むひょうじょうで、着飾きかざったドールみたいなカワイさもある。

 琴音ことね妹弟子いもうとでしの『ウィッチ』で、友情ゆうじょうおもかんじがある。


   ◇


全員ぜんいん集合しゅうごうしてくれ! 作戦さくせん最終さいしゅう確認かくにんをする!」

 片桐かたぎりの、しぶひくいオッサンごえがあがった。


 片桐かたぎり魔狩まかりギルドの、この区域くいき担当たんとう責任者せきにんしゃだ。くろいスーツ姿すがたの、おやよりも年上としうえくらいのオッサンだ。たかがたで、サングラスとととのったひげと、ひだりまぶたたて傷痕きずあと特徴的とくちょうてきな、哀愁あいしゅうただよしぶいオッサンだ。


 この魔狩まかりとギルド職員しょくいん全員ぜんいん片桐かたぎりまえならぶ。狭魔きょうま討伐とうばつ直前ちょくぜんの、独特どくとく緊張感きんちょうかんただよう。


わけになってしまうが、準備じゅんび期間きかんがほとんどなかった。もうわけなくも、ほか支部しぶからの応援おうえんはない。諸君しょくんらのつよさをたよりにしている」

『おおーっ!』

 魔狩まかりもギルド職員しょくいんも、気合きあいこたえた。


「この周辺しゅうへんに、複数ふくすう狭魔きょうまがいる可能性かのうせいがある。花火はなび大会たいかい人出ひとでで、一般人いっぱんじん狭間はざままれれば、連鎖的れんさてき同時どうじ多発たはつもありる。十年じゅうねんまえのアーケードまがつ事件じけん再来さいらいとならないよう、さきんじて一斉いっせい討伐とうばつおこなう」

 この支部しぶ担当たんとう区域くいきには、狭魔きょうま同時どうじ多発たはつおおくの被害ひがいて、放棄ほうきされたはいアーケードがある。なぜそんなことがきたのか、なにかっていない。人類じんるいは、狭魔きょうまのほとんどなにらない。


かくランク、チームごとにわかれて所定しょてい配置はいちについてくれ。『刻印こくいん』をわすれず、共闘きょうとう確実かくじつ討伐とうばつ心掛こころがけるように。無茶むちゃはせず、いのち大事だいじに、だ!」

『おおーっ!』

 片桐かたぎり号令ごうれいに、魔狩まかりもギルド職員しょくいんも、気合きあいこたえた。作戦さくせんしたがい、散開さんかいした。


 対応たいおうするランクの魔狩まかりがチームをんで、魔法品マジックアイテム刻印こくいん』による共闘きょうとう討伐とうばつする。ねんのため、かくランクで複数ふくすうのチームがまれている。

 ただし、ランクSとランクDは、そうはいかなかった。


 人員じんいんりない場合ばあいは、本来ほんらいなら、ほか魔狩まかりギルド支部しぶ仲介ちゅうかいたのんで、すけ交渉こうしょう契約けいやくする。

 今回こんかいは、そんな時間じかんはなかった。人手ひとで不足ぶそくだからと、この人出ひとでのイベントをスルーもできなかった。


 ランクSは琴音ことねしかいなかったから、急遽きゅうきょ麗美れみんでもらった。こころよけつけてくれて、たすかった。

琴音ことね御姉様おねえさま。またそんな」

「ひぃぃぃ~」

 麗美れみうでにしがみつかれる琴音ことねが、桃花ももかうでにしがみついたまま、ナチュラルにちいさく悲鳴ひめいをあげる。

 なかくて、うらやましいかぎりだ。


 ランクDは、支部しぶ一人ひとりいるだけで好運こううんだ、とわれた。二人ふたりもいて、一人ひとり戦闘系せんとうけいだなんて、奇跡きせきだ、とわれた。

 ……こわい。きたい。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第65話 EP10-1 つよくなりたい/END

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