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華が生贄に選ばれた。
イナツナは、村中に響き渡るその噂に耳を疑う。
彼が母親に詳しい経緯を訊ねると、その顔は青ざめていた。
「まさか…」
そう呟くイナツナに、母親は言葉を濁す。
「ちょっと、イナツナ!?」
イナツナは、母親の制止を振り切り、華の家へと駆け出した。
しかし、そこにはすでに大勢の人々が集まっている。
イナツナは、群衆を掻き分け、なんとしても華をみつけようとした。
しかし。
「ダメだ!」
鋭い声が響き、二人の男が彼の行手を阻む。
青銅の槍と盾を手にした男たちは、冷酷な目でイナツナを見据えた。
「お願いします。華に、華に会わせてください!」
イナツナは土下座して必死に懇願するが、男たちは聞く耳を持たない。
「ダメだと言っているだろう!」
男の一人が、イナツナの肩を掴み、そのまま地面に叩きつけた。
全身に激しい痛み走る。
しかし、それでもイナツナは立ち上がり、再び華の元へ足を向けようと男を振り切った。
「お前、いい加減にしろ!それ以上長の決定に歯向かうようであれば今度は本当に命に関わるぞ!」
男はそれでも粘ろうとするイナツナの顔面を強く殴りつける。
しかし、それでもイナツナは諦めなかった。
華に会いたい、その一心で。
「華に会わせてくれ!!!」
男は、イナツナを殴り続け、遂には気絶させてしまった。
???
ホタル、ちゃんと門番の方に確認とってからじゃかいと危ないよ。
???
駄目よ!!
見なさいよ、この傷。
この傷は一刻を争うわ。
いいからほら、あなた達も手伝いなさい。
意識が遠のく中、イナツナは華の姿を懸命に探していた。