目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

77.怨恨の理由

========= この物語はあくまでもフィクションです =========

============== 主な登場人物 ================

南部[江角]総子(ふさこ)・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。EITOエンジェルのチーフ。

南部寅次郎・・・南部興信所所長。総子の夫。

大前英雄管理官・・・EITO大阪支部の管理官。コマンダー。総子からは『兄ちゃん』と呼ばれている。

足立祐子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

石動悦子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

宇野真知子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

丘今日子・・・EITO大阪支部メンバー。看護担当。元レディース・ホワイトのメンバー。

河合真美・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。走るのが速い。

北美智子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

久留米ぎん ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトの総長。EITOエンジェルス班長。

小峠稽古 ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

和光あゆみ・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

中込みゆき・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

海老名真子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

来栖ジュン・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7の総長。EITOエンジェルス班長。

愛川いずみ・・・EITO大阪支部メンバー。EITOエンジェルスの後方支援担当になった。

本郷弥生・・・EITO大阪支部、後方支援メンバー。

大前[白井]紀子・・・EITO大阪支部メンバー。事務担当。ある事件で総子と再会、EITOに就職した。

神代チエ・・・京都府警の警視。京都府警からのEITO出向。『暴れん坊小町』の異名を持つが、総子には、忠誠を誓った。

芦屋一美(ひとみ)警部・・・大阪府警テロ対策室勤務の警部。総子からは『ひとみネエ』と呼ばれている。アパートに住んでいる。

用賀[芦屋]二美(ふたみ)二曹・・・。三つ子の芦屋三姉妹の次女。陸自からの出向。総子からは『ふたみネエ』と呼ばれている。オスプレイやホバーバイクを運転することもある。後方支援メンバー。総子の上の階に住んでいたが、用賀と結婚して転居した。

芦屋三美(みつみ)・・・芦屋グループ総帥。EITO大株主。芦屋三姉妹の長女で、総子からは『みつみネエ』と呼ばれている。芦屋三姉妹と総子は昔。ご近所さんだった。


小柳圭祐警視正・・・警視庁から転勤。大阪府警テロ対策室室長。

指原ヘレン・・・元EITO大阪支部メンバー。愛川いずみに変わって通信担当のEITO隊員になった。

用賀哲夫空自二曹・・・空自のパイロット。EITO大阪支部への出向が決まった。二美の元カレだったが、二美と結婚した。


真壁睦月・・・大阪府警テロ対策室勤務の巡査。

今奈良リン・・・大阪府警巡査。EITO大阪支部に出向になった。


=====================================

= EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す =

==EITOエンジェルズとは、女性だけのEITO大阪支部精鋭部隊である。==

==EITOガーディアンズとは、EITOの後方支援メンバーのことである。===


午前9時。EITO大阪支部。会議室。

今日も、小柳は難しい顔をしている。

総子が「みんなが萎縮するから、止めて欲しい」と再三申し出ても、変わらない。

大前から、「個性と思って諦めてくれ。」と話したこともある。

紀子は、小町が最前列にいるからと思ったが、事務員の分際で発言するのも憚れた。

今や司令官夫人ではあるが、皆の世話係でもある。

そこで、会議が始まる前ではあったが、敢えて、届いたリン用のユニフォームを最後列のリンに渡した。

大阪支部では、会議は『車座』式でなく『学校授業式』に椅子を並べる。

実は、東京本部も『車座』式ではない。しかし、大阪支部がベンチになのに対して、東京本部は、個別の丸椅子らしい。

このことは、先日東京本部と繋がった時、ヘレンと紀子だけだったので、草薙から聞いた話だ。

ヘレンは、まだ『初歩の初歩』の知識経験なので、草薙に憧れを持っている。

ヘレンと草薙が一緒になったとすれば、ヘレンは上京するのかな、と紀子は夢想したことがある。

「ああ、紀子君。リン隊員は、合うサイズが無かったのかね?」と、珍しく優しく問いかけた。

「はい。前回の闘いは、急場だったから予備を着て貰って、採寸したサイズのユニフォームを本部から送って貰いました。」

大阪本部では、大前の方針で、『下の名前』で呼ぶ。

それで、小柳も、ヘレン隊員とか言っている。それだけではない。

小町には、『神代』と呼ぶ小柳が『リン隊員』と呼ぶのは、名字が『今奈良』だからだ。

本人次第と言ってしまえばそれまでだが、子供は詰まらない違いでイジメをしたり、あだ名を付けたりする。

小町は、神代警視正からの預かり物だが、リンには『イジメが原因で退職』させたくないのだ。万一、『警察の汚点』として『告発』されては困る。

幸い、EITO大阪支部は、イジメをくぐり抜けて来た者ばかりだ。

「やっぱり、ジャストフィットでないとな。なあ、真美。」

「そういうことです、コマンダー。本人もやる気満々ですから。」

「そうか。」

「あのー。小柳さん、指示はまだのようですが?」と、小町が言った。

「ああ、そうだった。2月26日昼前、此花区で、川沿いの建設現場で作業中の作業員が、川に落ちて転落、死亡した。足場に細工された跡が見つかった。同様の事件が27日昼前、淀川区の作業現場で起こった。そして、28日、住之江区だ。」

「また、昼前ですか?」と、ジュンが手を挙げて言った。

「うむ。偶然とは思えない。可能な限り連続は避けたい。細工のことは今子細に調べている。そして、建設現場の建設会社が共通している。小久保れいわ組だ。」

「怨恨、かな?」と、今度は、ぎんが言った。

「今日だけでも、建設を中止して貰ったどうでしょう?全部ではなく。」と小町が言った。

「そやな。場所が限られてたら、ウチらも手分けして見張れる。万一、落下したら助けられる。流石やなあ、小町。」

小町は、総子に褒められ、まんざらでもない顔をした。

ジュンとぎんは、総子が『人使い』が上手くなった、と大前に報告していたので、ニヤリとした。」

「了解した。絞り込んだ現場の地図を後で送るから、ヘレン君、よろしく頼む。」

「了解しました。」と、司令室のヘレンは返事をした。

マルチディスプレイの画面から小柳が消えた。

「じゃ、一旦、解散。準備にかかってくれ。」大前は締めくくった。

午前11時。大阪市住之江区北加賀屋。高崎神社付近。

ジュン、真子、みゆきは、小久保れいわ組建設現場に「応援女性作業員」という名目で資材運びを手伝いながら、足場に妙なものがないか確認して行った。とはいうものの、限られた範囲でしかないが、事故が起これば、駆けつけることは可能だ。



午前11時。大阪市北区。JR桜ノ宮駅付近。

ぎんは、美智子、真美、リンと共に小久保れいわ組建設現場に「応援女性作業員」という名目で資材運びを手伝いながら、足場に妙なものがないか確認して行った。

数十年前なら、女性は事務員以外いないのが当たり前だったが、今時は、ガテン系の女子は多い。何キロもある鉄骨を女の子が運べるのか、と思われがちだが、全て重量上げみたいな資材とは限らないから、現場責任者が割り振りをするのだ。

通常の、男性作業員も女性がいると張り切りやすい、弱音を吐きづらい、というメリットもある。


午前11時。大阪市東淀川区中津。豊崎神社付近。

小町は、「先輩達を差し置いて」と言いながら、今日子、悦子、真知子、稽古を率いて、初めての作業員服姿に興奮していた。

EITOエンジェルズは、東京本部のエマージェンシーガールズと違い、私服での活動もする。

大前の方針で、『隠密活動』をする為には必要なのだ。但し、危険が迫れば警察や後援部隊の力を借りる。

現場を4カ所に絞っているのは、サポート体制を鑑みてのことだ。


午前11時。大阪市生野区。生野区役所近く。

総子は、祐子、あゆみ、みゆきと共に、資材運び作業をしながら、各足場を注視していた。

午前11時半。ある男が、足場の一つに、口から何か吐き出した。

お昼前。作業責任者の合図もなく、作業員達は、自分達の時計で、現場を離れて行った。

先ほどの男と違う男が、足場の板を踏んだ瞬間、踏み外し、川に落下した。

すぐに、総子は、弥生に合図し、ホバーバイクに乗った、EITOガーディアンズ姿の弥生が到着、救出用の浮き輪を水面に投げた。

ホバーバイクとは、『宙に浮くバイク』のことで、民間の」会社が開発、EITOが採用して改造、運搬や戦闘に使用している。

万一、落ちた人間が浮かんで来ない場合は、海上保安庁や消防に救援を頼むことになっている。

「チーフ。これとチャイます?」男が足を踏み外した板には、何かの液が付いている。

その液の周りに、『グミ』が付いている。グミはカモフラージュか。

同じ頃、ジュンの班にも同じ事件が起こり、同じ形跡があり、落ちた男は、いずみがホバーバイクで救助した。

同じ頃、ぎんの班にも同じ事件が起こり、同じ形跡があり、落ちた男は、二美がホバーバイクで救助した。

皿に同じ頃、小町の班にも同じ事件が起こり、同じ形跡があり、落ちた男は、用賀がホバーバイクで救助した。

午後4時半。EITO大阪支部。

マルチディスプレイには、一美が映っている。

「小久保れいわ組の元社員、江成和樹が出頭してきたわ。現場で総子達が逮捕した男達は皆、江成に頼まれたの。元同僚で、リストラされた江成に同情していたから。江成はね、本来は現場監督だったの。江成は、会社の為を思って効率化のプランを出し、資材の調達先の那珂国のメーカーと縁を切るよう進言していた。そんな中、コロニーが流行った。社長の小久保は、『一時解雇』を行った。でも、コロニーが収まった頃、再雇用されたのは、江成以外。現場監督でありながら、作業員に交じって仕事する程の人が、再雇用されなかった。質の悪い資材を使っているため、事故が起こったこともあった。今回の一連の事故で、亡くなった人もいるけど、アクシデントだった。それでも、自分に責任がある、そう思っていたから、4つの現場以外工事の中止をした時点で、覚悟していたそうよ。」

「でも、二美。たまたま4人の実行犯だったの?」

「江成の信奉者は十数名いたわ。皆、共犯覚悟だった。」

EITOエンジェルズは、皆泣いていた。

世の中、不条理なことが多すぎる。皆は、そういう経験者ばかりだった。

午後6時半。EITO大阪支部。訓練場。

小柳が真壁とやって来て、小町に言った。

「神代。大阪地検に行かなかったか?」

「さあ?」小町は、素知らぬ顔をして、リンへの武器の指導を続けた。

小柳は、踵を返すと、訓練場を出て行った。真壁が、後ろから拳銃で撃つアクションをして、出て行った。

「行ったんか?」大前は小声で小町に尋ねた。

「屁エ、こいてきただけ。」ケロっとして、小町は応えた。

「お前、総子の影響受けすぎやろ。」大前は苦笑いした。

午後7時半。総子のマンション。

南部と総子は甘酒で乾杯した。しかし、中身は『精力剤』だった。

「これなら、飲み過ぎても酔っ払いにはならないわ。」そう言って、笑って知子は帰っていった。

「江成さんは、弁護団を組んだ本庄弁護士が弁護するって。それと、小久保の会社は、大阪地検特捜部が入ったわ。これから、どうなるかな?あの会社。」

「さあな。」と菱餅と雛あられを頬張りながら、南部は応えた。

『自分達の』これからの時間を考えながら。

新しい精力剤は、三美自身が運んでいた。

「頑張ってね。」と、一言添えて。

―完―




この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?