「ねえ、あなたにも……私が視えるのね?」
「見えるよ。長い髪の女の子だね」
「そうね」
「君の名前は?」
「私はク……、いや、キー」
「キイって言うんだ。珍しい名前だね。
ボクは秀夫。福 秀夫。
キイさんは松の友達?」
「はい。私は松の友達だったんです」
「だった?どういうこと?
松と喧嘩でもしたの?」
「違うんです。実は、松は、松は……」
「ちょっとキイさんどうしちゃったの?
泣かないで。落ち着いてからでいいから、
後で訳を聞かせて」
秀夫はクオリアから、自分が島にいない間の松との思い出をたくさん聞いた。
そして、松の兄である秀夫が大好きな妹の死の知らせを聞いて、嘆かない理由など何一つ無かった。
「くそ~!!!」
秀夫は自分の不甲斐なさを責め続けた。
「あの時、暴力沙汰を起こさずに、松との約束の日に帰れたならば……、
ボクは松と再会を果たすことが出来たのに~!!あの時、暴力沙汰を起こさずに、松との約束の日に帰れたならば……、
ボクは松にしっかりとした治療と、沢山の栄養を与えてあげることが出来たのに~!!
そして、そうすれば、松は死なずに済んだかもしれないのに~!!
くそ!くそ!くそ!ボクのくそったれー!」
秀夫はおでこが血だらけになるまで、ひたすら地面に何度も何度も頭を激しく打ち付けながら、自分の不甲斐なさを呪った。
「松のお兄さん、あの~。……あの~?」
「ぐすん。こんな情けない姿みせちゃってごめんね、キイさん」
「お兄さんの気持ちは、私には想像も出来ないくらい、さぞかし辛いでしょうね。
あの、実は私、生前の松からお兄さんに渡すように頼まれているものがあるんです。
これなんですが、受け取ってもらえますか?」
「なに?……木彫り人形?松がこれをボクに?」
「はい」
「アハハ、顔が本当に松そっくりじゃないか。
届けてくれてありがとうね、キイちゃん」
「そんな、よしてください。私にはこんな事しか出来ず、すみません」
「いやいや、キイさんには感謝してるよ」
「あり……」
「しっ!」
秀夫はクオリアの言葉を遮った。
「ごめんね、キイさん。実はさっき何かを感じたんだ!」
秀夫はクオリアに一言そう言うと、誰から言われた訳でもなく自然と目を閉じ、そして松の形見の人形を両手で抱きしめた。
すると……不思議なことに、秀夫の意識の中に
松との幼い頃の思い出がたくさん溢れてきた。