「こんなふうに水を両手ですくう時みたいに手を出して?」
イナツナが優しく言った。
「え?こう?」
華は戸惑いながらも、彼の指示に従う。
「そう。そして、今からおまじないをするから華、俺がいいよって言うまでちょっとだけ目を瞑ってて?」
「あ、うん」
華は目を閉じ、心臓がドキドキと高鳴るのを感じた。
イナツナは、華の温もりのある小さな手を包み込むと、深呼吸をした。そして、彼女の耳元で囁く。
「もう目をあけてもいいよ」
華がゆっくりと瞼を開けると、視界に飛び込んできたのは、夕焼け色に染まった美しいヒスイと、素朴な土器の輪っかで飾られた首飾りだった。
その瞬間、華の心は、満開の桜のように華やかに咲き誇る。
「き、綺麗!」
華は感動のあまり声を上げた。
「ねえ、イナツナ、これどうやったの?いつの間に作ったの?」
「それは、ヒ・ミ・ツ♪」
するとイナツナはいたずらっぽく微笑む。
「ねえ、イナツナ?これってもしかして私に?」
突然のサプライズに慌てふためく華だったが、
上目遣いで彼の顔を覗き込むと、人差し指で自分の口元を指差した。
「もちろん、華の為だよ。」
「こ、こんな素敵な首飾り、私なんかがもらっちゃっていいの?
私、今月誕生日でもないんだよ。」
「分かってるよ。だって今日は、俺と華が初めて出会った日でしょ?」
イナツナは必殺のスマイルを見せた。
「イナツナ、ありがとう」
華は彼に抱きついた。
それから、イナツナは彼女の背中からゆっくりと首飾りをかけ、そして。
「華、似合ってるよ。」
そっと彼女の耳元にささやく。
すると、華の顔はゆでダコの用に真っ赤になり、
そして……、
噴水のように鼻血を吹き出しながら盛大にぶっ倒れた。
「ちょっと華!?大丈夫?しっかりして!」
彼は華を仰向けに寝かせると、持っていた麻布のタオルで止血するまで彼女の鼻に軽く被せる。
「あ、もうこのハンカチ、血がいっぱいで使えないな。」
「どなたかこの中に、紙、コホン!
イナツナは冗談めかして叫んだ。