九月ももう半ばに近づきつつあった。夏はもう過ぎ去って、だんだんと秋へ移っていく。
そんな夜に、オレたちは拠点のダイニングで顔を突き合わせていた。夕方からやって来た日南もまじえてだ。
「決行は明日、午後六時」
北野が真剣な顔で言い、航太へ視線を送る。
「実行役は千葉くんに任せる」
「ああ、分かった」
航太も真面目な表情でうなずき、北野は次に東風谷を見る。
「観測者は純人だ。時間が来たら、それぞれの核を検索して情報を伝える」
「順番は日南さん、田村、渡だよね?」
「うん、それでかまわない」
次に北野が視線をやったのは日南だ。
「日南さん、一坂さんにはすでに伝達済みなんですよね?」
「ああ、ちゃんと話してあるよ。量子システムのこととか、どうやって記憶の核を取り戻すのかも、理解してもらっている」
「それなら問題はありませんね」
少し安心したように北野が口角を上げ、日南は言う。
「明日は仕事が終わったら、まっすぐ一坂さんのところへ行くつもりだ。もし不測の事態が起きたとしても、独身寮は敷地内にあるから、千葉くんのところへすぐに駆けつけられる」
オレたちの中で唯一、年齢が十一歳も上の日南の言葉は、悔しいが頼もしく聞こえた。
航太だけでなく、北野や東風谷もまた日南を高く評価しているらしいことが空気感で伝わり、気まずくなるのはオレばかりだ。
「ええ、それがいいです。今のところ、成功するビジョンしか見えませんが、万が一に備えることも大事ですからね」
と、北野が自信ありげににやりと笑い、全員を見回してからたずねる。
「質問は?」
オレたちはそれぞれに「ない」と返した。
「それじゃあ、今日はこれで解散にしよう。みんなの健闘を祈る」
北野の一声で場の緊張がゆるむ。
東風谷が「お疲れー」と、奥の部屋へ戻っていった。
それぞれがそれぞれに声をかける中、オレはさっさと帰宅しようとして鞄を手にする。
無言で玄関へ向かおうと歩きだしたところで、北野に引き止められた。
「田村くん」
仕方なく振り返り、何事もなかったようにオレは首をかしげる。
「何だよ?」
北野はわざわざオレのそばまでやって来た。
「君がいてくれて助かった。本当に感謝している」
「……そうか」
このタイミングで感謝されるとは思わず、少しそわそわしてしまう。しかし、北野は言った。
「でも、君が人を殺そうと考えるような人間であることに、変わりはないとも思ってる」
ドキッとして肩をすくめ、オレは黙ってうつむく。
「あと、ちゃんと日南さんに謝罪した?」
「っ……」
触れてほしくないところに北野の言葉が刺さった。
それだけでなく航太まで「そういえば、まだしてなかったな」と、小さく漏らし、オレは緊張で体を