中庭の決闘用リングにて相対するのは、鼻息も荒く見下したような笑みも見せるイノチェンテと、対照的に今にも溜息が出そうなほどに気が乗らない様子のアンジェラ。
「両者位置について。構え」
他に誰もいないため消去法で審判をする羽目になったルイーザの棒読みに合わせ、両者は位置について杖を構える。先程までの騒がしい乱入劇から一転。にわかに訪れる緊張と静寂の一刻。
「開始」
気怠げな声によって開戦の火蓋が切って落とされると、両者は共に素早く呪文を唱えた。
「
「
アンジェラの杖からの赤い光線と、ベルトーニの杖からの黄色いの光線がぶつかり合い、リングのちょうど中心付近でつばぜり合いが始まる。どちらが優勢ともなく、しばらく押しつ押されつを繰り返す二筋の光。
すると、20秒ほど経ったころだろうか。共に決め手を欠くまま、境目で小さな炸裂とともに対消滅した。対峙する二人の髪が衝撃波により僅かにたなびく。
「おいおい。せっかくお前の
アンジェラに対して嘲笑うように挑発するイノチェンテ。
「うるさいなぁ。だったらあなたの”
対するアンジェラは安易な挑発には乗らず冷静に返している。
「ふん。少し遊んでやっただけだ。調子に乗るんじゃねぇ」
アンジェラの返しが自分の望むそれではなかったのだろう。イノチェンテは唾を吐き捨てた後、再度杖を構える。それを見たアンジェラもまた杖を構え、両者ほぼ同時に次の呪文を唱えた。
「
「
先程よりも太い青と赤の光線同士が、両者の狭間で衝突し合う。そのままつばぜり合いになるかと思われたが、徐々に青の方が優位となり、その境界がゆっくりとイノチェンテ側へ押し込まれていく。
しかし完全に押し込むまでには至らず、イノチェンテがにわかに杖からの出力を上げると同時に、先程よりも強烈な炸裂を起こして消滅した。
「ちっ。有利属性だからって調子に乗りやがって・・・・・・」
衝撃波にあおられながら、先程とは矛盾した言葉を舌打ちと共に吐き捨てるイノチェンテ。その表情からは余裕の色が徐々に失われていき、代わりに思うようにいかない苛立ちが漏れ出してきていた。
「早くしてよ・・・・・・。それとも・・・・・・もうわたしの勝ちってことでいいのかな?」
試合が優位に進んでいるからだろうか。最初よりも乗り気な様子で挑発なんかしているアンジェラ。
「ほざけ! この俺様がお前みたいな落ちこぼれに負けるわけねーんだよ! これでも喰らいやがれ!」
するとイノチェンテの怒号が響くとともに、その足下からは今までの比ではなく激しい魔力放出が巻き起こる。彼は憤怒の勢いそのままに杖を大きく振りかぶり、そのまま投げつけるのではないかという勢いでアンジェラの方へと突き立てた。
「
怒鳴るような呪文の勢いそのままに、イノチェンテの杖先からは燃えさかる橙の
「お、狼・・・・・・?」
眼前の光景に対して固唾を飲むアンジェラ。