2日後、田代が辺見家を訪れた。
「お招きいただきありがとうございます」
田代がやってくる時間は分かっていたので、お花見に持って行く食べ物や飲み物は玄関に用意してあった。
「田代さん、今日は車で20分くらいのところにある大きな公園です。広い芝生があって、そこにたくさんのサクラがあります。周りにはいろいろな植物があり、春本番という感じです」
一郎が言った。
「私も家で作ってきた料理があります。下手ですが、皆さんにも食べていただければと思います」
「えっ、お姉ちゃん、料理できるの?」
里香が不思議そうな顔で尋ねた。
「里香、失礼よ」
美恵子が言った。
「私も一応女性ですからね。料理はできるのよ。でも、お母さんには負けるけどね」
「そう、楽しみ」
里香が言った。
「じゃあ、車に積み込んで」
一郎が言った。
「待って、サブちゃんとモモちゃんは連れて行かないの? 2人にもお花見、楽しんで欲しい」
里香が言った。
一郎と美恵子は顔を見合わせた。この時、家で留守番してもらう予定だったのだ。広いところに行って変に興奮し、いなくなってしまうことを懸念してのことだった。
「・・・分かった。2人とも連れて行こう。でも、きちんと散歩の時のリードは着ける。私たちが見える範囲で散歩するくらい、いうことでどう?」
「ありがとう、お父さん」
「私も散歩の時は一緒に行きますので」
「田代さん、ありがとうございます」
そういうやり取り後、総勢7人を乗せた車は辺見家を出た。