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第6話 共同作業

イナツナが村の長に頼んで、華と二人で土器職人の大人の手伝いをさせてもらうことになった。

華にとって初めての壺作り。ドキドキしながらも、イナツナと一緒に作業できる喜びで胸がいっぱいだった。


工房に入ると、土の匂いが鼻をくすぐる。

薄暗い中で、職人たちの手際よい作業に見とれていると、イナツナが優しく声をかけた。

「華、今日は一緒に頑張ろうね」


「うん!」

華は笑顔で答えたものの、内心は不安でいっぱいだった。


土をこねる作業から始まったが、華の手つきはぎこちなく、土はぐちゃぐちゃになってしまう。

「私のへたくそ…」

華は自嘲気味に呟く。


一方、イナツナは器用に土を扱い、あっという間に美しい壺の形を作り上げていく。

その手際の良さに、華は感心しつつも、自分の不器用さに落ち込んだ。


「大丈夫だよ、華。

最初は誰でもそうさ」

イナツナはそう言いながら、華の側まで寄ってきた。そして。


「ねえ、今度は一緒にやってみない?」 

イナツナは無邪気な笑顔でそう言うと、華の手を取って一緒に土をこね始めた。


イナツナの大きくて温かい手が、華の小さな手に重なる。

彼の指先が触れる度に、華の心臓はドキドキと高鳴った。


すぐ隣にいるイナツナの息遣いが聞こえるほど近く、華は緊張で息が詰まりそうになる。


彼の優しい笑顔が、華の不安を溶かしていく。


「ゆっくり、力を抜いて。」

イナツナは優しく囁きながら、華の手を誘導する。


華は彼の言葉に導かれ、少しずつ土を形作っていく。

土の感触が、彼の体温と共に華の指先から伝わってくる。

まるでイナツナの優しさが、土を通して華に乗り移ってくるかのようだ。


焼き上がった壺を比べてみると、華の作った壺は底が厚く、重たい。対照的に、イナツナの作った壺は薄くて持ちやすい。

「やっぱり私には無理かも…」

何度やっても上手く出来ず、いじける華に、イナツナが優しく言う。


「気にすることないよ。俺だって、最初は全然できなかったんだ。

それに、華が作った壺には、華の優しさが詰まっているよ。」


「そ、そんなことないよ。イナツナが私の為に手伝ってくれた壺まで、全部下手くそな私のせいだよ」

華は口ではそう言いつつも、彼の気遣いに感謝した。


「ねえ、華、ちょっといい?」

イナツナが真剣な表情で尋ねる。


「え?」

華は驚いて彼を見つめた。


「実は華に見せたいものがあって、ちょっといいかな?」

イナツナはそう言って、華をすぐ側まで呼び寄せた。


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