イナツナが村の長に頼んで、華と二人で土器職人の大人の手伝いをさせてもらうことになった。
華にとって初めての壺作り。ドキドキしながらも、イナツナと一緒に作業できる喜びで胸がいっぱいだった。
工房に入ると、土の匂いが鼻をくすぐる。
薄暗い中で、職人たちの手際よい作業に見とれていると、イナツナが優しく声をかけた。
「華、今日は一緒に頑張ろうね」
「うん!」
華は笑顔で答えたものの、内心は不安でいっぱいだった。
土をこねる作業から始まったが、華の手つきはぎこちなく、土はぐちゃぐちゃになってしまう。
「私のへたくそ…」
華は自嘲気味に呟く。
一方、イナツナは器用に土を扱い、あっという間に美しい壺の形を作り上げていく。
その手際の良さに、華は感心しつつも、自分の不器用さに落ち込んだ。
「大丈夫だよ、華。
最初は誰でもそうさ」
イナツナはそう言いながら、華の側まで寄ってきた。そして。
「ねえ、今度は一緒にやってみない?」
イナツナは無邪気な笑顔でそう言うと、華の手を取って一緒に土をこね始めた。
イナツナの大きくて温かい手が、華の小さな手に重なる。
彼の指先が触れる度に、華の心臓はドキドキと高鳴った。
すぐ隣にいるイナツナの息遣いが聞こえるほど近く、華は緊張で息が詰まりそうになる。
彼の優しい笑顔が、華の不安を溶かしていく。
「ゆっくり、力を抜いて。」
イナツナは優しく囁きながら、華の手を誘導する。
華は彼の言葉に導かれ、少しずつ土を形作っていく。
土の感触が、彼の体温と共に華の指先から伝わってくる。
まるでイナツナの優しさが、土を通して華に乗り移ってくるかのようだ。
焼き上がった壺を比べてみると、華の作った壺は底が厚く、重たい。対照的に、イナツナの作った壺は薄くて持ちやすい。
「やっぱり私には無理かも…」
何度やっても上手く出来ず、いじける華に、イナツナが優しく言う。
「気にすることないよ。俺だって、最初は全然できなかったんだ。
それに、華が作った壺には、華の優しさが詰まっているよ。」
「そ、そんなことないよ。イナツナが私の為に手伝ってくれた壺まで、全部下手くそな私のせいだよ」
華は口ではそう言いつつも、彼の気遣いに感謝した。
「ねえ、華、ちょっといい?」
イナツナが真剣な表情で尋ねる。
「え?」
華は驚いて彼を見つめた。
「実は華に見せたいものがあって、ちょっといいかな?」
イナツナはそう言って、華をすぐ側まで呼び寄せた。