「さすがにそれはないっすよ!」
と、後ろからオレが声を上げると、舞原さんは唇をへの字に曲げた。
「残念。手っ取り早いと思ったんだけど」
すると航太がオレへ言う。
「参考までに聞くのはどうだ?」
「えっ」
「これまでだって、意見をかわして推理して、分離作業をしてきたんだ。聞くのはおかしいことじゃない」
たしかにそうだ。いつも二人で相談して、正しい組み合わせを見つけてきた。だいたい航太の推理が決め手になっていたけれど。
「分かった。じゃあ舞原さん、お願いします」
オレがそう返すと彼女が一歩前へ出る。
「私はね、まず美少年とスーツの組み合わせがいいわ。受けはスーツの方で」
いきなり性癖全開である。
「それからパーカーの大学生とジャージ、受けは大学生の方かしらね。残りはどっちでもいいわ」
「なるほど。僕はむしろ、ネルシャツの大学生とスーツですね。受けは大学生です。学ランの少年とジャージで受けは少年、パーカーの大学生と少年で受けは少年です」
航太も意気揚々と考えを述べ、舞原さんがふとオレたちを振り返る。
「そういえば、どっちがどっちなのか聞いてもいい?」
唐突な質問だが航太は冷静に返す。
「僕が受けに見えますか?」
「ああ、そうよね。田村くん、可愛いものね」
と、舞原さんもすんなり納得する。
何だ、このいたたまれなさは……オレが受けに見えるのか? いや、見えるな……うん、航太と並んだらそうとしか見えねぇよ。
自分でもよく分からない落胆を覚えてため息をつく。
「ああ、そういうことですか」
「何か分かった?」
「いえ、舞原さんが許可してくれた理由です。僕と楓がいちゃついていても、怒らないでしょう?」
「ああ、そうね。見てて楽しいから」
にこりと舞原さんが笑い、航太も微笑みながら「ありがとうございます」と返す。
何か違う。絶対に何か違うぞ。
「では、そろそろ真面目にやりましょうか」
「ええ。ところで一つ気づいたんだけど、いいかしら?」
「何ですか?」
舞原さんは六人のイケメンたちを見て言った。
「みんな、悲しそうな顔してると思わない?」
言われてみれば、六人全員がどこか悲しげだ。
記憶が結合しているせいか、自身の設定を見失って不安定になっている住人はいたけれど、それとはまた雰囲気が違う。
「たしかに妙ですね。BLにはシリアスなものも多いですが」
「そうだとしても、みんながみんな悲しい表情っていうのは変だわ。特に彼氏と一緒にいるのに、よ?」
舞原さんの言うことはもっともだ。
「あとできっちり、管理部へ報告しましょう。そのためにも分離作業です」
「ええ、そうね。いつものように情報収集、始めましょうか」
「はい」
航太が舞原さんの後をついていき、残されたオレはいつものようにその場にあぐらをかいた。
膝の上に頬杖をついて息をつく。まったく、訳分からんことばっかりだ。