「さて、春馬よ……『
話がまとまると
「報酬ですか!? 僕が九兵衛さんに??」
「さよう。
「そ、そっか……」
鼠神が神である以上は何かを捧げなければいけないのだろう。納得はできても、何を捧げればよいのかまったく見当がつかない。春馬は恐る恐る九兵衛の顔を覗きこんだ。
「九兵衛さん……僕は何を捧げればよいですか?」
「あのぅ。誠に申し上げにくいのですが……そ、その……日本銀行……発行……」
「アンタ、しっかりおし!! せっかく
千がまた九兵衛の背中をバシッと叩く。九兵衛は「いてぇ!!」と叫び、そのまま大声を張り上げた。
「日本銀行が発行する券を
日本銀行券……春馬は神様にお金を要求された。
──え!? お金!?
春馬は愕然とした。まさかお金を請求されるとは思っていない。高校生の春馬が捧げられる日本銀行券なんて、たかが知れている。
──お、終わった……。
春馬が絶望に打ちひしがれていると隣から小夜の落ち着いた声が聞こえた。
「実費もこみでこの位で大丈夫ですか?」
小夜は三段警棒の収められたホルダーから小切手を取り出してテーブルに置いた。
「「ゼロが1,2,3,4,5,6……ナ、ナナァァァァァ!!?? こ、こんなに!!?? ウヘェー……」」
小切手を覗きこんだ九兵衛と千は同時に驚き、同時に腰を抜かした。しかし、すぐに身体中に活力を
「オ、オイ千、十兵衛と八兵衛に電話だ!!」
「あいよ!! アンタ、七郎兵衛にも声をかけるよ!!」
「おうよ!! 一族全員、片っ端から声かけろ!! 」
「まかしとき!!」
突然、千はスマホを取り出して慌ただしく電話をかけ始める。九兵衛は何度も小切手のゼロの数を数えていた。二人の反応は神とはほど遠い。そして、驚いたのは春馬も同じだった。止める間もなく小夜は小切手を渡してしまった。
このお金は春馬の代わりに
「ダ、ダ、ダメだよ!! 小夜さん、僕、こんな借金なんて返せないよ!!」
「別に貸したわけじゃないよ。
「そ、そういう問題じゃなくて!! 臣君に返すのが無理って言ってるんだよ!!」
「ああ、それも言ってた。『これは
「で、でも……」
「臣さまは
「……」
小夜は有無を言わせない雰囲気だった。春馬が黙りこむと禍津姫は満足そうに小夜を見つめた。
「準備がよいではないか。さすがは小夜といったところじゃのう」
「わたしは関係ない。すごいのは臣さまだよ」
「謙虚じゃのう。小夜も口添えしたであろうに……そういったところは好きじゃ」
「神獣に好かれてもね……」
小夜と禍津姫は目を合わせると一緒に笑みをこぼす。すると、歓喜に沸いていた九兵衛と千が背筋を伸ばして春馬たちへ向き直った。
「春馬さま、小夜さま、そして
「九兵衛が申します通り、鼠神の名にかけて吉報をお届けいたします」
九兵衛と千はテーブルに手をついて頭を下げた。何もかもが春馬と関係ないところで決まってゆく。春馬は呆気にとられつつも、『もう引き下がれない』という気持ちに駆られていた。
「こ、こちらこそよろしくお願いいたします!!」
春馬も九兵衛と千へ頭を下げる。その様子を見ていた禍津姫は嬉しそうに目を細めた。
「春馬よ、よかったのう。九兵衛、千、わらわからも感謝するぞ」
「「
「ふふふ、よろしく頼むぞ。ならば用はすんだ……小夜、参るとするか」
「そうね」
禍津姫と小夜が立ち上がると春馬も席を立つ。古代の神獣を目に