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第126話 ボーイズラブ・後編

「さすがにそれはないっすよ!」

 と、後ろからオレが声を上げると、舞原さんは唇をへの字に曲げた。

「残念。手っ取り早いと思ったんだけど」

 すると航太がオレへ言う。

「参考までに聞くのはどうだ?」

「えっ」

「これまでだって、意見をかわして推理して、分離作業をしてきたんだ。聞くのはおかしいことじゃない」

 たしかにそうだ。いつも二人で相談して、正しい組み合わせを見つけてきた。だいたい航太の推理が決め手になっていたけれど。

「分かった。じゃあ舞原さん、お願いします」

 オレがそう返すと彼女が一歩前へ出る。

「私はね、まず美少年とスーツの組み合わせがいいわ。受けはスーツの方で」

 いきなり性癖全開である。

「それからパーカーの大学生とジャージ、受けは大学生の方かしらね。残りはどっちでもいいわ」

「なるほど。僕はむしろ、ネルシャツの大学生とスーツですね。受けは大学生です。学ランの少年とジャージで受けは少年、パーカーの大学生と少年で受けは少年です」

 航太も意気揚々と考えを述べ、舞原さんがふとオレたちを振り返る。

「そういえば、どっちがどっちなのか聞いてもいい?」

 唐突な質問だが航太は冷静に返す。

「僕が受けに見えますか?」

「ああ、そうよね。田村くん、可愛いものね」

 と、舞原さんもすんなり納得する。

 何だ、このいたたまれなさは……オレが受けに見えるのか? いや、見えるな……うん、航太と並んだらそうとしか見えねぇよ。

 自分でもよく分からない落胆を覚えてため息をつく。

「ああ、そういうことですか」

「何か分かった?」

「いえ、舞原さんが許可してくれた理由です。僕と楓がいちゃついていても、怒らないでしょう?」

「ああ、そうね。見てて楽しいから」

 にこりと舞原さんが笑い、航太も微笑みながら「ありがとうございます」と返す。

 何か違う。絶対に何か違うぞ。

「では、そろそろ真面目にやりましょうか」

「ええ。ところで一つ気づいたんだけど、いいかしら?」

「何ですか?」

 舞原さんは六人のイケメンたちを見て言った。

「みんな、悲しそうな顔してると思わない?」

 言われてみれば、六人全員がどこか悲しげだ。

 記憶が結合しているせいか、自身の設定を見失って不安定になっている住人はいたけれど、それとはまた雰囲気が違う。

「たしかに妙ですね。BLにはシリアスなものも多いですが」

「そうだとしても、みんながみんな悲しい表情っていうのは変だわ。特に彼氏と一緒にいるのに、よ?」

 舞原さんの言うことはもっともだ。

「あとできっちり、管理部へ報告しましょう。そのためにも分離作業です」

「ええ、そうね。いつものように情報収集、始めましょうか」

「はい」

 航太が舞原さんの後をついていき、残されたオレはいつものようにその場にあぐらをかいた。

 膝の上に頬杖をついて息をつく。まったく、訳分からんことばっかりだ。

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