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番外編.5

その後も忙しい毎日を送る嶽丸だったけど、夜は必ず愛し合ってから眠り…時には朝も求めあった。


そんな忙しさが、少しだけ落ち着いたな…と思ったある日。




いつもの「行ってきます」のキスが、ディープキスだったことが、その合図だったと知る。








『ま、ちょっくら行ってくるから!今日からしばらく『おかえり』は、この中でな!』





携帯に届いたメッセージ。


嶽丸は1人、N.Yへと旅立っていった。






もしかしたら。

嶽丸はそんな風に行ってしまうかもしれない、と思っていた。


それでも、無事に到着したと連絡がきた時は文句を言ってしまう。


「…自信なかったんだよ。空港まで来られたら、やっぱ離せなくて、一緒に飛行機乗せちゃいそうで」


妙に真面目な声に、涙が出る。


今、ここにいない。


嶽丸がいない…

昨日は座ってたソファに、ダイニングテーブルに…ベッドに…


今日から嶽丸が、いない。



「うん。…心配しないで。ちゃんとごはん食べるし、家事もするし。笑ってるから」


「…無理すんなよ。泣いてるのバレバレ…」


「…わかってるよ。でも、平気って言わないと、嶽丸また帰ってきちゃうじゃん。帰ってきたら、もう私、離せないもん。だから決めた。1年間、仕事の任期が終わるまで帰って来なくていい!電話とメッセージだけで我慢する!」


嶽丸は、私の宣言にちょっとだけ…ため息をついた。


「アホが…どんだけ溜まると思ってんだ…!」







やがて月日は流れ、嶽丸が渡米して半年が経過した。




おはようからおやすみまで。

嶽丸との連絡が途絶えることはなく、不安になることはなかったけど、垣間見える嶽丸の生活は恐ろしく激務みたいで心配になる。


そんなある日、嶽丸が日本に一時帰国すると連絡が入った。


帰って来るな、と言ったのに…。

しょうがないから…顔を見せてあげようと思う。


秋に渡米した季節は冬を過ぎ、満開の桜が舞う季節。



「正月帰らなかったから、お互いの実家に挨拶に行こう」



嶽丸らしくない真面目な文章に吹いた…!






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