「そっか。ゲートが開かなくなって、異世界から人が来なくなったのも、外へ出られなくなってからだ!」
北野が出した答えに、航太は納得して首を振る。
「なるほど。その後、企画参加者のキャラクターたちが、現実世界でなかったことにされることで、ここからいなくなったとすれば、
けど、まだ疑問はある。
「じゃあ、どうして殺人事件が起きてんだよ?」
椅子の背にもたれながらオレが口を出すと、航太が横目にオレを見る。
「それが一番の謎だな。残ったのは作者のキャラクターだけであるにもかかわらず、どうして事件が起きたのか」
場が沈黙し、もう一人の男が気づいたように問う。
「八人になる前、十五人いたっていう話だったよな? その殺された七人って、いったい誰だったんだろう?」
彼へ視線を向けながら日南は言った。
「それを誰も覚えてねぇんだ。殺された遺体は消えて、具体的な記憶すら、残ったやつらの中からは消えちまう」
「考えられるとしたら、企画を乗っ取ろうとした人物のキャラクターでしょうか」
航太の言葉に北野が聞き返す。
「乗っ取ろうとした人がいたの?」
「ええ。それがきっかけで企画を閉じることになった、と聞いています」
日南が「待て待て」と、頭に片手をやった。
「この魔法学校は創作企画で想像されたもので、参加者のキャラクターが異世界人としてやってきていた。その中に乗っ取ろうとする
航太は彼を見つつ説明した。
「そうです。参加者の一人が自分勝手な行動をしており、作者は企画を盛り上げようとしてくれているんだと好意的に解釈して、最初は受け入れていたようです。それがだんだんエスカレートし、最終的にはフリー素材にしたら、とまで言われたようで」
あの一坂という女は運が悪い。もっとも、ネットにまともな人間がいるなんて思わない方がいいわけだけど。
日南が悔しそうに顔をゆがめ、吐き捨てるように言った。
「そういうのは、あくまで企画としてやるからいいんじゃねぇか。作者も人がよすぎる」
航太は同意するように息をついた。
「ええ。作者は注意をしましたがトラブルになり、何故か悪者にされた挙句、他の参加者は全員見て見ぬ振りをしたそうです」
「はあ!?」
急に大声を上げた日南は、次の瞬間に舌打ちをする。
「くそ理不尽じゃねぇか。企画を閉じるのも当然だが、納得いかねぇ。何で誰も味方しねぇんだ? 自分が参加してる企画だろうが、作者に対して何も思わねぇのかよ」
すると土屋さんも退屈そうな様子で言った。
「面倒事に関わりたくなかったんでしょう。そういう薄情な人、現実には数えきれないくらいいるものよ」
日南が再び舌打ちをし、オレは机に突っ伏したくなる。早くこいつら消して戻りてぇなー……航太にハグしてもらう約束だし。
少しの間を置いてから、航太が口を開いた。
「なので、もしもその人が企画に執着を持っていたとすれば、キャラクターが残っていた可能性もあると思ったんです」
図書館の扉が開き、外にいた二人が入ってきた。静かにこちらへ歩み寄り、金髪の少年のそばで足を止める。
「で、犯人は?」
オレが頬杖をつきながら言うと、日南は苛立ちを抑えるように深呼吸をした。
「イニャスだ」
ゆっくりと金髪の少年が日南を見る。
「何故、僕だと?」
「お前、ケープのポケットに小さいうさぎ、入れてただろ。どうして今はなくなっているんだ?」
よく見れば少年の
「部屋に忘れてきただけです」
「汚れたから持ち歩くのをやめたんじゃなくてか? お前は
全員の視線がそれとなく少年へと集まる。