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海水浴 1

 辺見家は予定通り、夏の暑い時期、鎌倉の海に海水浴にやってきた。今回は田代も一緒だ。ただ、今回は炎天下ということでサブとモモはペットホテルに預けてある。里香にも熱い中でサブとモモをつないだままでは可哀そうでしょうと説得し、納得させてある。実際、家にいる時もエアコンのそばにいることが多い様子を里香も見ているので、暑いところに連れ出すことは可哀そうと思っていたのだ。だから今回は、5人だけでやってきたのだ。

 砂浜にシートを広げ、パラソルを立てた。強い日差しがみんなを照らすが、パラソルの陰に入ると海風の爽やかさが身体を包む。

「今回、またお邪魔してしまいましたが、いつもありがとうございます。この前は鎌倉にお出でになったのでしょう? 皆さん、楽しまれました?」

「お陰様で。正男君も里香も、この前来たばかりの場所に近いという話をしたら、家ではその時の話ばかりでしたよ。季節が進み、景色は少し違っていますが、楽しかった時のことを思い出していたんじゃないかと思いますよ」

 美恵子が言った。その言葉に田代も嬉しそうだった。

「正男君がお世話になって半年くらいになりますが、本当に良い経験をさせていただいています。私にも家族同様に接していただき、感謝しています。この時期になりますと、つい残りの期間を考えてしまいますが、毎日を当たり前の時間として過ごしてもらえればと思います」

 こういう話は辺見夫妻と田代だけが3人で話していることだった。里香と正男の意識は海のほうに向いていた。


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