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76.放火の理由

========= この物語はあくまでもフィクションです =========

============== 主な登場人物 ================

南部[江角]総子(ふさこ)・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。EITOエンジェルのチーフ。

南部寅次郎・・・南部興信所所長。総子の夫。

大前英雄管理官・・・EITO大阪支部の管理官。コマンダー。総子からは『兄ちゃん』と呼ばれている。

足立祐子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

石動悦子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

宇野真知子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

丘今日子・・・EITO大阪支部メンバー。看護担当。元レディース・ホワイトのメンバー。

河合真美・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。走るのが速い。

北美智子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

久留米ぎん ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトの総長。EITOエンジェルス班長。

小峠稽古 ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

和光あゆみ・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

中込みゆき・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

海老名真子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

来栖ジュン・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7の総長。EITOエンジェルス班長。

愛川いずみ・・・EITO大阪支部メンバー。EITOエンジェルスの後方支援担当になった。

本郷弥生・・・EITO大阪支部、後方支援メンバー。

大前[白井]紀子・・・EITO大阪支部メンバー。事務担当。ある事件で総子と再会、EITOに就職した。

神代チエ・・・京都府警の警視。京都府警からのEITO出向。『暴れん坊小町』の異名を持つが、総子には、忠誠を誓った。

芦屋一美(ひとみ)警部・・・大阪府警テロ対策室勤務の警部。総子からは『ひとみネエ』と呼ばれている。アパートに住んでいる。

用賀[芦屋]二美(ふたみ)二曹・・・。三つ子の芦屋三姉妹の次女。陸自からの出向。総子からは『ふたみネエ』と呼ばれている。オスプレイやホバーバイクを運転することもある。後方支援メンバー。総子の上の階に住んでいたが、用賀と結婚して転居した。

芦屋三美(みつみ)・・・芦屋グループ総帥。EITO大株主。芦屋三姉妹の長女で、総子からは『みつみネエ』と呼ばれている。芦屋三姉妹と総子は昔。ご近所さんだった。


小柳圭祐警視正・・・警視庁から転勤。大阪府警テロ対策室室長。

指原ヘレン・・・元EITO大阪支部メンバー。愛川いずみに変わって通信担当のEITO隊員になった。

用賀哲夫空自二曹・・・空自のパイロット。EITO大阪支部への出向が決まった。二美の元カレだったが、二美と結婚した。


真壁睦月・・・大阪府警テロ対策室勤務の巡査。

今奈良リン・・・大阪府警巡査。EITO大阪支部に出向になった。


花菱綾人・・・南部興信所所員。

横山鞭撻・・・南部興信所所員。

幸田仙太郎・・・南部興信所所員。


=====================================

= EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す =

==EITOエンジェルズとは、女性だけのEITO大阪支部精鋭部隊である。==


※建造物等放火事件被疑者の送致をした事件。その後の調べで、死亡した次男がガソリンを使って火をつけた疑いが強まり、警察は、次男を被疑者死亡のまま、放火の疑いで書類送検した。 この火事では自宅が全焼したほか、両隣の住宅も焼け、焼け跡からは、一緒に住む父親と、島根県から帰省していた兄、被疑者の3人の遺体が見つかった。

 当時、3人は母親の葬儀を終えて家にいて、が「限界や限界や」などという言葉を聞いていたことや、父親が介護中だったことから、将来を悲観して犯行に及んだと見られている。

午前9時。EITO大阪支部。会議室。

小柳警視正が、いつものように、マルチディスプレイの中で口を歪めている。

「大前君。一昨日の、放火殺人の事件を知っているね、大東市の。」

「ええ。父親の介護疲れしている次男が、母親の葬儀の後、親族と無理心中した事件ですね。この葬儀は、誰がやるのかな?」

「それは、大阪市内の親類がやる。葬儀の心配より、大変なことになった。『限界や限界や』と言っていたと証言していた男が消えた。行方不明だ。」

「行方不明?」

「小柳さん。捜査員の不手際をEITOに尻拭いさせる積もりですよね?」

「人聞きの悪いことを言うなよ。当たらずとも遠からず、だが。」

「どういうこと、小町?」と、総子が小町に尋ねた。

「よくあるパターンです。『聞き込み』した捜査員が『思い込み』で理由付けしたんです、チーフ。被疑者は、死亡の形で送検。で、事件は幕引き。でも、その『知人』が『善意の第三者』で無かったら?」

「詰まり、小町は、『無理心中』やなくて、何らかの理由があって、『皆殺し殺人』された、と言いたいんやな。放火はオマケやと。」と、大前は確認した。

「流石、兄ちゃんは名探偵やな。」「そら、ウチの旦那やさかい、総ちゃん。」

2人の会話に、「惚気ている場合じゃないわよ。府警の、大きな『汚点』だわ。」と、画面の中の真壁が言った。不倫していたことが公になったことで、態度が大きくなった。

「ん、んんん。内密に南部興信所に調査して貰った。幸田君、報告を頼む。」

小柳に促されて、南部興信所の幸田が画面に出た。正式なネットワークが出来たので、話が早い。

「被疑者の相馬治次は、長男の治一がなかなか協力してくれないので、借金をし、闇金に手を出しています。闇金業者は、『さわやか健やか金融』と言う半グレです。」

「詰まり、治次さんの知人というのは、実は、闇金の業者ということですか?」と、新人のリンが言った。

「えと、どなたでしたっけ?」と、幸田は確認した。

「入ったばかりの新人で、今奈良リン、や。よろしゅうにな。」と、総子が気を効かせて言った。

「さよか。どこまで言うたかな?」

「幸田さん、知人が半グレの社員ということや。」と、大前は言った。

「ああ。そうでした。『さわやか健やか金融』は、相馬家があ・・・あった、大東市に支社があるんですが、本社は靱公園の近くにあります。それと、花ヤンが調べてくれたんですが、『IR』の関係施設の候補地なんです。いや、正確に言うと、関係施設に繋がる道路が、相馬家の場所を通るんです。それと、横ヤンが調べてくれたんですが、治次の・・・治次さんの父、治夫さんが入っていた、介護施設の親会社が、その半グレの会社と関係があることが分かりました。」

「詰まり、最初から最後まで『食いもん』にされたんか。けしからんな。」と、ジュンが言った。

「ジュンも、なかなか洒落たこと言う様になったな。」と大前が褒めると、「え?今、二美さんが言ったのを・・・。」とジュンが言いかけ、二美が、口に指を当てた。

リンがくすりと笑って、小町に同意を求めたが、小町は、有らぬ方を向いた。

「さて、その本社に、いつ行くかな?」と大前が言うと、入って来た佐々ヤンが言った。

「夜7時に、覚醒剤取締法違反で、ガサ入れするけど、乗る?チーフ。」

「乗った。」

午後7時。靱公園。さわやか健やか金融ビル。

何故か、この辺りにはビジネスビルが多い。

スピーカーで、リンが言った。

「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ。悪を倒せと我らを呼ぶ。参上!EITOエンジェルズ。満を持して。」

バラバラと、その『自社ビル』から男達が出てきた。

裏口から、佐々ヤン達が、ガサ入れに行った筈だ。

今日は拳銃と木刀。日本刀だ。

総子は、胡椒丸を投げた。

胡椒丸とは、胡椒やガーリックといった台所用調味料を捏ねたものだ。

夜でもあり、男達は驚いた。

忽ち、シュータやメダルカッターが飛び交った。

芦屋総帥の働きで、戦闘をし、警官隊が引き揚げた後、芦屋グループの警備会社の警備員が、飛び道具の回収に当たることになっている。

三美からは、回収を意識して投げるように厳命されている。

シュータとは、うろこ形の手裏剣で致死能力はない。先端には、漆を材料にした、痺れ薬が塗ってある。メダルカッターとは、メダルの中央部を押すと、外側にプロペラ状の刃が出る。これも致死能力はない。EITOは警察ではない。ましてや殺し屋でもないのだ。

途中から、総子達EITOエンジェルズは、バトルスティックとバトルロッドを使っての戦闘に切り替えた。バトルスティックとは、文字通り闘う為の棒であり、やはり先端に痺れ薬が塗ってある。

バトルロッドは、3段変形の出来るバトルスティックだ。

拳銃をも恐れない集団に恐くなった者達が、逃げ出した。

そこへ、ホバーバイクが現れ、ツインキャッチネットで『ねずみ取り』をした。

ホバーバイクとは、民間会社が発明・開発した『宙に浮くバイク』で、EITOが採用、改造して戦闘または運搬に使用している。

1時間後。戦闘終了後。今夜は、当番のあゆみが長波ホイッスルを吹いた。

長波ホイッスルとは、犬笛に似た、無音の笛である。

主に、『戦闘終了』の合図に用いられる。近くに待機しているオスプレイから、EITO大阪支部、府警を経て、各パトカーに伝達される。

佐々ヤンが総子に近寄って来たので、総子は言った。

「これで、相馬一家は、浮かばれるかな?」「ああ。きっとな。」

「大東市って、どっちの方向?」「こっちだ。」と、用賀が言った。

皆で両手を合せ、目を閉じた。黙祷をしたのだ。

午後9時。南部家のマンション。

総子が、おにぎりを頬張っている。

「明後日、相馬家の告別式やそうや。わしらも行くで。」

「うん。」

2人は、無言で、おにぎりを頬張った。

―完―






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