航太の有給休暇が終わり、久しぶりに六組C班が全員そろった。
「まったく、この二週間はボロボロだったわ。やっといつもの仕事に戻れるわね」
「すみません、ご迷惑おかけしました」
と、航太はにこやかに謝罪をするが、土屋さんは何故かオレをにらむ。
「田村くんも先週は二回も休んで。全然仕事にならなかったじゃないの」
「す、すみません……」
そう言われても困るのだが、事情を話すわけにもいかない。
オレは航太と顔を見合わせて、お互いに軽く苦笑した。
「さあ、それじゃあ今日のスケジュール確認するわよ」
「はい」
電子メモパッドを手にした土屋さんが消去目標について説明し、オレたちは何事もなかったような顔をして打ち合わせを始めた。
昼休み、食堂へ向かう途中で航太が言った。
「開発研究部へ行って、サーバールームへの入室許可を得られないか、相談してみようと思う」
「どうやって? 素直に話すわけじゃないよな?」
「ああ、もちろんだ。以前、日南さんと調べ物をしていた時、開発研究部の人たちには大雨の日について調べていると話した。さらに詳細な調査をするべく、些事記憶を検索するためにシステムを組んだから、それをテストさせてもらえないかとでも言えば、どうにかならないだろうか?」
なるほど、それならノートパソコンを持参して堂々とサーバールームへ入れるわけだ。
「けど、そんないきなりで許可が下りるのか?」
怪訝に思うオレへ航太も難しい顔をする。
「やってみないと分からないが、精密検索システムは終幕管理局にとって有益なものだ。その辺りをうまくアピールすれば、もしかしたら……といったところか」
航太と開発研究部の人たちがどういう関係なのか、具体的にはよく知らない。ただ、信頼されているのは確実だし、航太がいつ開発研究部に引き抜かれてもおかしくないことは知っていた。
そうした信頼関係があるのを分かった上で、航太は彼らを
「もし許可が出なかったら?」
航太はため息まじりに言った。
「責任者に嘘をついて入れてもらうしかないな」
その嘘がバレた時にどうなってしまうのか。不安ではあるが、ここは航太に任せるしかない。
「そうなるよな。まあ、やるだけやってみたらいいと思うぜ」
オレがそう返すと、航太は少し安心したように笑った。
「ありがとう、楓。それじゃあ、食事が終わったら開発研究部へ行ってくる」
「ああ」
相槌を打ち、オレは前を向いた。実行まであと五時間と五十五分。