その後も忙しい毎日を送る嶽丸だったけど、夜は必ず愛し合ってから眠り…時には朝も求めあった。
そんな忙しさが、少しだけ落ち着いたな…と思ったある日。
いつもの「行ってきます」のキスが、ディープキスだったことが、その合図だったと知る。
『ま、ちょっくら行ってくるから!今日からしばらく『おかえり』は、この中でな!』
携帯に届いたメッセージ。
嶽丸は1人、N.Yへと旅立っていった。
もしかしたら。
嶽丸はそんな風に行ってしまうかもしれない、と思っていた。
それでも、無事に到着したと連絡がきた時は文句を言ってしまう。
「…自信なかったんだよ。空港まで来られたら、やっぱ離せなくて、一緒に飛行機乗せちゃいそうで」
妙に真面目な声に、涙が出る。
今、ここにいない。
嶽丸がいない…
昨日は座ってたソファに、ダイニングテーブルに…ベッドに…
今日から嶽丸が、いない。
「うん。…心配しないで。ちゃんとごはん食べるし、家事もするし。笑ってるから」
「…無理すんなよ。泣いてるのバレバレ…」
「…わかってるよ。でも、平気って言わないと、嶽丸また帰ってきちゃうじゃん。帰ってきたら、もう私、離せないもん。だから決めた。1年間、仕事の任期が終わるまで帰って来なくていい!電話とメッセージだけで我慢する!」
嶽丸は、私の宣言にちょっとだけ…ため息をついた。
「アホが…どんだけ溜まると思ってんだ…!」
やがて月日は流れ、嶽丸が渡米して半年が経過した。
おはようからおやすみまで。
嶽丸との連絡が途絶えることはなく、不安になることはなかったけど、垣間見える嶽丸の生活は恐ろしく激務みたいで心配になる。
そんなある日、嶽丸が日本に一時帰国すると連絡が入った。
帰って来るな、と言ったのに…。
しょうがないから…顔を見せてあげようと思う。
秋に渡米した季節は冬を過ぎ、満開の桜が舞う季節。
「正月帰らなかったから、お互いの実家に挨拶に行こう」
嶽丸らしくない真面目な文章に吹いた…!