薄れゆく意識の中で、華は温かい光に包まれていた。
(ここは…どこ…?)
ゆっくりと目を開けると、そこに広がっていたのは、暗い洞穴とは全く違う、明るい世界だった。
「華……?華!」
優しい声が、華を呼ぶ。
その声に、華は懐かしさを覚えた。
(この声は……?)
何度も肩を揺すられる感触に、華はゆっくりと目を開けた。
「う……ん……だ……れ……?」
ぼやける視界の中で、一人の少年が、心配そうな顔で華を見つめている。
「え……?ちょっとイナツナ大丈夫?
身体中アザだらけじゃない!?」
酷く怪我をした彼の姿に、華は驚きの表情を浮かべた。
「イナツナ……?」
華の目の前に立っていたのは、彼女が一番よく知る少年、イナツナだった。
「華!」
イナツナは、華の名前を呼ぶと、彼女を優しく抱きしめた。
「イナツナ……?」
華は、夢を見ているようだった。
(どうして……イナツナがここに…?)
華は、まだ状況がよく理解できていなかった。
「華、気がついてくれたんだね!よかった……本当に……」
イナツナは、心から安堵した表情で、華を見つめた。
その瞳には、深い愛情と、そして、溢れるほどの喜びが宿っていた。
「イナツナ……」
華は、ようやく現実だと理解した。
目の前にいるのは、間違いなく、イナツナだった。
「イナツナ……!」
華は、彼の胸に顔を埋めると、泣き始めた。
「怖かった、私怖かったよ…… 、
イナツナ……」
震える声で、華は言った。
イナツナは、華の背中を優しく撫でながら、言った。
「もう大丈夫だよ、華。
俺が来たから。」
そんなイナツナの手の温もりが、華の心を温かく包み込む。
彼の優しい表情が、華の不安を溶かしていく。
「ごめんなさい……イナツナ……」
華は、涙ながらに謝った。
「あの時、私、あなたにあんな酷いことを言って……本当に、本当ごめんなさい……」
「それは俺の方だよ!
華、本当ごめんね……」
二人は、互いに謝り合った。
そして、仲直りをした。
「もう、一人にしないでね……」
華は、泣きながらイナツナに懇願した。
「うん、もう絶対、君を一人にはしない。」
イナツナは、力強く答えた。
そして、二人は、しっかりと抱き合った。
「華、危ない!!」
突然イナツナはそう叫ぶと華を自分の方に素早く引き寄せた。
「え、どうしたの?」
「さっきの投石で気絶させられたと思ったけど、まさかこんなに早く目覚めるなんて……」
イナツナは華を庇いながら、その巨大な体を刺激しないようにゆっくりと距離をとりながら洞穴から脱出しようとする。
しかし、その巨大な体は無常にも大きな口を開けて素早く彼に飛び掛かってきた。
そして。
巨大な体の一部が彼の体をかすった瞬間、バチッ!!という激しい音と火花とともに、彼は洞穴の外まで遠く吹っ飛ばされ、そして気絶してしまった。