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初恋

 わたしの初恋は中学二年生の時でした。


  お相手は三年生のバスケットボール部の先輩です。片想いでした。


 授業中に黒板を見ている時も、給食を食べている時も、友達と話をしている時も・・・・・・気がつくといつの間にか彼のことばかり考えていたのです。お昼休みにはお友達と昨夜放映されたテレビドラマの話で盛り上がります。


 そんな時でも校舎の窓から校庭に彼の姿を見つけると、無意識のうちに彼のことを目で追っている自分に気がつくのです。


 そんなわたしを気づかってくれたのでしょう。先輩が卒業する日、親友の峯子みねこが彼の制服の第二ボタンをもらってきてくれたのです。


「もう、久美くみって分かりやす過ぎ。先輩に久美が欲しがってるって言ってもらって来てあげたんだからね」


「ありがとう・・・・・・」


 わたしは鈍く黄金色に輝くそのボタンをそっとハンカチに包み、制服のポケットにしまいました。きっと生涯の宝物になることでしょう。


 先輩の卒業式が終わって数日後のことでした。わたしの家に一通の手紙が届いたのです。


 それは先輩からのお手紙でした。“もしよかったら、ぼくとつき合っていただけませんか”と綺麗な文字でしたためてありました。


 その瞬間、わたしの初恋は終わりました。わたしの中の恋心が嘘のように冷めてしまったのです。


 そうなのです。その頃のわたしは、単にだけの乙女にすぎなかったのです。

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