画面にいくつかの選択肢が提示され、航太が言う。
「僕はまず現場を調べる」
「じゃあ、オレは関係者から話を聞く」
それぞれにゲームを進めていき、少しだけ沈黙する。
集めた情報は自動的にゲーム内に共有されるらしいが、それでは味気ない。
ある程度情報を読んでから航太が口を開いた。
「なるほど、被害者は毒殺だそうだ」
「ああ、隣にいたのは奥さんだってよ」
「会場にいた全員に同じケーキが配られているにもかかわらず、被害者だけが死んでいる」
「ケーキを作ったパティシエも、給仕係も、被害者との面識はないらしい」
「毒が入っていたと思われるのはコーヒーだな。鑑識からの情報が待たれる」
「面識があるのはホテルの支配人と、隣のテーブルにいた友人の男だな」
「容疑者は奥さんを含めて三人か」
ちょっとおもしろくなってきた。さらなる情報を集めれば、きっとすぐに犯人が分かるだろう。
「おっ、過去を詮索するって選択肢が出てきた」
「いいな、やってくれ」
「あいよ」
俄然やる気になって、容疑者たちの過去を聞き出し始める。
「支配人は大学時代、植物学を専攻していたらしい」
「お、支配人室へ行けそうだ。行ってくる」
「行ってらー。あ、奥さんは元薬剤師だってよ」
「怪しいな。こっちは鍵のかかった引き出しと金庫がある」
「鍵、探せるのか?」
「やってみる」
「えっと、次。友人は被害者とは高校時代からの仲で、近年は釣り仲間としてもよく一緒に出かけていた、と」
「こういう場合、特に怪しく無さそうな人物が怪しいんだよなぁ」
「そうか?」
「お、鍵が見つかった。引き出しが開いたぞ」
「中に何が入ってた?」
「これは、どうやら被害者の奥さんと不倫していたらしいな」
航太が苦い顔をし、オレはひらめいた。
「犯人は支配人か奥さんのどちらかだな」
「いや、ミスリードという可能性も」
「おっ、二人の関係を詮索できそうだ。やってみる」
航太が無言になり、オレも黙って画面に出てくる情報を読む。
支配人と奥さんはかれこれ五年ほど前から付き合っていたようで、最近は被害者との間で離婚話が持ち上がっていたという。
「あ、鑑識からの報告が来た。被害者はリコリン中毒で死んだらしい。身近なところで言うと、スイセンに含まれる毒で……」
「支配人じゃん」
「終わったな。
と、航太は苦笑し、会場へと戻って来る。
「犯人を指摘する選択肢が出たな。終わらせるか」
「ああ」
探偵役の航太が犯人を指摘し、これまでに得た情報を元に推理する。
助手のオレは黙って見ているだけで、本当に呆気なく終わってしまった。
「はい、終了」
オレはベッドに寝転がり、航太が見下ろしてくる。
「支配人が犯人だって、どの時点で分かった?」