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第68話 EP10-4 選択肢はない

 この世界せかいとなりには、『狭間はざま』とばれる世界せかいがある。

 狭間はざまには、『狭魔きょうま』とばれるモンスターがる。

 狭魔きょうまたおす、『魔狩まかり』とばれる人間にんげんがいる。


   ◇


戸塚とつかさんの安全あんぜん保障ほしょういたします。安心あんしんして、魔狩まかりギルドにおまかせください」

 黒髪くろかみをきつくまとめた受付嬢うけつけじょうが、花柄はながら浴衣ゆかたおんな戸塚とつか書類しょるいす。


 戸塚とつか 美幸みゆき一般人いっぱんじんである。あかいアンダーリムの眼鏡めがねをかけ、なが黒髪くろかみみをはな髪飾かみかざりでめる。オドオドした琴音ことね大人おとなになったかんじのおんなひとである。


「あっ、あっ、ありがとうございます」

 戸塚とつかが、オドオドしながら書類しょるいせた。


 魔狩まかりギルドの一階いっかいの、一般人いっぱんじん相談そうだんよう応接室おうせつしつである。受付嬢うけつけじょう戸塚とつかがそれぞれのソファにすわって、ひくいガラステーブルをはさんでう。


 戸塚とつかは、ランクD相当そうとう狭魔きょうま狭間はざまへとまれた。狭魔きょうまおそわれ、怪我けがをした。

 うであし包帯ほうたい痛々いたいたしい。さいわおおきな怪我けがはなく、きず打撲だぼくだけでんだ。


   ◇


戸塚とつか 美幸みゆきさん。力量りきりょうひくくて、能力のうりょく一次いちじ検査けんさまでしかけていませんのね。典型的てんけいてき一般人いっぱんじんですわ」

 戸塚とつかのデータを、麗美れみ冷静れいせい分析ぶんせきする。


 だれでも、義務ぎむ教育きょういく期間中きかんちゅう一回いっかい能力のうりょく検査けんさける。一次いちじ検査けんさ力量りきりょう高低こうていはかる。力量りきりょうたかかったり本人ほんにん希望きぼうがあれば、二次にじ検査けんさ能力のうりょく種類しゅるい判別はんべつする。


 オレは、戸塚とつかこしにしてつめる。浴衣ゆかたこしには、廉価品れんかひん長剣ロングソードじゃなくて、地味じみつか細剣レイピアがさがる。


 オレは、遠見とおみ 勇斗ゆうと。十四さい中学生ちゅうがくせいで、えないメガネ男子だんしである。普段着ふだんぎティーシャツジーパンスニーカーで、こし廉価品れんかひん長剣ロングソードをさげる、一応いちおうしの魔狩まかりである。


「あっ、あのっ。こ、この細剣レイピアはっ。わっ、わたしっ、長剣ロングソードではおもくてれなくてっ」

 視線しせん気付きづいた戸塚とつかが、シドロモドロに説明せつめいした。

 たしかに、戸塚とつかうでほそい。


 麗美れみ納得顔なっとくがおうなずく。

しんがたいですが、その狭魔きょうま遠見とおみさんよりよわかった、と間違まちがいございませんわね。しんがたいですが」

「そこをかえさなくていいだろ……」

 オレはおもわず、かなしくつぶやいた。


 オドオドする戸塚とつかかこんで、オレと麗美れみ琴音ことね桃花ももか情報じょうほう分析ぶんせきかいをしてる。オレたちにかこまれてるせいで、戸塚とつかがオドオドしてる可能性かのうせいもある。

 いやでも、大人おとなだし、中学生ちゅうがくせい四人よにんかこまれるくらいは平気へいきか。


「それもう、勇斗ゆうとが『贄印にえいん』で討伐とうばつするしかないでしょ」

 桃花ももかおそろしい結論けつろん安易あんいくちした。

「ちょっ?! やっ、やめろ、桃花ももか! オレ一人ひとり狭魔きょうま討伐とうばつって、こわすぎだろ!、あぶないだろ!」

 オレは、キツく反対はんたいした。唯一ゆいいつ討伐とうばつ経験けいけんだって、古堂ふるどうとの共闘きょうとうだ。一人ひとりでなんて、できるわけないだろ!


   ◇


「あ、あの、ここなのですが」

「はい。そこは、『希望きぼうする』にチェックをれてください」

 戸塚とつか受付嬢うけつけじょう書類しょるい記入きにゅうはじめた。保護ほごとか保証ほしょう申請しんせい手続てつづきだ。


 オレたちは、邪魔じゃまにならないようにすみあつまる。

ほか狭魔きょうま討伐とうばつ成功せいこうしたんだろ?」

「ランクS相当そうとうとどこおりなく完遂かんすいいたしましたわ。わたくしと琴音ことね御姉様おねえさまのコンビですから、当然とうぜんでしてよ」

 麗美れみほこらしげに、琴音ことねくびきついた。

麗美れみちゃん!? ちかい、近いです!」

 琴音ことねかおあかくして、ナチュラルにパニクった。


「うぁーっ。それ、じかたかったぜ。あとで報告書ほうこくしょませてくれ」

 あたまかかえてるほど、本気ほんき残念ざんねんだ。琴音ことね麗美れみコンビは、オレの専門外せんもんがい共闘きょうとう戦術せんじゅつ宝庫ほうこだ。なのに、られる機会きかい滅多めったにないのだ。

 でも、琴音ことね報告書ほうこくしょは、ちょっと苦手にがてだ。毎回まいかい琴音ことねのピンチにイマジナリー白馬はくば王子様おうじさまけつけるから。

今回こんかい報告書ほうこくしょは、わたくしがかせていただきましたの。こころしておみくださいませ」

 麗美れみがオレをて、ほこらしげに微笑びしょうした。

「……ソ、ソイツはたのしみだな」

 オレは、言葉ことばえらんで感謝かんしゃした。


   ◇


「それより、狭魔きょうまはどうするのよ? 『贄印にえいん以外いがいはないでしょ?」

 桃花ももかはなしもどした。

討伐とうばつは、オレじゃなくていいだろ? 片桐かたぎりさんにたのんで、ほか支部しぶ応援おうえん要請ようせいしてもらおうぜ」

 オレは、オレが安全策あんぜんさく提案ていあんした。


遠見とおみさんと同等どうとう魔狩まかりが、そう簡単かんたんつかりますかしら?」

 麗美れみが、たか評価ひょうかする口調くちょうで、オレをディスる。

「あの古堂ふるどうさんとおっしゃるかた?、ですら力量りきりょういませんのに。遠見とおみさんほどのかたわりが、いらっしゃるとはおもえませんわ」

 たか評価ひょうかする口調くちょうで、このうえもなくディスられた。

 事実じじつすぎて、反論はんろんできなかった。


「いても、『贄印にえいん』で単独たんどく討伐とうばつなんて、けてくれないでしょ? 勇斗ゆうとみの力量りきりょうしかないんだから」

 桃花ももかはストレートにディスってきた。さすがだ。

「まぁ、そうだろうなぁ。てたかんじ、対処法たいしょほうはありそうな狭魔きょうまだったし、オレがやるしかないかぁ」

 オレだって魔狩まかりである。こわくても、一般人いっぱんじんまもるためなら、やるしかないか。運好うんよく、てきたたかかたたし。


「あっ、あっ、あのっ。そっ、それなのですが」

 全員ぜんいん、ビックリして戸塚とつかた。このタイミングで戸塚とつか発言はつげんするとは、だれ予想よそうだにしなかった。

「いっ、いえっ、あわわわっ」

 注目ちゅうもくおどろいて、戸塚とつか狼狽うろたえた。両手りょうてひたいかざして、日除ひよけみたいに視線しせんさえぎろうとした。


「わっ、わたしっ、よわくてっ。ずっ、ずっと、すみっこで地味じみきてきたのですがっ」

 狼狽うろたえながらも、つづける。

「きょっ、今日きょうこそはわろうとっ、着飾きかざって花火はなび大会たいかいにっ。あっ、あっ、そっ、そんなに派手はでではないのですがっ」

 なにいたいのか、ちょっとからない。

「そっ、その、つまり、わたしっ、つよくなりたくてっ。こっ、これは、その、つよくなれるっ、最初さいしょ最後さいごのチャンスではないかとっ。えっ、えっと、ですからっ、わっ、わたしもっ、一緒いっしょたたかうことって、できますでしょうかっ?」

『……えっ!?』

 全員ぜんいんけたこえかえした。なにってるのか、ちょっとからなかった。



マカリなのでハザマでキョウマとタタカわされます

第68話 EP10-4 選択肢せんたくしはない/END

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