開口一番、今回の件について謝罪とその対策について考慮していることを伝えたのだが、既に周りの動きが始まっている。
「それで今、どういう感じで正男君のこと、お話しされているのですか?」
「曖昧な返事をしています。遠縁の子で1年間、お預かりしていることにしています」
「分かりました。私たちもその線で考えていました。こういう時のために最初にお話ししておくのが良かったのですが、申し訳ありませんでした。不要なお気遣いをさせてしまって」
「いえいえ、正男君をお預かりする時から、想像していないことが起きるかもしれない、ということは考えていました。正男君が里香を守ろうとしてのことですから、私たちはむしろ感謝しているんです。まだそれほど時間も経っていないのに、その成長ぶりを見ると私たちも嬉しいのです。今回のこと、里香にも勉強になったでしょうし、もちろん正男君にも・・・」
一郎が言った。
「ありがとうございます。そうおっしゃっていただけると救われます。ということでもう少し突っ込まれた時の話をしたいのですが、積極的に言わないまでも預かっている理由であったり、言葉や動きに不自然なところがある理由を想定しておかないとと考え、一応その設定を考えてきました。言葉の問題については日本人だけど外国生まれで、今の年齢まで現地で育ち、だから日本語が少しおかしい、そして両親は途上国での開発事業に携わっているがそこで病気を患った。もちろんその点について感知しているけれど、身体の動きには支障が出ており、医療水準が高い日本の親戚に預かってもらっている、ということではいかがでしょう」
「良いですね。これまでの説明と矛盾しないし、言動や動きの違和感の説明にもなる。ただ、我々には分かるけれど、里香がどこまで理解し、正男君を守れるかですね」
一郎が言った。その後、美恵子が続けた。
「最初に伺った時、里香はそのまま素直に受け入れていて、そもそもなぜ正男君がここにやってきたかについては理解していませんし今、詳しく話すつもりはありません。これまでの様に、姉弟的な感覚で付き合ってもらおうと思っています。だから、何か細かなことを聞かれたら私たちで対応します」
「お世話をおかけします」
里香と正男はいつものように庭で遊んでいた。
「里香、正男君、田代さんが見えているわよ」
その声を聞き、2人とサブがリビングにやってきた。
「里香、サブちゃんの足を拭いてあげて」
そこにモモがやってきて、いつものようにみんなで遊ぶ状態になった。
その時、玄関のチャイムが鳴った。
美恵子が出ると、近所でも何かと噂話が好きな主婦、沢田だった。少し図々しいところもあり、平気で家の中に入り込んでくるところもある。
「今、お客様がいらっしゃるから・・・」