翌日、午後になって課長がやってきた。用があるのは航太の方だったらしく、椅子を立った彼へ課長は言う。
「君に
「世話役、ですか?」
目を丸くする航太へ課長は冷静に説明した。
「日南梓の作者である日南隆二を、こちらで保護することが決まったんだ。そのために世話役が必要なわけだが、それを千葉くんに頼みたい」
オレはソファに寝転がったまま、黙って様子を見守っていた。
「具体的には何をすればいいんですか?」
「保護されている間、困ったことやトラブルが起きたら対処することになるが、基本的にはそばにいて見ているだけでいい。現時点で彼の情報をもっとも多く持っているのは、他ならぬ君なのだからな」
なんてことだ。航太に特別な任務が課されてしまった。しかも世話役ってことは、六組のオフィスで待機するのがオレだけになってしまうではないか。
「準備ができたら呼びに来る。それまで待っていてくれたまえ」
「分かりました」
航太が返事をし、課長はさっさと廊下へ出ていく。
二人きりになったところで、オレはゆっくりと起き上がった。
「世話役って何だよ」
「そのままの意味だろう。もっとも、実質的には監視かもしれないな」
日南梓はもう消したのに、作者の日南隆二をそこまでして見ていないといけないのか。こんな大事になるとは思いもしなかった。
まったく「幕開け人」には
「一人で待機するの、寂しい」
静かな部屋だったせいか、航太の耳に入ったらしい。
「……そうだな」
航太はそばまでやって来ると、隣に腰を下ろした。
「だが、付きっきりというわけでもないだろう。まったく会えなくなるんじゃないんだから我慢だ」
「……うん」
うなずくオレの肩へ腕を回して抱き寄せ、もう片方の手でそっと顎を取る。
「そんな顔をしないで」
にこりと優しく微笑んでから、航太が顔を近づける。自然に両目を閉じれば、いつもと変わらないキスをされた。
しばらくお預けなのかと思うと辛くて、オレは航太の背中や後頭部へ手を回す。
「暇があったら連絡しろよ。一緒に帰れる時もあったら、絶対にだぞ」
常に一緒にいるのが当たり前だったから、離れることが少し怖い。
そんな子どもみたいなことを思ってしまう
航太は少し嬉しそうにうなずく。
「ああ、連絡するよ。約束する」
馬鹿にしないで約束してくれる彼の優しさがありがたい。
オレはうっすらと唇を開いて、押し付けるように唇を重ねた。察した航太が強くオレを抱きしめて、長く深いキスをした。