打ち上げパーティーの後、オレは航太と東風谷の三人で喫茶店に入った。
四人がけのソファ席に航太と座り、向かいに東風谷が腰かけた。
「どう見ても詐欺だなぁ、そもそも『幕開け人』でどうやって稼ぐんだか」
アイスコーヒーを飲みながら東風谷が言い、航太はデバイスで検索をかける。
「典型的な情報商材詐欺だろうな。SNSのプロフィールに書いてある学歴も、本当かどうか疑わしい」
「だよなぁ」
と、オレはレモネードをごくごくと飲む。
「でもそうすると疑問が残る。いったいどこで『幕開け人』のことを知ったのか」
東風谷の疑問に航太が顔を上げた。
「去年の事故に関する報道で一般に知れ渡った印象があるが」
「けどよ、具体的な中身までは知らないはずだろ? それでどうやって教材作るんだよ?」
オレが横目に視線をやれば、航太は顎に手を当てて考え込む。
「そうだよな。しかも当時は終幕管理局に
「うん、俺も同感。教材の中身なんてテキトーでいいし、売りつけることがまず重要なんだ。それなのに、犯罪者になろうと誘ってるのは変だよ」
なるほど、詐欺ってそういうものなのか。
「何をどうして金を稼ぐのか、まったく意味が分からないのもあるしね」
と、東風谷は頬杖をつく。
「で、どうするんだ?」
オレが二人へたずねると、航太はデバイスを閉じた。
「可能なら警察に届けるべきだな。被害者が出るかもしれない」
と、デバイスを置いてアイスコーヒーに口をつける。
「俺もそうしたいところだけど、だったらその被害者になった方が早いかも。危うく金を
東風谷が意外と頭のいいことに感心しつつ、オレは返した。
「なるほど、その方が警察も動いてくれそうだな」
「警察へ行くなら僕は不向きだな。すでに去年のことで連絡を入れているから、逆に怪しまれる可能性がある」
と、航太が少し苦笑いをする。
「じゃあ、俺がやるよ。騙された振りをして連絡を取り合えばいいんだから、簡単なことさね。捨て垢あるし」
そう言って東風谷がどこか楽しげにデバイスを操作し、オレは問う。
「ちなみに、このことをあいつらには?」
「言わないよ。渡を悲しませたくないし、日南さんたちにも黙って、俺たちだけで解決しよう」
「そっか」
オレは少し安心した。その方がいいとオレも思っていたからだ。特に北野は複雑な気分になるに違いない。
「はい、DM完了。あとは返事が来るのを待つだけだけど、君たち時間は大丈夫?」
東風谷がデバイスの画面から視線を上げ、オレは答えた。
「しばらく休みだから大丈夫だ」
「ああ、僕も特に予定はない」
オレたちの返答を聞いて東風谷が苦笑する。
「そうだったね。俺もせいぜいあの部屋を出て、家族のところに帰るしかないしなぁ」