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番外編.7

「…おい!大丈夫か?こらっ嶽丸!」


健の声が聞こえてそちらに目を向けると、白いタキシードを着た嶽丸が、立ったまま私を凝視してるのがわかった。



「…どしたの?嶽丸…」


「どうしたもこうしたもねぇだろ」


コツコツ靴音を響かせて、私に伸びてくる手は、スルリと腰に巻き付いて…



「…綺麗すぎる」


緩やかに抱きしめるのは、きっと繊細なレースのドレスに遠慮して。


そんな嶽丸を見た健は、また始まった…と言わんばかりに呆れて離れていく。


「なんで肩丸出しなの?…そんな白くてツヤツヤな肌…美味しそうだと思う奴いっぱいいるじゃん…もっとこう…指先まで全部覆い隠すみたいなさぁ…」


「ご新郎さま…申し訳ありません…」



私のウェディングドレス選びを担当してくれたコーディネーターの方が、嶽丸の文句を聞きつけてやって来た。



「いや、おねーさんに文句はないよ」


「おねーさんじゃないの!コーディネーターさんっ!」


「…ターミネーターさん?!」


ポンっと手を打って、得意げに言い返す嶽丸。



「アホっ!」


私にアホ呼ばわりされて大笑いしてるなんて…今日が何の日で、自分がどんな格好をしてるのかわかってるのかな…


今日のために、嶽丸の長めだった髪は、少し短くしてざっくり横へ流した。

意外と凛々しい眉が、いつもより男前を上げてる気がする…


白いタキシードはベストが黒で、そのコントラストが、嶽丸にすごく似合ってると思う。


黙ってればホント、ものすごくカッコいいんだけど…


「このどエロいウェディングドレス、めちゃくちゃ似合ってるよ?悔しいけど。こんな大胆に肌見せして周りを魅了するの、俺のみゃーだからこそ…」


「…もういいから!嶽丸、行くよ?」


「…え、イク?」


「…バカ」


嶽丸とのやり取りに、コーディネーターさんが笑う。




…嶽丸の仕事が一段落して帰国して。

今日は私たちの結婚式。


私はあんまり派手にやらなくていいって言ったんだけど…



「みゃーのウェディングドレス姿、絶対見たい!」


嶽丸のたっての希望で、この日を迎えた。






チャペルの扉の前で、入場するタイミングを待っている私たち。嶽丸の腕に手を絡ませながら、ちょっと緊張してきた…。



「あー、早く帰って抱きたい…」


「うるさいバカっ」


「…このドレスのまま、ベッドに来てほしい」


「…もう!黙ってっ!」


嶽丸ときたら、心臓に毛が生えてるのかと思うくらい平常運転。


私に怒られて逆に嬉しそうで、ちょっと心配になってしまう…





…扉の向こうで、パイプオルガンが荘厳な音を奏ではじめた。

また緊張して、嶽丸の腕をギュっと握ってしまう。



「…美亜?」


呼ばれて、また変な顔でもして笑わそうとしてるのかと見上げてみれば。


意外なほど優しい目に出会ってドキッとする。





「この先、どんなことがあっても俺が美亜を守るから」



…真剣な顔の嶽丸、ちゃんとしてれば本当にカッコいい。




「愛してるよ」


腕に回す私の手を、ぎゅっと握ってくれて…


「嶽丸…」


すごく、安心した。





扉がふわりと開け放たれた。

厳かで高らかな音楽に招かれるように…一歩、また一歩、嶽丸と2人…誓いの場へと歩いていく。



あぁ…嶽丸との人生が始まった。

切ないくらい胸が高鳴る…

困っちゃうくらい…涙が止まらない。


この後どうするんだっけ…

神父さんの言葉を聞いて「誓います」って言って…指輪を交換してベールをあげて…あぁっ!どうしよう…もう涙でメイクがひどいことになってるよ…



「美亜、泣きすぎw!」



2人で神父さんの前に立った途端、嶽丸が私のベールをあげて、涙をぬぐってくれた。


でもちょっと待ってよ…順番が違うじゃん…



「…ここでベール上げるんじゃないでしょ…?」


涙声で抗議すると…


「そんなのいいから!俺たちらしい結婚式をしよう」


そのまま私に口づける嶽丸。


「病める時も健やかなる時も、狂いそうなほど愛しい美亜を、全力で守ると誓います!」


…初めはアワアワしてた神父さん、今は嶽丸なりの愛の誓いに笑顔で頷いてくれた。



「私も、病める時も健やかなる時も、嶽丸のことずっと愛してます…。美味しいご飯作って、一生懸命家も綺麗にして、疲れて帰る嶽丸を癒し続けます!」


家政婦は嶽丸だったのに…いつの間にか、私もいろいろできるようになったよ。



「…サイコーっ!」


嶽丸は私を抱き上げ、クルクル回す。


列席してくれた人たちからも、割れんばかりの拍手と指笛が鳴らされ…



私たちらしい結婚式を挙げることができた。






…………


「神父さん、指輪の交換だけ立ち会ってもらうことになっちゃって、悪かったなー…」


仕事減らしちゃった、と笑う嶽丸の膝に座って、その胸に抱きつく私。


披露宴も無事に終わって、ホテルの最上階に今日は一泊する。



「えへへ…こんな結婚式は無効!とか言われなくて良かった!」


「だったら喜んでもう1回やるけどな?あのどエロいトレス姿、また見れるし…」


フフッと笑いながら降りてくる唇を受け止めて、私たちの夜が始まる。


今日は結婚初夜。

…嶽丸が満足するまで、お付き合いする所存です…♥








そして2年後…


私たちは、双子の男の子と女の子のパパとママになりまして…



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