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第117話 マーダーミステリー・中編

 画面にいくつかの選択肢が提示され、航太が言う。

「僕はまず現場を調べる」

「じゃあ、オレは関係者から話を聞く」

 それぞれにゲームを進めていき、少しだけ沈黙する。

 集めた情報は自動的にゲーム内に共有されるらしいが、それでは味気ない。

 ある程度情報を読んでから航太が口を開いた。

「なるほど、被害者は毒殺だそうだ」

「ああ、隣にいたのは奥さんだってよ」

「会場にいた全員に同じケーキが配られているにもかかわらず、被害者だけが死んでいる」

「ケーキを作ったパティシエも、給仕係も、被害者との面識はないらしい」

「毒が入っていたと思われるのはコーヒーだな。鑑識からの情報が待たれる」

「面識があるのはホテルの支配人と、隣のテーブルにいた友人の男だな」

「容疑者は奥さんを含めて三人か」

 ちょっとおもしろくなってきた。さらなる情報を集めれば、きっとすぐに犯人が分かるだろう。

「おっ、過去を詮索するって選択肢が出てきた」

「いいな、やってくれ」

「あいよ」

 俄然やる気になって、容疑者たちの過去を聞き出し始める。

「支配人は大学時代、植物学を専攻していたらしい」

「お、支配人室へ行けそうだ。行ってくる」

「行ってらー。あ、奥さんは元薬剤師だってよ」

「怪しいな。こっちは鍵のかかった引き出しと金庫がある」

「鍵、探せるのか?」

「やってみる」

「えっと、次。友人は被害者とは高校時代からの仲で、近年は釣り仲間としてもよく一緒に出かけていた、と」

「こういう場合、特に怪しく無さそうな人物が怪しいんだよなぁ」

「そうか?」

「お、鍵が見つかった。引き出しが開いたぞ」

「中に何が入ってた?」

「これは、どうやら被害者の奥さんと不倫していたらしいな」

 航太が苦い顔をし、オレはひらめいた。

「犯人は支配人か奥さんのどちらかだな」

「いや、ミスリードという可能性も」

「おっ、二人の関係を詮索できそうだ。やってみる」

 航太が無言になり、オレも黙って画面に出てくる情報を読む。

 支配人と奥さんはかれこれ五年ほど前から付き合っていたようで、最近は被害者との間で離婚話が持ち上がっていたという。

「あ、鑑識からの報告が来た。被害者はリコリン中毒で死んだらしい。身近なところで言うと、スイセンに含まれる毒で……」

「支配人じゃん」

「終わったな。呆気あっけなかった」

 と、航太は苦笑し、会場へと戻って来る。

「犯人を指摘する選択肢が出たな。終わらせるか」

「ああ」

 探偵役の航太が犯人を指摘し、これまでに得た情報を元に推理する。

 助手のオレは黙って見ているだけで、本当に呆気なく終わってしまった。

「はい、終了」

 オレはベッドに寝転がり、航太が見下ろしてくる。

「支配人が犯人だって、どの時点で分かった?」

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