週末の泊まりはなしだと聞いていたから、航太から連絡があった時は驚いた。
日南との調べ物はどうなったのか知らないが、急にデートの誘いが来たのだ。もちろん断るわけがなく、オレはいそいそと出かける支度に取りかかった。
航太と待ち合わせたのは一区中央のショッピングモール入口だ。大きな赤い鳥居があって、観光スポットとしても有名だった。
「待たせたな」
すでに来ていた航太へ声をかけると、彼は首を振った。
「いや、そんなに待ってないよ」
「そうか? まあいいや、行こうぜ」
「ああ」
にこりと笑う航太だが、どうも元気がない。何かあったようだが、どう切り出したらいいものか。
ひとまず心の奥にしまっておいて、オレは航太とのショッピングを楽しむことにした。
「今日は服見るんだっけ?」
「もう秋物が出てきているからな。夏物は安売りに入る頃だし」
「そうだったな」
オレもいいものが見つかったら買おう。
「っつーか、航太は何着ても似合うからいいよな」
何気なくオレが口に出すと、航太は首をひねった。
「そうかな?」
「全然そうだよ。いつもシンプル系だけど、もっといろいろ着てみたらかっこいいんじゃねぇかって、前から思ってた」
「……気が向いたらな」
いつものようにオレをからかってこない。やっぱり元気がないようだ。
胸がもやもやするのを感じながらも、オレは努めて明るく振る舞った。
昼飯は少し時間が遅かったからか、この前あきらめた日本蕎麦すばるに入れた。
SNSで話題になっていたかき揚げ蕎麦は美味しいが、オレはたずねるなら今しかないと思った。
「で、あいつと何やってんだ?」
航太の肩がぴくりと小さく揺れる。
「北野響について調べてるんだ」
やっぱりそうだったのか。でもまだ納得したわけじゃない。
「何で?」
と、オレは航太の目をじっと見つめた。
ざる蕎麦を食べながら航太は冷静な口調で説明する。
「土屋さんが彼女と知り合いだったらしいが、虚構世界の彼女は知らなかっただろう? あれが虚構の住人であることは以前から分かっていたが、どうも腑に落ちなくてな」
航太の視線が下がった。また彼はオレと目を合わせないようにしている。
「それで?」
「日南さんは北野響と名乗る人物と、一度だけ接触している。しかし、彼女が事故で死んだことを知って、どういうことなのか気になったらしい。だから僕も一緒に調べているという、ただそれだけのことだ」
「嘘だ」
即座に否定してやると、航太がぎこちなく顔を上げる。
「何でだよ、本当だって」
今度はオレが視線をそらしてかき揚げをかじった。
「だったらオレの目、見て話せよ」
航太が小さく息を呑む。それが答えだった。
二人の間に沈黙が居座る。互いの蕎麦をすする音だけが存在する。
やがて航太はうつむいたまま言った。
「ごめん。少なくとも、お前に迷惑がかからないようにしたいとは思ってる」
「意味分かんねぇ」
結局、本当のところは何も話してくれないらしい。一滴の
航太は再び「ごめん」と小さく繰り返した。