後悔はしていない。あいつを殺そうとしたことも、あいつを殺せなかったことにも。
オレの心の中は真っ黒で脳からの信号も届かない。ただ、いなくなってほしかった。
オレは過去を変えたかっただけだ。未来を変えることで結果を
あいつから航太を取り返したかった。あいつに出会う前の航太に戻ってほしかった。
でも、止めてくれたのが航太でよかった。これでもう航太はオレから離れられない。
航太に連れられてマンションの一室へ入った。最低限のものが置かれているだけの殺風景な所で、奥の部屋にはパソコンデスクとソファがあった。
航太が事情を説明すると、北野響によく似た男と、
「なんてことを……」
「犯罪者じゃん。響みたいにならなくてよかった」
二人がはっと息を呑み、痩せ型の男へうなずいた。
「で、何で連れてきたんですか? 警察に突き出すのが先では?」
北野響に似た男が嫌悪感をあらわに問い、航太は答えた。
「申し訳ないが、楓は僕の彼氏なんだ。それだけは勘弁してほしい」
「身内だからって、それはさすがに」
痩せ型の男も苦々しい顔をして返すが、航太は言う。
「状況から見れば、未遂にすらなっていないと思うんだ。それに楓はただ僕と離れたくないだけで、日南さんを殺そうとしたのはいわば逆恨みだ。だが、僕の目が届く範囲にいてもらえれば、害はないと思う」
男たちは顔を見合わせた。首をひねり、腑に落ちない顔をする。
航太は彼らを納得させるべく、付け加える。
「もしも秘密を守れなければ、その時こそ警察に突き出すつもりだ。もちろん、僕とも二度と会うことはないだろう」
そんなの嫌だ。そんなことになるくらいなら、オレはもう何もしない。
うつむいて黙り込むオレへ、航太は厳しい声で続ける。
「それが嫌なら大人しく僕に従えと言ってある。万が一、また日南さんに何かしようとした時も、問答無用で別れるよ」
絶対に嫌だ。航太と別れるなんて考えられない。オレはもう何もしない。
すると、北野響に似た男が言った。
「そんなこと言われても、信用できるわけないじゃないか」
航太は伏し目がちになってため息をこらえるような顔をした。
「……だよな。ただでさえ、こんな見た目だし」
と、苦々しく漏らす。
たしかにオレは派手だ。髪の毛は染めているし、両耳にいっぱいピアスも着けている。外見はどう考えても不良で、不真面目な人間にしか見えないのだろう。
分かるよ、それくらい。ちゃんと自覚してる。それでも派手な格好をするのは、ただ好きで気に入っているからだ。
「オレ、大人しくしてる……もう何もしない……」
「本当に?」
北野響に似た男が鋭く視線を向け、オレはうつむいたままうなずいた。
「航太といられれば、それだけでいい」
オレの望みは航太のそばにいることだ。