その様子は研究所でもモニターしている。そして、辺見家の人たちと同じように涙している。特に田代はその様子が周りから見ていても現場にいるかのような状態になっており、しばらく悲しみの状態が続いた。
少し落ち着いた頃、田代は主任の岡田に進言した。
「正男君、涙が出るようにできないんですか?」
「技術的にはできないことはない。今回、悲しみという感情を覚えたようだし、そのことが微妙な表情の変化を現在のメカでコントロールできるようになったことでAIの質も向上したと思われるから、今度研究所に来た時には改良を加えよう」
田代の気持ちとしては正男をあくまでもロボットとして見ている言動には違和感を持ったが、冷静に考えると正論でもある。自分があまり正男にのめり込むことについて自制しようという気持ちも湧いたが、そういう正男を人間として対応してもらっている辺見家の人には申し訳ないという気持ちもどこかで感じていた。