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最終話 風守《も》る丘の松

秀夫はしばらく目を閉じ、松との温かい思い出の数々に浸っていた。


その後、秀夫はクオリアと一緒に海が見える眺めのいい丘に行った。

そして、松の形見の人形の内の一体を土に埋めた。


二人がしばらくその場に腰を据えてじっとしていると、秀夫は急に強い睡魔に襲われ、そして永くて素敵な夢を見た。


夢の中では秀夫はイワンと呼ばれ、松は真智と呼ばれていた。

夢の中で秀夫と松は神社で仲良く遊んでいる。


なぜか秀夫は松の大切な人形を必死に探していた。

そして、必死に探した挙げ句、やっと見つけて、松に渡すことができた。

松は泣きながらすごく喜んでいた。

秀夫はこれが夢だともちろんわかってはいたが、それでもとっても嬉しかった。


『ありがとう、松』


『ありがとう…………お兄』




あれから数年が経ち、松の遺体は一旦掘り返された。

骨だけが遺された彼女の遺体は、両親の手によって綺麗に洗骨された後、再び骨壺に納められ海に面した海岸の洞窟へと運ばれた。


クオリアは松の命日にあの海が見渡せる丘へ行ってみた。

すると……。


その丘で不思議な事に遭遇した。


松の風葬で使われたその丘。

今は村の子供達が無邪気に遊ぶ広場になっているその丘。


二人が人形を埋めていたその場所の辺り一面には、綺麗なアマミエビネの花がたくさん咲いていた。


「お兄さ~ん!」


クオリアは秀夫を呼びに家まで急ぎ走った。

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