四話
一体この先、俺は自分の人生に価値は見いだせるのだろうか。
そんな疑問が湧いて出るほど俺の楽しみは山に占領されていた。
だからこそ必死になってそれを取り戻そうとしたんだろう。常識外れと言える電脳義足のデチューンもその一環だ。
しかし努力も虚しく俺は山の楽しみを取り戻すことができなかった。
むしろ登れば登るほど自分が楽しもうとしていたことに気付かされる。
そして俺にとって楽しむということは自然発生的な感情だとも分からされた。同時に自分で自分を騙せるほど器用な人間でないことも。
知れば知るほど手詰まりを感じる。大学時代から十年弱。ひたすら自分を楽しませてくれた存在が遠ざかっていく気がした。
一体どうすればいい? どうすればあの楽しみは戻ってきてくれる?
急に失った足が恋しくなってきた。同時に新しく取り付けられた足が恨めしく思える。
この足さえなければ。あの時足を失わなければ。
分かってる。こんなのはただの八つ当たりだ。電脳義足がなければ俺は仕事を失っていただろう。そうなれば家族だって養えない。
山にだって登ることができた。本来なら感謝してもしきれないはずだ。それこそ大戦前なら俺はずっと歩けないままだったのだから。
しかし、それでも人は過去を積み重ねて生きていく人間だ。積み重ねたものを失えば堪える。どうしてもあの時を思い出してしまう。
いっそ最初からなければ諦めもついたのかもしれない。そんな不謹慎なことすら考えてしまう自分がイヤになった。
俺は間違いなく幸運なんだ。死ななかったし、足は失ったが代わりを得た。
だけどやっぱり自分の生きがいを奪われることは耐えきれない。代わりのものがあれば別なんだろうけど、俺にはそんなものがなかった。
ならやっぱり、過去を追い求めるほかない。
しかしそれをすればするほど今との差を感じて、俺は苦しさに苛まれていった。