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プロローグ

プロローグ 羽化

凍てつく胎内、生命の鼓動。

シン、と静まり返った世界。

白く凍てついた大地が広がり、黒い植物がまるで境界線を引くように生い茂っている。

昼と夜の概念が失われたこの星では、極寒の冬と灼熱の夏が交互に訪れる。

空には赤黒い星が異様な光を放ち、全てを見下ろすようだ。


そんな星の、昼と夜の境界線に位置する小さな村で、一つの生命が誕生しようとしていた。


巨大な龍神の卵。

それは村人たちによって大切に保管されていた。

卵の中では、小さな鼓動が静かに、だが確かに響いている。


——時が満ちた。——

ひび割れが走り、やがて殻が内側から破られる。

中から現れたのは、"一人の少女"だった。

まだ幼さの残る顔立ち。しかし、その瞳には強い光が宿っている。

少女はゆっくりと目を開き、周囲を見渡した。


「……ここは……?」

声は震え、小さく、まるで生まれたばかりの雛鳥のようだった。

村人たちは、少女の誕生を喜び、祝福した。

「龍神様の申し子じゃ!」

「この子は、きっと我々を導いてくれる」


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