目次
ブックマーク
応援する
4
コメント
シェア
通報

一劫年のサイコロ

第59話 一劫年のサイコロ 3回目

洞窟の奥深く、ゆるやかに時が流れる——


蓮姫は静かに息を整え、目の前のマグナを見つめた。

その真っ直ぐな瞳は、まるで大地そのものが意志を持って蓮姫に何かを伝えようとしているをかのようだった。


「——マグナ、約束通り一劫年のサイコロを出してもらえるか?」


マグナは無言で手を差し出す。

その掌の上に浮かんだのは、闇と光をまとった小さなサイコロ——時を超える運命の鍵。


蓮姫はそれを見つめ、ゆっくりと手を伸ばした。

だが、その前に——


「蘭、鈴——ありがとう。」


鈴は瞳を潤ませながら、蓮姫の手を握る。

「こっちこそ……あなたがいなければ、

蘭を取り戻せなかった……本当に、ありがとう。」


蘭もそっと微笑みながら、蓮姫の隣に立つ。

「私は……ずっと記憶の迷路に閉じ込められていた。でも、あなたが道を開いてくれた。」


蓮姫は二人に向き直り、すべての感情を込めた微笑みを浮かべる。


「もう、お前たちは迷わなくていい。共に歩み続けろ。」

蓮姫は二人にそう言葉をかけた。


マグナは静かに頷き、低く響く声で言った。

「蓮姫——お前の選ぶ時代が、どんなものであろうと、その意思は変わらぬものとなるだろう。」


「マグナ、あんたにも世話になったな。

ありがとう」

蓮姫は深く息を吸い込み、そして両手のひらの上に浮かぶサイコロに力を込めた。

一瞬、洞窟全体が震え、時の波紋が空間を揺らす。


そして——サイコロが転がった。


まるで天と地が一瞬交錯するかのように、蓮姫の体は光に包まれた。


「さらばだ、みんな——私は次の時代へ行く。」


その言葉を残し、蓮姫の姿はゆっくりと消えていった——




次の瞬間、蓮姫の耳に響く——地を揺るがす、

轟音のような鳴き声。


それは、彼女の知るどんな生き物よりも遥かに巨大で、圧倒的な生命の力を感じさせるものだった。


目を開いた瞬間、彼女の前に広がる景色——


空よりも高く、山よりも巨大な生き物が、地を踏みしめていた。


古代人の蓮姫は知らない。

彼女が降り立ったこの世界。


そこは、地球史上最大の生物が陸上を闊歩する、壮絶なる時代——


新たな旅の始まりが、今、動き出した。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?