一クオリアの拠点 ガジュマルの林一
「お役人様、こちらです」
「おお! ここの林がヤンチュやヒダらの隠れ場所になっているわけか!
よし、この辺の大きな木を三本とも切り倒せ!」
「いいんですか? ガジュマルの木は
村人達が代々御神木として大切にしてきたと聞きますが……」
「かまわん!早くとりかかれ!」
「へへぇ~。 わかりました」
『ザクー!ザクー!』
(え? さっきから何ー!?
この人達、この木を切ろうとしてる訳?
大、大変!
仕方ないわ。力を使っ……?)
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「その木を切るのをやめてくだい!」
『え!?』
( あなた、もしかして……)
「誰だ貴様! 何の権限があって私に意見するんだ?
さあ、言ってみろ!」
「ボクは秀夫。 西郷先生の意志を受け継ぐものだ!」
「何だ、西郷って……?」
「お役人様、西郷隆盛の事ですよ!」
「な、嘘だろ? あの有名な……」
「ボクは、この村に法律違反のあなた達を取り締まる為に戻って来たんです!」
「法律違反だって? 笑わせてくれるじゃないか。
家畜同然の身分に過ぎないお前に何ができるんだ。
島の警察はみんな私の見方なんだぞ!」
「そう言われると思ったよ! だから、
本土から今は亡き西郷先生のお知り合いの役人の方に来てもらったんだ!」
「秀夫くん、案内ありがとう」
「いえいえ、ボクの方こそ。遥々奄美まで来てくださって本当にありがとうございました」
「おい、お前ら」
「はっ、はい~!!」
「薩摩に戻ったら、どんな処分が待っているかわかっているんだろうな?」
「そんな~。どうか、この通りです。
堪忍を、堪忍してください」
さっきまで威張りちらしていた島のお役人達は、
明らかに態度を変え、薩摩から来てもらった役人の人にペコペコとひたすら頭を下げていた。
「すみません。実はボク、村に帰って真っ先に会いたい人がいるんです」
「ああ、君は確か会いたい人がいるって言ってたね?
いいさ。ここは私に任せて、君は早くその人の元に行ってあげなさい」
「はい。ありがとうございます!」
秀夫はそう言って家へと急いだ。
「ちょっと待って!」
「え!?」
(やっぱりね、この人私が視えてる)
クオリアは秀夫の左手を掴み、引き留めた。
「君は……一体誰?」